彼女の想い-17
なにもない草原を数分ほど歩き続けた俺たちは、誰もが良く知る見た目あいつとエンカウントしていた。
半透明の青いゼリー状のぷよぷよした見た目。草の上をぷよんぷよんゆっくり跳ねながら向かってくる。
ただ俺の知っているやつとは若干違うんだ。まん丸のお目目とU字型の赤い口がない。
しかしだ、この水滴のような形は間違いなく――スライムだ!
そうスライムだ。スライムだと思いたい、解析してみるか。
『スライム型迎撃装置』……オクトでキングなスライムになる。取り付かれた場合、強酸性の粘液で消化吸収される
迎撃装置というところに突っ込みたいけど、これってそういうことなら生体兵器?
そんでもってキングになっちゃうところはそのまんまなのか。
のっぺらぼうなスライムに驚いていると、スライムは一度強く飛んで着地と同時に一気に体を縮めた。
この動き……まさかストライクまでしてくるのか!?
ビュンッ!!
「うぉっ!?」
思ってきた瞬間に突っ込んできた、それもベインの方に。
「そぃ!」
ズバシュッ! ベチャッ! ジュシュゥゥ……。
擬音を動きで示すとこうだ。
ベインが殴る→スライムが破裂する→破片が飛び散ったところが溶ける。
強酸性の粘液……溶けてる、うん、溶けてるよ、ベインの手が。
「おかしいな、いままでこんな弱いものは配備されていなかったはずだが」
いやこれで弱いって……。
可愛らしいのっぺらホラーな見た目で近寄ってきてストライク、そのまま溶かしてしまう。
十二分に危険だろうよ。あんたのその手が証拠だ。
考え込むベインに対し、またもやぷよんという音を聞いた俺は、ビクリとしながら振り返る。
ぷよん、ぷよん。
金属色のあいつだ。
見ると反射的と言っていいほどにメタルスラッシュをしたくなる、それがたった1ダメージであったとしても。
これはそう、RPGの冒険者には共通する習性だ。大量の経験値を獲得するチャンスなんだ!
「ベイン、ちょっと行ってくる」
意識を向けると同時に恐ろしい速さで逃げやがった。
あっという間に五十メートル、これは世界記録が出るな。
だがまあ……この俺から逃げられるなんて思わない方がいい。
靴裏に爆発をイメージ、超高速のリアル鬼ごっこが始まった。
なに、恐れることはない俺が鬼だ。捕まえる側なのだ、反撃は無いと思いたいね。
「ムァテェェェェェェェェッ!!」
狩れば大量の経験値。
そんな緊張感からかテンションが上がりすぎて妙な声になってしまった。
ま、これで100まで上がって攻撃したら……って、メタル系には効かないんだったか。
確か呪文も効かなかったな、なら俺の魔法攻撃も?
くそっ、聖水でもあれば投げつけたいところだが……水属性で代用できないかな。
「せぃっ!」
このあいだ使ったブリザードボムを球状にして思い切り投げつけ――
「パクッ」
「……食うのかよ!?」
しかも食ったのはメタルではなくベインのアテリアルだ。
なに邪魔してくれちゃってんの、ねえ。
テメェよおリアルな氷漬けにしてやろうか、ん?
そんなことを思って二発同時に投げつけるが。
「パクパクッ」
「…………ホワッツ?」
またも食われた。
こいつの体内の構造は一体どうなっているのだろうか。
しかもこんなことをしているあいだにメタルには逃げられてしまった。
「おいアキト、本来の目的を忘れるなよ」
……あっ。
そうだよ、ここでこんなことをやっている場合なんかじゃない。
「ごめん、なんかああいうの見るとつい」
「ついじゃない。はぁ、さっさと行くぞ、あの速さで走れるんならついて来いよ!」
言った瞬間、青と紫の燐光が舞ってベインが草の上を滑り始めた。
どうやっているのだろう?
というかおいて行かれる、あれは普通に走って追いつける速度じゃない。




