彼女の想い-3
遅くなりました、すみません。
それではどうぞ。
地図を頼りに辿り着いた万屋は、木造二階建てのこぢんまりとした店だった。
古い洋品店のような感じではあるが、ドアがあって商品を見せるような形ではない。
軽くノックをしてみると中から返事が返ってきたので入る。
「いらっしゃい」
ドアを開けて中に入ると衣類、食糧、武器、防具、よく分からないものなどがずらりと並び、店の奥におっちゃんがぽつりと。
商品を見ていくと、とにかく揃っていない。
いろんな地方の服や武器がたくさんあるのだ。
「あのー……服を買いたいんですが……」
「ふむ、君、お金はあるのかい?」
「……持ってないです」
言われてみれば俺はこの世界で使われているお金を一切持っていない。
売れそうなものといえば腰にぶら下げたスケルトンの剣くらいだが。
「ところでその頭に乗せているのは」
「あ、これは……」
どうしよう、これは説明に困るぞ。
掛け値なしに危険すぎる女の子(いや、植物?)だからどう言ったらいいのやら。
と、悩んでいたら体の周りに赤い燐光が舞って勝手にフェネが顕現する。
よく分からないのだがどうやってこの質量物が体の中に格納されるというか憑依してるのだろう。
謎だ。
「おっちゃん久しぶり」
「おや? ……あぁフェネちゃんか。これまた随分と小さくなったね」
なんで知り合いなんだろう。
フェネはあの平原をうろついていたフェルカーモルトな女の子だぞ。
内心ちょこっと驚いていると、おっちゃんが俺に目を向けてきた。
「そうか、そういうことなら君がべイン君の言っていた新参者かい。
だったらその剣と引き換えで好きな服を持っていくといい」
「え? 本当にいいんですか? こんなボロボロの剣で」
「構わんよ。ここは相応の対価を出すならば何でも用意する万屋だからね、
ついでにズボンと靴も持っていきなさい」
ここは遠慮せず厚意に甘えさせてもらおうか。
……いやでもな、タダより高いものはないというだろう?
俺にとってあのぼろっちい剣はタダ同然であり……。
まあいいか。
ボロ剣と引き換えというのが高いのか安いのかは分からないが、いらない荷物がなくなって必要なものが手に入るのだ。
店の中をさっと見て回って、これだ! と思ったものを選ぶ。
もともと俺が着ていたものと同じような服を選んだが、妙にサイズが合うところが気になる。
「いいものを選んだね」
おっちゃんがなにやら引っ張り出しながら言ってきた。
白いシャツと……砂色のズボン?
「これからレイズ君のところにいくだろうから、これ、渡してもらえないかな」
渡された服は……男物の服だな。
白いシャツは長袖で、砂色のズボンはポケットがたくさんあって丈夫な生地、カーゴパンツか。
レイズって女だよな。
しかも見た感じでこのサイズじゃ大きすぎる。
どうするんだろうか?
いや、聞くのもあれだな。
それより物を運ぶからにはリュックが欲しいところだ。
「すみません、リュックかなにかありますか」
「ああ、あるよ。適当にその辺のやつ持っていきなさい」
「ありがとうございます」
登山用のような、それなりに丈夫そうなものを選んだ。
隣になぜか見るからに軍用のバックパックまであったけど……。
「それじゃあ頼むよ」
「はい」
店を出る。
ボロボロの剣が一振りだけ、たったそれだけ随分といい買い物ができた。
シャツとズボンと靴とリュック。
身なりまあよくなったが、やはり頭の上のものが原因か、人がいなくなる。




