34.パステルエナメル
宗二の目の高さに項があった。
二つの目で立体的にその柔らかな色の隆起を見ていると、鼻と目の丁度真ん中がぎいんと痛む。
どうして、とか、何故、とか。
彼自身でどうにもならないことを理由に挙げて、だから、と理由付けようとしてしまう。
--全く、
彼女は少年のそういう因子を刺激する存在だった。
シャーペンの芯を買いに来ただけ、である。
何故だか私立学園の密集する地域なのものだから、文具屋と一口に言っても、取り扱いは種々雑多である。目当ての芯の隣に、平気でパステルまで並んでいる。
宗二は今までに一度として、教師にパステルの使用や所持を求められたことが無い。その後、例えば少年の兄くらいになったならば、一通りの色と出会うことになるだろう、とその程度の認識である。
絶対的に言い切れるのは、こんな風な出会いではなかった、という事だ。
--これ、
この色は。
滑らかな象牙の色。
120円で10センチにも満たない。
そっと摘まんで手の平の窪に慎重に乗せてみた。幽かな重みである。
「……これ、」
目蓋の裏の憧れの色。痛みをも伴う色。
--項の色、
「……探し物?」
「い、いえ、」
期せずして、兄と似かより過ぎた、頬の上気の仕方を店主に見られ、
「え、と、」
都司宗二。パステル一本購入。




