フェニックスの少女-10
……迷子になりました、割と冗談抜きで。
いい年して迷子になるなんて笑えるような状態だろう。
途中まではしっかりとキニアスの後ろをついて行っていたのだが、敵が多くなってきた辺りから迎撃が間に合わなくなって、追いつけなくなってそのまま分断、包囲されてはぐれました。
そして敵が多くなってきたという点が問題だ。
どうも中心部に向かうときにちょっとそれて敵側の方に突き進んでしまったようで、俺の周りには味方と思わしき人がまったくいないんだよ。
それはつまるところ完全包囲されているという事であり、救援に来た俺が救援を求めたい状態であるということだ。
「冗談きついって」
いままでゲームですら多くても一対七くらいだったというのに、この状況は見渡す限り敵だらけだ。
掲げられている旗の数が十本くらいあるから人数も二百人くらいはいるのだろう。
と、冷静になってはいるが激戦中ですよ、俺。
飛来する魔法弾を氷の壁で防ぎ止めながら、敵集団の中に火の魔法で大爆発を起こして容赦なく吹き飛ばしている。
さらに追加で地面には地雷のような魔法を敷設しているから一定の距離は保たれているのだが、二百人前後が全方向からアサルトライフルを撃ってくるというと状況と思ってほしい。
どこの弾幕ゲーですか、攻略不可能なムリゲーですよ。
「くっ」
やはり三属性使いながら戦ったのが不味かったのだろうか。
常に治癒をおこないつつ両手で火炎弾と氷弾を乱射したりしたのが。
周りの敵はどうみても一属性しか扱えない様子で、二属性以上のは指揮官的な立場だ。
三属性同時に扱える俺は結構上の立場とみられて大将首のような扱い?
「はっ、はぁ……まだ」
魔力的には全然余裕があるのだが、精神的にきつい。
仮想のゲームではあくまでもゲーム、だけどこれは本物の殺し合い。
殺すことに罪悪感なんて覚えていたら――バゴンッ!
後方で土煙が上がり、踏んだやつの片足がボトッと飛んできた。
設置型の魔法、俺は地雷と呼んでいるものが発動した結果だ。
土煙が魔法の勢いで飛ばされ、苦しみ悶える敵が目に入るがそれを意識している暇なんてない。
「テメェどこの所属だ! セインツは引っ込んだからちげぇしヴィランズじゃねえな。服装からしてチャーチでもカテドラルでもねえ」
魔法の砲撃に混じって声が飛んでくる。
救援に来て、助けた引き換えに俺が置いて行かれるか……。
冗談じゃない。
生きて帰ってやる。
いくら魔力が無尽蔵と言っていいほどあるにしろ、精神的に持ちそうにない。
このままじゃいずれ押し込まれるジリ貧の状況。
押し返すためには……包囲から抜け出す一手は…………あるな。
訓練のときに教えてもらったあれが。
複合魔法が。
火属性Lv.4を二つと水属性Lv.3を合わせて……。
4x4x3でLv.48、名を付けるとするならばブリザードボム。
火属性の爆発と水属性になぜか含まれている凍結の特性を組み合わせた魔法。
ああ、思い出した。
確か「囲まれたときはこうやるのよ」とか言われたなぁ。
「……っ」
一瞬迷った、俺がこれだけの人数を殺めてしまっていいのか。
それでも、
「凍てつけ!」
やらないならば俺が殺される。
赤と青の燐光を纏った拳で地面を殴りつけるように叩く。
爆発的に水が吹き出し、一瞬の差で冷気が追いかけて、広がって、フィールドを凍結させて黙らせていく。
そして、やるだけやって後悔した。
「…………あ、出られない?」
俺を中心に発動した。
それ即ち、俺を閉じこめるかのような氷の迷宮が出来上がったという事でもある。
入り口がなければ出口もない。
幸いある程度の空間が確保されているが、
「……自分の魔法で凍死するとか嫌だぞ」
寒い。
まるで、というか最大出力の冷凍庫の中にいる気分だ。
しかもこれだけの氷。
見上げれば五メートルちょっとはある。
火の魔法で溶かすにしても、氷って一部分だけ溶かすと膨張率なんとかで亀裂が入る。
そうすれば生き埋めになり、冷凍され、戦場に放置というデッドエンドまっしぐらだ。
だけど、
「無理にでも……やってみるか」
何もしなければそのうち低温でダウンするか、酸素濃度の低下でダウンだ。
やるしかない。
意を決めて、手の先に火を出した瞬間、魔導書が光る。
そして頭上に引き寄せられるような気配を感じて見上げると、真っ黒な大穴が開いていた。
「……な、なんだこれ」
まるでマイクロブラックホール。
俺が見たことのあるもので言えば、あの堕天使が作りだしたゲートだ。
何か出て来るのだろうか。
そう思ったと同時、白い何かが落ちてきた。
「え」
いきなりのことに避ける間もなく、そのまま俺の顔面にクリット。
補足・クリットとはCritでありClitではありません。




