病弱な妹の身代わりで生贄同然に追放された地味令嬢、前世の記憶≒ゲーム知識で辺境を最強要塞都市に造り変えて英雄になる~今更戻ってこいと言われても、もう遅いです~
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父の執務室の退屈な空気は、いつもと変わらなかった。けれど本日、わたくし、リゼット・オーブライトに告げられた言葉だけは、決定的に違っていた。
「リゼット。お前が妹のセリナに代わり、ファルケン辺境伯の元へ嫁ぐことになった」
『生贄』という言葉こそ使わなかったけれど、その決定が意味するところは誰の目にも明らかだった。魔物の侵攻が絶えない地獄のような最前線、出世街道から外れた人間が左遷の果てに行きつく人生の墓場、「王国の掃きだめ」との悪名高いファルケン辺境領。そこへ病弱な妹の身代わりに嫁げ、と。事実上の追放宣告に等しい。
目の前には、苦虫を噛み潰したような顔の父。その隣には、わたくしの元婚約者である第二王子が、安堵と憐れみをない交ぜにしたような複雑な表情で佇んでいる。彼らの視線の先、ソファに座る可憐な妹セリナは、か弱げに咳き込みながらも、その瞳の奥に微かな勝利の色を浮かべていた。
「……はい、お父様。謹んでお受けいたします」
わたくしが表情一つ変えずにそう答えると、父は僅かに眉をひそめた。わたくしが泣き喚き、取り乱すとでも思っていたのだろうか。社交界では「華やかな妹の影」と揶揄される、地味で感情の起伏に乏しい伯爵令嬢。それが、オーブライト家におけるわたくしの立ち位置だった。
彼らは誰も知らない。このわたくしが、前世で『軍神』とまで呼ばれた戦略シミュレーションゲームのトップランカーだったことなど。
(煩わしいばかりの社交界の檻から解放され、自由に采配できる領地が丸ごと手に入る。むしろ好都合だわ)
父や元婚約者が管理する領地の予算管理、人員配置の最適化。助言といった形の内助の功は、女という理由だけで過小評価されて、社交界における華やかなセリナの評判と比べてはいつも霞んで見えた。非効率な体面ばかりを重んじる王都の暮らしは、最適化を愛するゲーマー脳を持つわたくしにとって、苦痛以外の何物でもなかった。
これは罰ではない。これは、わたくしにとっての『再出発』。ようやく攻略しがいのあるマップが『解放』されたことを意味している。
翌日、わたくしに用意されたのは、みすぼらしい馬車一台と最低限の荷物だけ。見送りは誰もいない。わたくしはそんなことなど気にも留めず、馬車の窓から遠ざかる王都の景色を眺めていた。
(さようなら、長くて退屈なチュートリアル。ここからがゲーム本編ね)
数週間に及ぶ長い旅路の果て、ついにファルケン辺境領へと足を踏み入れた。馬車の窓から広がる光景に、さすがのわたくしも内心で呻き声を上げた。
痩せ細った土地。襲撃であちこちが傷んだ城壁。そして、すれ違う兵士たちの顔に浮かぶ、深い疲労と絶望の色。民家の窓は固く閉ざされ、街全体がどんよりとした空気に沈んでいる。
(初期資源は最低レベル。士気もマイナス。エネミーは高頻度で襲来……まさにクソゲー、いえ、歯ごたえのあるマップだわ)
城門で出迎えたのは、辺境を治める騎士団長兼辺境伯、ギルバート・ファルケンその人だった。彫りの深い顔立ちに、歴戦の傷跡が刻まれた無骨な武人。その鋼色の瞳が、値踏みするようにわたくしを射抜く。
「……リゼット・オーブライト嬢だな。長旅、ご苦労だった」
事務的な挨拶。その声には、王都から押し付けられた荷物に対する侮蔑と諦めが滲んでいた。きっと、泣き虫で世間知らずの姫君が来るとでも思っていたのだろう。
わたくしは馬車を降り、軽く一礼する。そして、彼の背後に広がる城壁と兵士たちの配置を一瞥し、静かに口を開いた。
「良い土地ですね」
「……皮肉か?」
「いいえ。初期資源は厳しいですが、むしろ最適化の余地しかないとも言えます。実にいじりがいがあります」
わたくしの言葉に、ギルバート辺境伯は怪訝な顔をした。けれど、わたくしは構わない。彼の隣を通り過ぎ、城の中へと歩を進める。その足取りは、絶望の地へ送られた生贄のものではなく、未開のマップに降り立った開拓者のように、確かな希望に満ちていた。この転生において、ようやく現れた挑み買いのある盤面が今、眼前に広がっているのだから。
与えられた部屋で旅装を解くのももどかしく、わたくしは早速ギルバート辺境伯に面会を求めた。彼の執務室は、武人らしく質素で、壁には巨大な戦略地図が掲げられている。そこに書き込まれた情報を一見する限り、やはり状況は厳しいようだ。
「それで、ご用件は? 数日ほど休み、長旅の疲れを癒すのが良いかと思うが」
お飾りの姫君、という侮りが隠せない声色。わたくしは挨拶もそこそこに、部屋の中央に置かれたテーブルを指さした。そこには、騎士団の兵站と物資管理に関する書類の束が山積みになっていた。
「ギルバート様。こちらの書類を拝見してもよろしくて?」
「は……?」
「辺境伯。まず確認すべきは、物資管理のフローです。輸送経路の重複、倉庫内でのデッドスペース、食料その他の消耗品の廃棄率……これらは真っ先に見直すべき最重要ポイント。定石、と言っても過言ではありませんわ」
矢継ぎ早に指摘するわたくしに、ギルバートは面食らったように目を見開いた。
「なっ……なぜ、それを。その書類には、まだ目を通していないはずだが」
「失礼。書類仕事でしたら、以前から父の手伝いをしていましたので。道中、城壁から見えた倉庫の配置と、荷役や荷馬車の動きが気になりました。それに旅すがら、暇でしたから、居城の図面にも目を通させていただきました。この二つを比べれば、問題点と最適解は自ずと浮かび上がってきます」
わたくしは前世の記憶――数えきれないほどのゲームで培ったリソース管理の知識を総動員し、具体的な改善案を次々と提示していく。輸送部隊の再編成、倉庫の配置変更による保管効率の向上、消費期限を考慮した食料の配給サイクル。データに基づいたわたくしの提案に、ギルバートの表情から次第に侮りの色が消えていく。
「……信じられん。まるで、長年この地の内政に携わっていたかのような見識だ」
半信半疑ながらも、彼の目がわたくしを「ただの姫君」ではないと認識し始めたのが分かった。これが第一フェーズ。まずは内政、兵站という基礎を固める。千里に道も一歩から。どんな戦略シミュレーションでも、それが勝利への最短ルート、すなわち『定石』なのだから。
改革が始まって数日後、最初の『イベント』が発生した。斥候から、オークの部隊が接近しているとの報告が入ったのだ。その数、およそ二百。騎士団の誰もが緊張に顔を強張らせる中、作戦会議室は喧騒に包まれた。
「西の岩陰に迎撃部隊を配置しろ! 前回はそれで上手くいった!」
「いや、力押しで正面から叩き潰すべきだ! オークごときに小細工は不要!」
よく言えば戦慣れした、悪く言えば野蛮な辺境騎士たちの主張は、どれも力押しばかり。それでは被害が大きすぎる。わたくしは静かに立ち上がり、広げられた地図の一点を指さした。
「お待ちください。敵の進軍ルートは、この湿地帯を迂回する一本道。地形の有利不利を考慮すれば、策は自ずと見えてきます」
オークというモンスターのAIパターンは、前世のゲームで嫌というほど学習した。彼らは単純で、統率が取れていない。そして、特定の障害物を避けるアルゴリズムを持っている。なにより、前世のゲーム知識とこの世界での生態が一致することを、ここ数日、兵士や領民からの話を聞いて確認済みだ。
「まず、街道の左右にある森に弓兵を配置。敵が街道中央を通過した瞬間、火矢で両側から牽制し、混乱を誘います。そして、パニックに陥ったオークが逃げ込むであろう、こちらの窪地に先んじて、地形を利用した落とし穴を。あとは、分断され孤立した部隊を各個撃破するだけです」
「罠だと? そんな子供騙ましが……」
「それに、なぜ奴らが都合よく窪地に逃げ込むと断言できる?」
騎士の一人が嘲笑うように言った。しかし、わたくしの策を黙って聞いていたギルバートが、重い口を開いた。
「……試す価値はある。全員、リゼット嬢の指示に従え」
その鶴の一声に、会議室は静まり返った。ギルバートはわたくしに向き直り、その鋼色の瞳でまっすぐに見つめてきた。
「全ての責任は私が取る。頼めるか」
彼の目に宿るのは、驚きと、そして微かな期待。わたくしは静かに頷いた。
「拝命いたしましたわ。ミッションスタートと参りましょう」
◆ ◆ ◆
ギルバート・ファルケンは、自らの判断が正しかったのかどうか、確信が持てずにいた。王都から送られてきた地味な令嬢。彼女が口にしたのは、まるで未来でも見ているかのような、常識外れの戦術だった。
だが、彼女の指摘した兵站改革は、既に目に見える形で効果を上げ始めていた。無駄な労力が削減され、物資の供給は驚くほどスムーズになった。兵士たちの間でも、「あのお姫様はただ者じゃない」という噂が囁かれ始めている。
だから、賭けた。この絶望的な戦況を覆す可能性に。
そして、戦況はリゼットの予言通りに推移した。
街道を進むオークの部隊は、左右の森から放たれた火矢に混乱し、あっけなく統率を失った。獣のように喚き散らし、右往左往するオークたち。彼らはまるで吸い寄せられるかのように、リゼットが指摘した窪地へと雪崩れ込んでいく。
「まさか……本当に、リゼット様の言った通りに……!?」
部下の騎士が驚愕の声を上げる。窪地に仕掛けられた巨大な落とし穴が口を開け、オークの大半が一瞬で呑みこまれて、戦闘不能に陥った。残った数少ない敵も、分断され、待ち構えていた騎士団によって容易く掃討されていく。
結果は、圧勝。騎士団の被害は、軽傷者が数名のみ。過酷な消耗戦を強いられてきた、これまでの経験では考えられない、奇跡的な勝利だった。
歓喜に沸く兵士たちが、口々に叫び始める。
「すげぇ……あの姫君の言う通りだ!」
「まるで戦の女神様じゃねぇか!」
いつしか、彼らがリゼットに向ける視線は、畏怖と尊敬の色に変わっていた。ある者は彼女を「辺境の聖女」と呼び、またある者は「天才軍師」と崇めた。
ギルバートは、丘の上から戦場を見下ろすリゼットの横顔を見つめていた。風に銀色の髪をなびかせ、冷静に戦況の終わりを見届けるその姿は、か弱き令嬢のものではなかった。
彼は確信した。この女性こそ、この疲弊しきった辺境の、そして自分自身の希望の光だと。彼はリゼットの隣に馬を進め、静かに頭を下げた。
「リゼット殿。貴女の才に、我が騎士団の全てを預けたい」
それは、無骨な辺境伯からの、絶対的な信頼の誓いだった。リゼットは振り返り、初めて出会った時と同じ無表情のまま、小さく頷いた。だが、その瞳の奥に、高難易度ミッションのクリアを喜ぶゲーマーの魂が、静かに輝いているのをギルバートは見逃さなかった。不遇な令嬢が、その真価を認められる最高のパートナーを見つけた瞬間だった。
リゼットの改革は、軍事だけに留まらなかった。前世の知識を応用し、痩せた土地でも育つ作物の栽培法──彼女のゲーム経験は対戦要素のある戦略シミュレーションがメインだったが、都市開発や農園経営の有名タイトルもたしなんでいた──を導入。水路を整備し、輪作を行い、気候や地質にあった作物を厳選することで、食糧の生産量は劇的に向上した。
兵士たちには、ただ力任せに戦うのではなく、地形を利用した集団戦術と、個々の役割分担を徹底させた。騎士団は、かつての烏合の衆から、少数精鋭の部隊へと変貌を遂げた。土木工事や輸送には、領民も動員した。生活が目に見えて改善したので、彼らは喜んで従った。なにより、労働に見合う充分な報酬を支払うだけの財政的な余裕が、辺境の小都市に産まれ始めていた。
魔物の襲撃は相変わらずだったが、リゼットが徹底させた迎撃戦術と兵站管理、それに一糸乱れぬ統率力を身に着けた騎士団の前では、もはや脅威ではなかった。かつて「事実上の流刑地」と呼ばれたファルケン辺境領は、数年のうちに、難攻不落の要塞へと生まれ変わっていた。人々はリゼットを「辺境の聖女」と呼び、ギルバートは公私にわたる最高のパートナーとなった。この地は、リゼットにとって理想の領土、緻密な攻略の軌跡が刻まれた愛すべきプレイログそのものだった。
◆ ◆ ◆
一方、その頃。王都は、深刻な混乱に見舞われていた。オーブライト伯爵邸では、当主である伯爵が苦渋の表情で頭を抱えていた。
「なぜだ! なぜ、こうも何もかもうまくいかんのだ!」
リゼットを追放してからの数年間、オーブライト家、いや、王国全体の歯車が狂い始めていた。始めは些細な綻びだった。国家予算の出納長の辻褄が、急に合わなくなった。貴族たちの領地の経営状況が次々と悪化していった。その原因が、地味で目立たない存在だったリゼットが一人で担っていた、膨大かつ緻密な国家予算管理業務の欠落にあるとは、すぐには誰も気づかなかった。
彼女がいなくなったことで、全てが杜撰になった。書類の山はうず高く積まれ、誰もそれを正確に処理できない。出来てもいない仕事を、出来たと言い繕う者が現れる。チェックが機能していないことを見透かされれば、賄賂や横領など不正が蔓延する。結果、深刻な財政難が王国を襲った。
リゼットの元婚約者である第二王子もまた、苦境に立たされていた。彼が寵愛するセリナは、その華やかな美貌と話術の才能で社交界の華であり続けたが、国の土台が揺らぐ中で、そのようなスキルは何の役にも立たず、言い訳に言い訳を重ねて余計に混乱を助長した。むしろ、虚言と浪費を重ねる彼女の存在は、国民の不満の的となり始めていた。
「くそっ、認めたくはないが……あの地味女のおかげだったとは!」
王子は忌々しげに呟いた。リゼットの価値に、今更になって気づいたのだ。彼女が縁の下で支えていたものが、どれほど大きく、重要であったかを。
そんな折、彼らの元に信じられない噂が届いた。追放したリゼットが、あの絶望の地である辺境を立て直し、英雄として讃えられているというのだ。魔物の侵攻を完全に抑え込み、痩せた土地を豊かな穀倉地帯に変えた、と。
「リゼットが……? 馬鹿な!」
彼らは最初、その噂を信じなかった。だが、次々と入ってくる報告が、それが事実であることを裏付けていく。彼らはようやく悟った。自分たちがいかに愚かであったかを。そして、いかに貴重な存在を自らの手で手放してしまったのかを。
焦燥感に駆られた彼らは、協議の末、一通の手紙を書き上げた。反省の言葉など、どこにもない。ただ、自分たちの都合だけを書き連ねた、傲慢な命令書を。
◇ ◇ ◇
その手紙が、辺境の執務室にいるわたくしの元へ届けられたのは、冬の訪れが近い、ある日のことだった。王家の紋章が押された封筒。差出人は、父であるオーブライト伯爵と、元婚約者の第二王子の連名だった。
隣で書類を整理していたギルバートが、訝しげな視線を向ける。
「王都からか。今更、何の用であろうな」
来春の砦の増築に必要な石材と木材の手配、そのための人足の確保と金策に頭を悩ませていた、もとい楽しんでいたわたくしは、ため息をつきつつ作業を中断する。無言で封を切り中の便箋に目を通すと、そこには予想通りの傲慢な言葉が並んでいた。
『リゼットの辺境での活躍は聞き及んでいる。その才を王都の危機を救うために使うことを許可する。辺境での役目は終わった。即刻帰還し、王国の財政再建に尽力せよ』
要約すれば、そういうことだった。謝罪も、後悔の念も一切ない。ただ、便利な道具としてわたくしを呼び戻そうという、身勝手な命令。
「……ふっ」
思わず、乾いた笑いが漏れた。わたくしは手紙を一瞥すると、そのまま立ち上がり、執務室の暖炉へと向かう。そして、燃え盛る炎の中へ、その手紙を躊躇なく投げ入れた。
パチパチと音を立てて、王家の紋章が、父たちの言葉が、灰になっていく。
「リゼット……?」
驚くギルバートに、わたくしは振り返って静かに告げた。
「今さら何の御用でしょうか。わたくしの『再出発』の地は、もうここにございますので」
その言葉に、ギルバートは全てを察したように、力強く頷いた。彼はわたくしの隣に歩み寄ると、その大きな手で、わたくしの肩をしっかりと抱き寄せた。彼の体温が、暖炉の炎よりも温かく感じられた。ここが、わたくしのいるべき場所。わたくしが守り、育ててきた、大切なマップなのだ。
王都から、それ以上の催促は無かった。実力行使に出る余力が無いことなど、わたくしの前世のゲーム知識からお見通し。いままで正当に評価されることなく国の無理難題を押し付けられていたギルバードや辺境騎士団の古株たちも、どこか溜飲を下げたようだった。
それから、数年の月日が流れた。
わたくしとギルバートに導かれたファルケン辺境領の領都は、もはや「辺境」という名が似つかわしくないほど、難攻不落の要塞都市として発展を遂げていた。軍事拠点のみならず、周辺の商業活動の中心地ともなっている。外敵に脅かされることはなく、独自の交易路を開拓し、文化が花開き、多くの人々が笑顔で暮らす活気ある場所となった。
一方、王都の噂も時折、風に乗って届いてくる。失政が続き、貴族たちは没落。わたくしを追放した父や元婚約者も、その責任を問われ、見る影もなく落ちぶれたらしい。ファルケン辺境領と王都の発言力は、目に見えて逆転した。
けれど、そんな報告を聞いても、わたくしの心は少しも動かなかった。彼らは、わたくしの人生というゲームにおける、序盤で退場したただのNPCに過ぎない。興味など、ひとかけらもなかった。
反乱や下剋上に至らないのは、ひとえにわたくしとギルバードの裁量によるところが大きい。死に体の王都を陥落させるなど、消化試合にも等しいイージーモード。わたくしが求めているのは、もっと高難易度ミッションだ。開拓者気質のギルバートも、志を一つにしていた。
わたくしは執務室の大きなテーブルのうえ、ギルバードの目の前に新しい地図を広げる。それは、この大陸のまだ見ぬ未開の土地を示したものだった。
「ギルバート。こちらの地域、新しい資源が眠っている可能性があるわ。調査部隊を編成しましょう」
「ああ、そうだな。だがその前に、来週の収穫祭の準備が先だろう?」
隣で笑う彼の言葉に、わたくしもつられて微笑んだ。
「それもそうね。では区切りをつけてから、そのあとに……次の拡張計画を始めましょうか」
窓の外には、黄金色に輝く麦畑と、人々の平和な営みが広がっている。この最高のマップで、わたくしのゲームは、まだまだ続いていく。幸せそうに微笑むわたくしの瞳には、次なるミッションへの静かな情熱が燃えていた。