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アナザーライン-遥か異界で-  作者: 伏桜 アルト
between LIFE and DEATH [死線]
144/154

同郷-15

 なんやかんやあって。


「ほら、やってみろ」


 炎の剣を振り回すレイズにそんなことを言われる。

 魔法剣。

 それは分かる。

 俺だってアクアグラディウスっていう詠唱で使ったことがあるから。

 ただこれは無詠唱の魔法剣。

 自分の手と剣の間にほんのちょっとの隙間を開けて魔法をイメージし続ける必要があって、うっかり触ろうもんなら自分の腕を炭に変えるとか……。

 断熱結界とかないんですかねぇ……寒冷地とか灼熱の砂漠に派遣される連中の常備魔法だと思うんだけど。


「爆発ダッシュができるならやってみ? もし燃えたらすぐに治してやるから」

「いや燃えたらっていうかミスったら炭に」

「下半身吹き飛ぶかもしれない精密制御は無詠唱でやるのに?」


 やりたくないけどなんか怖い笑顔だから拒否できない。

 クロードに氷の塊投げられて潰されかけて……クロードはクロードで怒られてラグナロクの連中と一緒に瓦礫の撤去してるし。


「ほらやってみろ!」


 氷の剣で斬りかかって、もうどうにでもなれと炎の剣をイメージして受け止める。

 触れた瞬間にシュッと音がして氷の剣が折れる。

 破片が――


「あっぶねぇ!」


 ひょいと頭を傾けたらギリギリのところを……。


「よかったな切れなくて」

「切れるっつうか大怪我ですが!?」

「まあそれはそれとしてだ」


 魔法剣を掴まれて、砕け散る。


「ウィリス!」

「今忙しい!」

「いいから来い!」

「忙しいつってんだろうが!」


 なんというか、目を向ければそこに当たり前にある重機。

 ここ剣と魔法のファンタジーじゃないかよ。

 なんで当たり前に戦車とか銃とかあるのよ。


「あっ」


 瞬きすればウィリスがVサインでレイズの両目にぶすっと……。


「ぎゃあああ! 目が、目がぁ!」


 あーぁ可哀想に。

 レイズでもウィリスの攻撃はどうにもならんのか。


「アキト、こいつ灰になるまで燃やしとけ」

「いや燃やすとか……じゃなくて! 目はダメだろ!?」

「あぁ大丈夫だ。頭潰したくらいじゃ死なないから」

「えぇ……」


 最強……?

 いや、強いだけで無敵じゃないから何かしら弱点はあるんだろうけどやられすぎじゃないか。


「ウィリスめ……くそっ、目はダメだろ」

「レイズって、なんでそんなやられんの」

「オレに聞くなよ。それより明日からラグナロクの拠点でちょっと訓練するぞ、そういう訳で解散!」

「今日の訓練は?」

「……ちょっと、休ませて」


 うん、まあ……いくら魔法で回復できるとはいえダメージ残るしな。

 あんなの見たら休みは必要だよ、俺だったら死んでるし。


「……暇になったな」


 何しようか。

 時間的にはまだまだ朝。

 ドタバタあったけどまだまだお昼には時間がありすぎるし。

 散策するか。

 マッピングと情報収集だ。

 どうせ帰ることなんかできやしないだろうし帰れたところでなぁ……どうせ引き籠りになるだけだよ。

 知り合いがいないからこその、状況が全然違うからこその今だ。

 生きる理由はないけど死にたくはないし殺されたくもないからな。

 時間がある限りは生き続けよう。






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