彼女の想い-21
あれから数分。
いろいろやって操作に慣れてきた。
基本は思考感知センサーを使ったものと同じ、意識を向けた部分が選択されるやつだ。
視界の隅にあるものに意識を向けるとツールバーが展開される。
なにがどういうツールでどこに何をするためのものがあるかは分からなかったが、調べたいと意識するだけですぐに検索エンジンが呼び出された。
しかしこれまたどうやって検索したらいいのか分からない。
特徴と言えば青い髪、女の子、これだけだ。
さてどうするか、なんて思うことはない。
現在の検索エンジンは人の思考を常に読み取って状況に合わせた情報を洗い出してくれる。
ならばこの魔法的な方にもそれくらいある……よな?
少し待つと『検索中』と視界に表示が出て、ものの数秒で青い髪の女の子がずらーっとリスト表示された。
ただ……そのほとんどは顔写真が暗くなってプロフィール欄に『死亡』と表示されている。
「まさか……あの子も?」
そんなはずは……。
高速でリストを下にスクロールする。
どれもこれも知らない顔だが『死亡』と表示されている。
あぁくそなんだこのPMCは、見た感じ若すぎだろ。
なんでこんな学生みたいな年頃のやつばっかいるんだよ。
爆音と銃撃の音を聞きながら寮の中でしゃがんで、かなりの時間検索を続ける。
どこだよ、どこに……。
ふと思った、なんで俺は"死んでいるかもしれない"なんて思ってんだ。
生存者のみでフィルタを掛ける。
哀しいかな……スクロールバーの長さが一気に二十倍くらいになった。
……どれだけ死んだんだ。
結局、顔しか知らないあの子は一番下に載っていた。
名前もプロフィールもまっさらだが、知っている、この顔を俺はよく知っている。
忘れもしないあの子だ。
位置情報のロックは……かかっていない。
すぐに居場所の検索をかけた。
これで助けに行け……るのか?
もしアサルトライフルを持った兵士の集団に囲まれていたら何ができる?
ここはゲームなんかじゃない。
仮想空間のように痛みだけで怪我を負わない訳じゃない。
撃たれたら手足が吹き飛んで死ぬ。
例え魔法を使えたとしてもここには頭の中を弄った人間以外にも魔法使いとか亜人とか普通にいる。
そう、だから俺が魔法を使えたとしてそれが"だからどうした?"という反応をされて終わるだけだ。
むしろようやく同じ土台に上がるための、足場を作るための道具を手にしたところ。
俺は引き籠もりの学生。
あちらは本職の軍人。
魔法があるから特別なんじゃない、頭の中に生体機械がある第三世代だから特別なんじゃない。
あって当たり前の段階にようやく追いついただけなんだ。
「……く、ふふっ」
怖い。
怖さで震えている。
視界にあの子の居場所が表示される。
場所はここ、如月寮から西側に。
そしてあの子の座標は移動し続けていて、後ろから追いかけるように赤い点が動いている。
どうみても青い点一つに赤い点がたくさん、敵に追われていると考える以外に何があるか。
俺に人を殺めることができるのか、その答えはイエス。
さっきので分かったが、どうも何かの為となるとその辺の忌避感が消え失せるようだ。
立ち上がって寮の入口に向かう。
こうしてここから出るのはいつぶりだろう?
「いってきます……」
もう戻ってくることもないだろうけどな。
と、ちょこっとカッコつけて寮の敷地から出た途端に、周囲の景色が俺の記憶とかなり違っていることに気付いた。
長らく引き籠もっていたせいだよな、これ。
…………。
地図、地図だ、ナビゲートアプリを。
頭の中に埋め込まれたブレインチップに信号を送るが、返ってくるのはエラー。
どうもネットワークに接続できていないらしい……そりゃそうだ、こんな状況でアクセスポイントが破壊されていない訳がない。
電脳戦の基本は安全確実なネットワーク接続だが、そもそもそれができないように物理的に破壊されるとお終いだ。
魔法通信のほうはどうかと思って探ってみると、思いのほかメチャクチャ鮮明な地図があった。
目標にはアクティブであの子の位置を。
最短ルートを検索して表示させるが、その途中にはたくさんの赤い光点。
間に合ってくれよ。
俺は走り始めた。




