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アナザーライン-遥か異界で-  作者: 伏桜 アルト
dreaming of dream [夢を見る夢]
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フェニックスの少女-18

『空属性魔法Lv.1の登録が完了しました』


 その声が頭の中に響くと同時に、牢屋の壁をすり抜けるイメージを構築した。

 空間に関する魔法、ということならば壁抜けくらいはできるだろう。

 そう考えてのことだ。

 そしてなによりも看守たちとの真っ向勝負……戦闘は絶対に避けたい。

 俺には殺さずに無力化するなんて器用な技術はないから、意味のない殺生をしてしまうだろう。

 だからだ。


「君……フェネはどうします?」

「…………」

「黙ってちゃ分からないんですけど」

「……仕方ない」


 フェネが立ち上がり、俺に近づいてくる。

 怖い、怖いが。


「許可しなさいよ、あんたに憑依してやるんだから!」


 いきなり意味の分からないことを言われて慌ててしまう。


「ひ、憑依?」

「いいから”許可する”って言いなさい!」

「きょ、許可す、る」


 途端、フェネの身体が光りながら倒れ込んできて、俺に触れる前に完全に光の粒子になって入り込んできた。

 これって……どういうことなんだろうか。


『ぐずぐずしてないで早く行きなさいよ』


 頭の中にフェネの声が直接響く。

 なんだかよくわからないけど、足音が近づいてきているから今は逃げるべきだな。

 待機させていた魔法を顕現させて、壁に触れると何の抵抗もなくすり抜けた。

 抜けた先は薄暗い細い路地だ。

 しかも、


「あんだぁテメェ?」

「オイオイ、ここはガキが来るような場所じゃねぇぞ」

「あーあー、カモられに来たなぁ」

「……………………(汗)」


 冗談きつい。

 壁を抜けたすぐ向こう側が、ましてや牢獄のすぐ外にこういう……。

 YAKUZA的な人たちが勢揃いしてたむろしてちゃいけないと思うんですね。

 あー……こういう場合は、


  たたかう

  はなす

 →にげる!!


「あ、えとぉ……すみません、なんか間違えました」


 今ここに土下座という選択肢はない。

 していい場合と悪い場合がある。

 悪い場合は今のように逃げなければならない場合だ。


「さようなら」


 アキトハ ニゲダシタ!

 シカシ マワリコマレテシマッタ!


「おい、ワレェ! どこのもんじゃあ!」

「ひぃぃっ!」


 数の差って怖い!

 どうする? どうしよう? どうしたらいいのよ?

 ……………………。

 死にたくない……死?

 あ、殴殺魔ことフェネがいるじゃないか。


「フェネ! お願いします!」

『あんたのいう事なんかなんで聞かなくちゃいけない訳?』


 ……それはないでしょうよ。

 いや、うん、いきなり女の子に戦えなんて命令する俺も俺だけど。


「おい兄ちゃん、腹ぁ括ってもらおうかぁ」

「あー……えっとー…………」


 さすがに一人でこの人数を相手取るのは不可能だ。


「すんませんしたぁー!!」


 手の中に癇癪玉のようなものを百個作りだして真上に放り投げる。

 さすがに普通に爆発を起こしてしまうと、こんな狭い路地だから爆風とかで不味いことになる。


「ぬぁっ!?」


 一気に破裂させてパカパカパカパカと音が鳴り響く。

 一つ一つは爆竹並みでも、同時に爆発させればすごい音になる。

 YAKUZAな人たちが怯んだ隙に逃げ出す。

 路地を飛び出せばミズガルドと似たようだけど、どこかが違う街並みが広がっていた。


「ちくしょうやりやがったな!」

「待てやこのクソガキ!」

「うわっ!」


 通りに駆け出せば、背後からぽひゅ~ん……と音が聞こえ、振り向けば昼間の花火。

 ドカーンと空に爆発の花が咲いて周囲の注目を集める。


「テメェら! そいつをひっ捕らえろ!」

「サー!」


 ぞろぞろと建物や路地から人が溢れる。

 いやもう……これ個人で喧嘩していい人数じゃないって……。


 -1-


 何をやってどこをどう移動したのかはまったく覚えていない。

 恐らく二十分くらいは全力で走り続けたと思う。

 足の裏がヒリヒリと痛む。

 この引き籠もりなニート野郎がよくもまあ、裸足で頑張った。

 気付いたときにはどこかの倉庫の中で木箱に入って隠れていた。


『アワード、狂乱者を獲得しました』


 そんな声が頭の中に響くが、今はどうでもいい。

 今はそっちより警戒すべき事案がある。


「おい、見つけたか」

「いんや。あのがきゃあどこに行きやがった」

「親分、地下にはいませんでした」

「はぁっ! 残るは二階だけだ、ここを塞いでろ」


 詰んだ。

 逃げ道がない。

 飛び降りるなんてのはとんでもない。

 あんなのはスタントマンの仕事だ、俺みたいな素人がやれば骨折だ。


「どうする……」


 どうやら俺が入り込んでしまったのは別のYAKUZAな人たちの倉庫だったらしく、なにやら危ないものがたくさん置いてある。

 だって今、俺が隠れている木箱にも白い粉の入った麻袋が入っているのだから。

 ああ……本当にどうしよう。

 なにかいい脱出方法は……。

 いや、むしろもう戦うべきか。

 かなり人数が減ったし、室内なら数の利は活かせないはずだ。

 だとすれば……粉?

 粉と言えば粉塵爆発。

 しかも危なそうな成分の粉だ。

 確かネットで見たやつだと、埃とかがたくさんあるところに火を点けると爆発。

 とかロウソクに向かって小麦粉を吹き付けると爆発したりだな。

 やってみるか。

 ただ、誰かさんのように自滅しかけるのは嫌だから……。



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