フェニックスの少女-14 〉〉 イザヴェルのどこか
「はい、というわけで第……えーっと、何回目だったっけかな?
まあいい、定例の会合を開会しまーす」
気付けばどこかの平原に座っていた。
白く大きな龍が円を描くように体を横たえ、その内側に俺たちはいる。
レイズの一言で始まった”会合”とやらは簡単な自己紹介から始まった。
いろんな種族、いろんな格好、多種多様な集まりだ。
自己紹介が始まっていく。
一人一人の持ち時間は短いが、かなりの人数がいるため時間がかかる。
白い少女、レイズ。
セインツを率いるすべての属性を扱う魔法使い。
竜人族の女の子、クレナイ。
通称はレナで、紅龍隊というセインツ傘下の組織を率いている。
優男、キニアス。
銃を扱うが、メインの戦い方は魔法らしい。
くすんだ金髪の青年、ヴァン。
ラグナロクというセインツ傘下の組織を率いる魔法剣士で、遠距離からの砲撃が得意とのこと。
臙脂色の軍服、ウィリス。
ラグナロクのサブリーダー、以上でもなければ以下でもない。
黒髪ピアスのちょっと怖い感じのお兄さん、ベイン。
セインツと敵対するヴィランズを取りまとめる外見と年齢が一致しない人?
ニワトリ……もといフェニックスな女の子のフェネ。
72柱というところの所属らしい。
しかしそれよりもなんでこの子が俺の隣に座っているのだろうか、とてつもなく怖いのだが。
しかもしかもすごい薄着で。
なんだろうか、こうも近いと変なところが大変な反応を起こしてものすごいことになりそうだ。
具体的に言うならば。
本能的な奥底の部分が拒否反応を起こして幽体だけが離脱してどこか遠くに逃げ出してしまいそう。
簡単に言うならば。
恐怖でまたぽっくりいきそう。
他にもまだまだ見るからに危なそうな人たちもたくさんいる。
「あ、あの……なんで俺がこんなところにいるんですか」
「もちろん気絶している間に運んだからだ」
さらっと近くに座るレイズが答えてくれた。
言質取ったよ、それって誘拐か拉致という犯罪ですよ。
あ、いや、この世界で俺の常識なんて通用しないんだろうけどさ。
とりあえず言えることは言おう。
「もう帰っていいですか」
まず自己紹介の段階で俺みたいな小物が会ってはいけない大物ばかりだ。
一部キニアスみたいなのもいたけど。
とにかく一人一人がそれなりに危ない人で、なぜか分からないけど半分くらいは敵勢力のリーダーだったし。
俺がここにいていい理由が見当たらないし、周りの怖い人や隣の怖い女の子がいるから長居したくない。
「ダメだ」
しかし返答は無慈悲なものだった。
レイズのたった一言。
この場を仕切っているのは彼女であり、彼女の許可なく出て行くことは物理的に不可能だ。
ほら、龍に囲まれてるから。
でも逃げたい。
そろそろ俺の恐怖ゲージが上限突き破って溢れそう。
SAN値がもう回復不能な領域まで行ってしまいそう。
そもそもだよ、そもそもなんでこんな場所に、こんな会合の場に俺が運ばれたのかすら分からない。
「本当にダメですか」
「ああ、ダメだ。今回のメインはお前をどういうふうに扱うかということだからな」
「…………」
あ、俺の処遇ですか。
処刑以外ならなんでもいいですよもう。
こんな変な世界ならきっとなにしても危険なことばかりだろう。
と、諦めたくはない。
だから周りに助けてと視線を向けてみたが、みんな諦めろというような視線を返してくる。
となりのフェニックスな女の子に視線を向けると、殴られそうだったので飛ばしてキニアスに。
「はぁ…………。おいおい、レイズ。僕
だってはじめてこういうことになったときは緊張して混乱したもんさ。
だから少しくらいは息抜きさせてやってもいいんじゃないのか?
しかも戦場に行っての死にかけてのってこれはきついぞ」
「しかしだな」
「それに、毎度恒例の外に来たお客さんの出迎えもあることだし」
「仕方ない、行って来い。話はこっちで勝手に進める、他もいいな?」
周りの危なそうな怖い人たちが一様に皆頷いた。
やったよ、抜け出せる。
こうして俺はキニアスの助言があって、二人一緒に変な空間から解放された。




