彼女の想い-2
すみません、更新が遅くなりました。
次回からも遅れます
階下に降りると強面のお兄さんたちが物々しい雰囲気で整列していた。
ジャングルのようだった部屋は綺麗に……乱暴に引き剥がれた後は目立つが片づけられていた。
このお兄さん方、先ほどの復讐として数で一気に襲ってくるつもりだろうか。
と、思っていたら。
「「兄貴! さきほどはすいやせんでしたぁ!!」」
一斉に床に手をついて頭を下げた。
それはもう土下座の見本とでも言うべき形でだ。
問題だ、大問題だ。
こういういけない人たちを関係を持つと後々がかなり厄介だと思うのだよ。
「いやぁ、まさかあれほどお強い方とは露知らず……」
なんかもう聞く気はないんだけど。
人をいきなり監禁しておきながら怖い目に遭ったら態度を百八十度変えるとか。
それにこういうのって、断れないやつじゃないだろうかな。
”はい”を選択するまで”いいえ”を選び続けても無限ループするあれ。
プログラムで記述するとIF文でいつまでも最初に送られるようなあれ。
嫌だよこんな変な危ない人たちと関係持つのは。
それにしても長い。
なにやら誉めちぎるような言葉が延々と口から放たれているが、ちっとも嬉しくない。
だんだんと鬱陶しくなってきたな。
「……なのでこれからボスと呼ばせ」
「俺やることがあるのでこれで失礼します」
一方的に終わらせて立ち去るのが常套手段だ。
街中でキャッチに捕まっても完全無視で歩いて行くのが一番だ。
きっとこういうように強引な対応がここでは一番いい選択だ。
土下座から正座状態に移行していた強面の間を通り抜けて出口へと向かう。
「待って下せえ、何をやるんですかい」
何を?
そう聞かれてもやることは一つだ。
ベインに言われたように城壁を壊してさっさと逃げてしまおう。
「ここの城壁を破壊します」
言った途端にざわつき始めた。
当たり前の反応だろう、城壁とかのような防衛設備は大事なものだからそれを壊すと言えばねえ。
「ボス! あっしらもついて行かせて下せえ。
ベインさんを恐れないその」
続きは聞かずに建物から出てすぐにドアを閉める。
ついでに都合よく木造だったので魔法を使って完全固定。
ああいうのに付き合っていると日が暮れる。
それに思い出した、ああいう連中は目立つことが好きなのだ。
本当に厄介だ。
-1-
今度は何事もなく通りを歩けるかと言えばそうでもない。
俺が歩くと自然に人垣が割れる。
やはり頭の上のマンドラゴラ……アルルーナのアルが原因なのだろう。
あぁ、空は今日も青かっ……夕日が眩しい。
後ろを向けば先ほど脱出したばかりの建物の全貌が見て取れた。
中はそれなりに綺麗になっていたが、屋根の隙間から這いだした蔦が絡みついている。
うん、YAKUZAな人たちの事務所をダメにしちゃったな。
『アワード、ハイブ潰しを獲得しました』
……そんな称号欲しくはないね。
そもそもこの称号ってどこに表示されるのか。
魔導書(偽)のステータス説明を見ると、『表示したい称号をあらかじめ設定しておくことで解析を受けた際に自動的に表示される』とあった。
設定しなければ不名誉な称号はバレない。
ならば俺は設定しない。
そう決めて、不自然に歩きやすいちょっとアレな通りを歩き始めた。
少し歩くと他の危なそうな人たちに目を付けられるが、頭の上の危険物(取扱い資格なし)を見るとすぐに走り去っていく。
効果覿面だが、危ない人たちでこれだからな、一般人なんて寄ってすら来ないのよ。
そしてそれで困るこの現状。
今の俺の格好はかなりみすぼらしい。
焼け焦げたシャツ、ボロボロで泥と埃にまみれたズボン、スケルトンの剣、魔導書(偽)、裸足。
どこかで服など衣料品を買おうと店に視線を向けた途端に客が消え、店が閉まる。
買い物が全然できないのだ。
こういう場合って闇市のようなところに行けばいいのだろうか。
そう思って足を運ぶとその瞬間に店じまい……。
誰にでもものを売ってくれるような店がないのか。
魔導書の地図を開いてみると、ヨトゥンヘイムの地図が表示されている。
さっと確認していくと、近くの路地裏に『万屋』と表示されている店があった。
万屋、甘党の店主がいる訳ないと思うが……まあ行ってみるか。




