【第4話|変身、それは“誰か”になりたい夜】
【場所】翌週月曜の朝。エントランスホール。ガラスの自動ドアが開くたび、足音とヒール音が混じる。
(いつもと違う“彼女”の登場に、社内にざわめきが走る)
石井ひとみ(33・営業部長):(目を見開きながら) 「え……あれ……木村りんこ、よね?」
佐藤りな(32・課長):(耳打ちしながら) 「うそでしょ……あの巻き髪、ネイル、ピンクのジャケット……誰よ、あれ。“あざとい”ってこういうこと……?」
中村さき(45・エグゼクティブディレクター):(遠巻きに見ながら) 「ふふ……“自分を変える”って、簡単なようで一番難しいわ。でも、彼女、何かあったのかしらね……」
【場所】社内カフェスペース。木村りんこ、カプチーノを片手に席へ。数人が集まってくる。
高橋あかり(28・リーダー):(遠慮がちに) 「りんこさん……なんか、すっごく雰囲気変わりましたね。髪も……ふわっふわで、あの、すてきです。」
木村りんこ(29・マーケティングマネージャー):(にっこりと微笑みながら) 「うん。週末、美容室で……全部、変えてみたの。ヘア、ネイル、服。ずっと変わらなきゃって思ってて……」
田中あや子(28・リーダー):(そっと) 「なにか……あったんですか……?」
(りんこ、少し笑って目を伏せる)
木村りんこ: 「……先週、クライアントに“もっと印象に残る人になれ”って言われたの。で、“私って何も残してなかったんだな”って……。だったら一回、全部壊してみようって。」
(静かに流れる沈黙)
山田まり(25・アシスタントマネージャー):(小声で) 「わ、わたしも……変わりたいです……でも、こわい……」
本田ゆか(30・チームリーダー):(真顔で) 「でもさ、“変わる”って、自分を否定することと違うよね。過去の自分を脱いで、新しい鎧を着るだけ。」
中村あや(45・部長):(背後から静かに歩いてきて) 「うん……りんこさんの今日の服、確かに目立つ。でもね……“強さ”っていうのは、覚悟がないと着られないのよ。」
りょうせつなナレーション: “変化”は、勇気の裏返し。 “変身”は、痛みの表明。 その朝、誰もが自分の中の“変わらなきゃいけない何か”に、ふと気づいていた。