彼女の想い-19
とりあえず一段落。
荒れ放題のゴミ部屋から出る。
自分の部屋だろって?
今になって思うとゾッとするね、大量のGがいる部屋だったんだぜ?
とまあ、そういうのはどうでもいいか。
あぁ久しぶりに見るな、この飾りっ気のない金属面丸出しの廊下。
改修工事の時以来だな。
なんで俺が寮に居たかって? 忘れるな、俺は引き籠もりだ。
「さすが女子寮……香水の匂いが」
「え? 如月寮って男子もいるぞ?」
香水の匂いが僅かに漂う廊下。
部屋のドアを閉めてみると、ふと電子ロックのカバーが外れているのが見えた。
誰だこんなことしやがったのは。
ていうか俺の部屋に誰か入ったっていうことだよな。
「……アキト、外に結構いる」
「敵が?」
「それ以外に何がある、ここに味方なんていないと思え」
「部隊章は」
「その前に、お前も軍属の人間か?」
「いいや?」
何言ってんだこいつ、この引き籠もりニートに向かって。
軍属だったらヨトゥンヘイムで捕まったりしてねえよ。
「まあいい。俺が飛び出して引きつけるからお前は後ろから撃て」
「分かった」
どうせ外にいるのはさっきのやつの仲間だろう。
俺のハイスペックPCに手を出そうとしたやつだ。その仲間ともなれば同罪、情け容赦は一切なしでいこう。
寮の玄関に移動していざ飛び出そうとした瞬間。
背後からものすごい破壊音が聞こえ、驚いて振り向いてみると。
「……………………。」
俺の部屋があったはずのところが完全に吹き飛んで、そこからごっついパワードスーツを着た野郎がのそりと姿を現した。
瓦礫の隙間に見えるのは、タワーの破片、無残に打ち砕かれた18コアCPU、水冷装置の液体……。
さらにそれをバキバキと踏みつけながら他の敵さんが出てくる。
コレモウヤッチャッテイイヨネ?
「おい待てアキト!」
ベインの静止を無視して魔法を放つ。
簡単に思いつく最強の魔法。
イメージは空高くまで登るキノコ雲、灼熱に染まる真っ赤な大空、そう核爆発だ。
ただ愚直に創り上げた魔法を投げつける。
自分が巻き込まれる? 国が消し飛ぶ? 知ったことか。
「喰らえアテリアル!」
そして、その破滅的な魔法を内包した火炎弾はアテリアルに飲み込まれて消えた。
勢いそのままに敵さんもあっという間に食い尽くす。
「なんで邪魔する!」
「ドアホ! そんなことしたら俺たちまで黒焦げになるぞこのバカ!」
「だけど!」
バコンッ! といい音を立てて顔を殴られた。
「いいかバカ野郎、お前はこんなくだらないことで――――」
説教なんか聞くかよ。
大事なモノを目の前で無残に壊されて黙っていられるか、突っ立っていられるか。
もしそれができるならそれは大事なモノなんかじゃない。
……あぁ、大事なモノは人によって違うだろうさ。
だから本当に大事なモノを失ったときの心の痛みは誰にもわかってもらえないし、覚えていられるほど心が強い訳でもない……。
誰にだってそれぞれの価値観があるのだから……でも……俺はもっと大事な、かけがえのない誰かを……?
誰か? 誰だ? 青い誰か? アレ? アノコハ……。




