同郷-19
鉄心入り木刀を持ったままでの走り込み。
重量物を持ったままでのいきなりの運動で汗をだらだら流しながら俺は座り込んでいた。
隣にはさらにダウンしているレイズがいる。
仰向けで倒れこんで……だらしねえな。
だけど、ランニングシャツとハーフパンツが汗でしっとりと。
張り付いて透けたランニングシャツ、胸のぽっちがよく見える。
「なんで、俺より、お前が」
「運動……慣れてない」
「なに、が、特訓……だよ」
「あー……きゅーけー」
そんな訳でたっぷり休憩しながら休んでいると、ウィリスに濡れタオルを投げつけられ汗を拭いてリフレッシュ。
目の前ではシャツを脱いで体を拭く恥じらいの欠片もないレイズ。
にしても脇の下とか腕とか全然毛がないのな。
「全身脱毛?」
「してねえよ」
「無毛症?」
「さあ? って、っと」
上半身裸のままで立ち上がったレイズが拳を突き出してハイキック。
「よし、ちょっと実戦やってみようか。攻撃魔法と急所狙いはなしで」
「はっ?」
「お前それでオレに殴りかかっていいぞ。つかやれ、一発でも当ててみろ」
やってええんか?
この鈍器でやってええんか?
こんな凶悪な木刀で女の子を攻撃する。
抵抗があったよ。
「骨折れても知らねえよ」
「折れるもんなら折ってみろってんだ」
すっと踏み込んで斬り上げる。
顎狙いの一撃は軽く受け止められた、素手で。
受ければ確実に骨折するであろうこの凶器の一撃を素手で。
手加減不要か。
「痛くないのか」
「オレ、障壁魔法は得意なんで」
「……あっそ」
足元を爆破して距離を取る。
「おまっ! 攻撃魔法なしって――」
レイズを取り囲む形で火を放って火力を上げて火柱で包む。
が、何の前触れもなく炎がかき消された。
魔法が砕けた?
「焼き殺す気か!?」
「いや障壁で効かないだろうから酸欠狙い」
「もっとダメだよそれ!?」
言ってる途中で火炎弾を放って踏み込む。
中途半端なところで炸裂させ視界を塞いで、爆発起こして横に動きながら飛び上がって側面から脳天狙って――
「ちょまっ」
ゴツッとクリーンヒット。
想定外。
まさか障壁のわずかな隙間に入るとは思いませんでした。
まさか衝撃に耐えられずに手首が折れるなんて考えていませんでした。
勢いそのままにレイズにぶつかって押し倒して、そのまま二人して痛みに震えるという訳の分からんアホをやらかして……。
「バカ……」
「すまん……」
レイズの白い髪が赤く染まっていく。
俺の手首が紫色に腫れあがっていく。
すぐに治癒魔法で回復するがズキズキした痛みが残って訓練どころじゃない。
「くっそ……なんで障壁の隙間ピンポイントで」
「やっていいつったのそっちだろ」
「言ったけど……くぅ」
あぁ、なんだろうか。
思い付きでやったにしろ、なんであんな動きができた?
やけに懐かしい感覚だったけどなんでだ。




