同郷-1 〉〉 第一層アスガルドのどこか
歩きっぱなし。
休憩すら無く歩きっぱなし。
ユグドラシルでのサバイバルはまあ自分のペース……ほぼクロードのペースだったけど、それでも休憩があった。
こいつらなんだ、休憩なしで連続行動できるように訓練された軍隊か?
なんで休憩が無い?
「足いてぇ」
「いい加減休憩を……」
隣で俺よりも先にダウンしそうなレイズが汗をだらだら落としながら訴えるが。
「飛べよ」
歩かず楽しているクロードに一言で拒否されてしまう。
「魔力ないんだってば」
「大気中の魔力を吸収して使え、出来るだろお前なら」
「……なんか、風当たり強くない?」
「テメェほんとに宇宙までぶっ飛ばしてやろうか」
怯えてささっと俺の後ろに隠れてクロードの怖い視線から逃げて来やがった。
俺にヘイトが向いたらどうしてくれんだよ。
宇宙空間どころか打ち上げられた着地すら出来ないんだから、最悪死ぬんだけど。
……いや、即死ならいい方だよな。
下半身から墜落してぐちゃぐちゃになって激痛を味わいながら失血死を待つとか……あぁ、最悪は想定外の事態だから死ぬのはまだいい方だ。
「なあクロード、ほんとに休憩を……いや、何でもない」
睨まれたベインまでささっと後ろに……。
「あんたら何やってんですかね」
「オレはまあ、クロードに勝てないし」
「俺もまあ空間ごと破壊する攻撃受けるとヤバいし」
「…………。」
なに?
最強クラスのチートなお二人が死神を怖がると。
「あっ」
不意にレイズがリュックを開けて中身に手を伸ばし――待て、それ見られるといろいろヤバい。
「ちょっ、待てそれは」
下着が引っ張り出され。
「なんでオレが着てたのが」
どう言い訳する?
……言い訳ってか、何もねえよ正直に言ったところで無駄だろうけど。
「なんか湖で釣れて……」
「確か捨てた場所は水龍の住処だったはずだけど」
「それはクロードが仕留めてステーキにした」
「……化け物め」
化け物が死神を化け物認定?
「あれ、なんでノルンの杖が」
「それも釣れた」
「他に髪飾りなかったか? 青い宝石のついた」
「あったあった。あっ、そういえば」
忘れてた。
あの堕天使がレイズに渡せって言ってた黒い珠。
「これ、メティがレイズにって」
「魔石? いつ貰った?」
「少し前に」
「そっか……あいつも、死んだか」
レイズに珠が吸い込まれて消えた。
と、同時に涙をぼろぼろとこぼし始めた。
声を出しはしなかったけど、その場で崩れ落ちてベインに支えられて。
「先に行け、後で連れて行く」
ベインにそう言われて、気にもせずに進んでいくクロードについて行く。
この二人ならスケルトンの大群相手でも余裕で対応できるだろうし、何よりそこらのモンスター程度が勝てるわけない。




