フェニックスの少女-3
歩き続けやっと石柱に辿り着いた。
引き籠もりの俺がよくもまあ裸足でここまで歩けたことを褒めてほしい。
前を見れば石柱。
四角柱だが先端部は尖っている。
根元の方には何やら細かな彫刻が施されている。
それを見ながら石柱の反対側に来た時、そいつが目に入った。
カウボーイハットのようなものを被り、カーキ色のトレンチコートをまとった人間だ。
なによりも問題なのはそいつが見たこともないほど古い銃を持っていること。
「ん、誰だ!」
「なななななな、なな、なななんですか!?」
銃口が俺に向けられる。
見たところは単発で一発ごとに込める旧式のライフルだが、そんなことは問題じゃない。
銃があるなら撃ち殺される可能性があることが問題だ!
即座に両手を上げてホールドアップ。
なんか銃を向けられたらすぐに逃げろとか聞いたけど逃げたところで意味ないよね。
「お前、ヴィランズか?」
「い、いいいぃぃいえ、違いますよ」
ヴィランズとは何ぞや?
……と、そんなことよりも銃が怖い。
早く下ろしてくれないだろうか。
「あ、あの……俺は怪しいものではありませんのことですよ……」
いかん、怖すぎて口調がおかしくなった。
「……頭に真っ赤な鳥を乗せている時点で十分に怪しいだろ」
ですよね……。
言い訳のしようがないな、街中でニワトリを頭に乗せた人がいたら間違いなく職質を受けるだろう。
頭に真っ赤なリンゴを乗せて歩く、某仮面野郎と同じくらいに怪しいのだろう、俺は。
「それで? なんだその格好は、そんなにボロボロという事はそれなりに戦ってきたということか?」
正直に言ってみようか?
もちろん信じてもらえないだろうから言わないけどさ。
意味不明な爆発に巻き込まれた、とかいきなり言われたとして誰が信じますか?
誰も信じませんよ。
どうする……さっき聞かれたことから考えても変な組織の縄張りだったりしたらそのままズドーン……。
嫌だな。
さてどうしたものか、あの堕天使と戦ったとでも言ってみようか?
堕天使もそう言えと言っていたし。
「えぇっと……実は少し前に真っ黒な翼の天使と戦いまして……」
「…………」
相手が「はぁ?」といった表情で「何言ってんだこいつ」的な感じで見てくる。
とりあえず黒い羽根も見せよう。
「あ、これ戦利品です」
「んなっ……」
あれ? なにか不味かっただろうか。
相手の銃がカクンッと下ろされ、トリガーから指が離された。
撃つとき以外は指をかけるな、基本ができてる。
「お前……あの天使と(ガチで)やりあったのか……?」
やりあったのかって? 堕天使と本気で戦ったら一瞬で炭か灰にされる自信がある。
「少し……えっと、一時間くらい(訓練として)魔法で」
「倒したのか?」
何言ってんだこの人は、あんな化け物みたいな堕天使を倒せるわけないだろうに。
「いえ、空に溶けるように消えていきましたよ」
「そ、そうか……なあ、お前所属は決まってないのか?
フリーダムだったらセインツに入らないか?」
「飯が食べられるのなら入らせてください」
何か食べられると聞いてここまで来たんだ。
食べ物がないのなら入る気は毛頭ないし、フリーダムとかセインツとかよくわからないけど適当に逃げてしまえば問題はないだろう。
逃げ切れるのかどうかが問題だけど。
「ああ、食えるとも。あの悪魔を撃退できるほどの実力があるならそれなりにいいものが食えるぞ」
悪魔って……あの堕天使はそんな呼ばれ方をしているのか。
いや、妥当だろう。
俺に魔導書を渡したのだから。
「だったら入ります。何か手続きとかって必要なんですか?」
「レイシスに、うちのリーダーに会ってくれるだけでいい」
「分かりました、それで……そのリーダーってどこにいるんですか」
「今は出かけてていないから、ミズガルドでしばらく待っていてくれ。
そこの石柱に触れたら勝手に飛ばされるから、ついて来いよ」
「はい」
銃を持った男が石柱に触れ、それに倣って俺も触れる。
こうして俺は、ミズガルドへと向かうことになった。




