31.イトーヨーカドー
従兄弟の大切な千誉さんは、なよびかな笑いかたをする年嵩のひとだった。
良く似ている、と親類一同の意見は大変正しい。とても優勢な因子のようで、どの血が混ざろうとも、必ず一家族に一人はこの手の造りになる。けれども、彼とその弟と艶子は、造作の似かより方が類を見ない。
従兄弟と同じ位の身長は、この性別では十分に高い。その位置から目線を下げて、彼女を見た。
「えと、千誉さん?」
「はい。」
「私、艶子です。」
「艶子ちゃん?」
「はい。」
きゅ、と素晴らしい速度で瞳孔を絞って艶子を見つめると彼女は、うん、と頷いた。
「良く、似合っている名前だと思うわ。」
大層真面目な顔で言った。
--ぅ、わぁ、
これは、と艶子は狼狽えた。
--これじゃあ、
彼が落ちてしまうのも道理である。きっと、あの弟だって駄目だろう。この千誉という女のひとは、
--私たちにとって、
踏ん張りの利かないカテゴリにいる。
「ねえ、艶子ちゃん。」
手、
「貸して?」
こと、
傾いだ首に、誰が逆らえよう。やっぱり広めの手の平、それを彼女に差し出した。好きにして下さい、という心境である。
ぱら、
ぽろ、
懐かしい彩の飴玉が、幽かな重さで皮膚を叩いた。
「鳩のお店でばら売りしてるの。」
「鳩?」
「イトーヨーカドー。」
防御の微塵も無い笑みを与えられて、胸がきゅうきゅうする。血の繋がりの二人して、多分同じだけきゅんとして、ついでに、頭まで抱え込みそうになるタイミングも同じだ。
なんといっても、この打撃である。つまりは、
--トドメだわ。




