再会ヘの歩み-10
一つの階層をぶち抜いたクロードは、砂糖のように真っ白な、純白の砂漠を目にした。振り返れば〝穴〟が消えて果てのない蒼穹。
乾燥した砂漠だった。雲がない、湿った空気すら存在しないからっからに乾いた灼熱地獄。照りつける太陽光を歪ませ、直接浴びないようにする。恐らくパーカーのフードに潜り込んでいるアルビノのハーピーには耐えられない。
「はぁ……ようやく突破すりゃ砂漠かよ」
何かないかと探してしばらく飛んでみるが、目印になるような物は何かが爆発したらしき場所だけしか見つからず、しかし飛び続けるとなぜが全く同じものが一定の間隔で存在している。何だろうかと疑い、すぐにその飛び散り方ののパターンが同じだと気付いてループしていると仮定する。
飛び方を変えた。直線ではなく、目印となる爆発現場を中心に円を描くように、徐々に広げていく。
「見つけた」
小一時間ほど飛んだだろうか。かなり遠くに人影が見えた。飛行速度を上げる。
水浴びをするアトリと、水を魔法で創り出すアキト。そしてそこに接近する不穏な存在。あれは不味いと、そう判断して更に加速。方向だけを確実に合わせ、高度を下げて位置エネルギーを運動エネルギーへと。
砂煙を引き連れて突っ込んだ。
到着したときには胴体を引き裂かれて転がるアキトと、必死に抵抗するが為す術なく弄ばれているアトリ。
「んのっ……死ねっ!」
鉄心入りの靴で本気の蹴りを入れて遥か彼方に飛ばした。感触的には頭部を潰した。
「遅い」
「悪い、立てるか」
手をさしのべると、振り払われてしまう。
「ほんと、さいっあく」
立ち上がったアトリの股からは……。
「ピル持ってない?」
「持ってねーよそんなもん。帰ってからもらえ」
「あーもう! 二回目だよ!? あのクズに中に出されたの! 気持ち悪いったらありゃしない」
「だったら悪い、もっと気持ち悪いもん見せる」
一周して飛んで来た強姦魔を蹴りで受け止め地面に叩き付ける。
「いってぇなこの野郎」
「天城采斗……お前は女神の加護で死ねない、分かるな?」
「お前もだろうが、クロード」
「残念ながら俺のは加護じゃなくて呪いなんでな」
肩を踏みつけ、骨を砕いた。
「大抵のやつは、最初はやめてくれ、たすけてくれ。そう言うんだ」
腕を踏んで、骨を砕いた。
「そう、叫ぶんだよ、痛い、痛いって」
暴れ叫ぶ強姦魔に対し容赦のない暴力を振るう。
指の先まで砕いて、反対側も同じように。
太股から爪先までも、そしてあばら骨を一本ずつ。
いつの間にか殺せ、殺してくれと懇願していた。
「いいか、死ねないってのは永遠に苦しむことになるんだ。お前はもう何をしても許されない」
宙に浮かばせ、心臓を基点に加重。引力を増幅し圧壊、吐き気を覚える音と共に潰れ血の滴る肉塊になったそれを解き放つ。もはや大型トラックに挽き潰された動物の死骸なんて比べものにならない惨状になったそれは、まだ蠢いていた。
飛び散った体液が、肉片が蠢いて一つに戻ろうと動く。
「クロード……いくらアタシでもそこまでやろうとは思えない」
「もう殺せないなら、手ぇ出したら痛い目に遭うぞって覚えさせないとダメだろこれ」
「やー……だからって」
「なんなら圧力容器に入れて宇宙に投げるか」
「それいいかも。今度やろうよ」
「ちなみに戻ってきたぞ」
「はっ? やったことあんの」
「ある。で、あっちもどうにかしないとな……」
かろうじて生きてはいるが、一般常識の範疇では手の施しようがない状態のアキトに目を向けた。




