32.喫水線
どこまで浸っているか、ということ。
「癖ですよね、」
それ。
「どれ?」
「それですよ、首。」
「……ああ、」
ほんとだ。
--余計なことを、
都司は内心歯噛みした。矢木を睨め付けたいけれども、正直後が怖い。しかしながら、平素から厳しい目元を保持しているから、大した効果は無いのだけれども。
それでもやはり良い気分ではない。
千誉の小首を傾げる仕草はれっきとした癖である。しかし都司は指摘したことが無かった。気に入りの所作だからである。
--これで、
仕草を意識した彼女から、その動きが損なわれてしまったら目も当てられない。話題を買いえたいと思ったけれど、都司の話術ではそれも望めない。
「癖って、自分じゃ分からないけど、」
こきん、
言いながらも小さく傾いた首に、彼は少し安堵した。
「都司は、」
びく、と水を向けられた彼は竦んだ。矢木から注視されるのが苦手である。恐らく部員の過半数がそうだろう。女子が騒いで夢を抱くほど、容易い人ではないのだ。
「都司はさ、真砂さんの癖、」
他に知ってる?
問いかけではない。包み隠さず、とにかく一つは挙げなければならない厳命である。
「歯を、」
一見穏やかな目が、ちらと光る。
--……なんか、嫌だ。
「歯を磨くとき、」
目、
「瞑ってます。」
「そう?」
「はい。」
「……へえぇ、」
--すごく嫌だ、
「歯磨きってさ……、」
都司、
「何で知ってんの?」
喫水線、歯磨き。
お泊りネタの定番かなーと思って。分かり難くてすみませ……orz




