第8話:「空中商店街の封印」
空中商店街の存続をかけた戦いは終わった……かに見えた。
だが、商店街の中心に現れた“裂け目”が新たな波乱を呼ぶ。
むぅ、これはただ事ではないのう。さて、今宵も裁きを下すとするか!
プロローグ
空中商店街は、幽霊裁判によって撤去を免れた。
住人たちは喜び、街には再び活気が戻りつつあった。
しかし、お奉行様の心には一つの疑問が残っていた。
「これほどの大事を企んでおった者たちが、そう易々と引き下がるとは思えぬ……」
そんな矢先、ノコギリ仙人が奉行所へ駆け込んできた。
「お奉行様、大変じゃ! 空中商店街の“中心”に、妙な歪みが生じておる!」
「むぅ? 歪みとな?」
「風見鶏の塔の近くに、見たこともない“裂け目”が現れたのじゃ!」
「裂け目……?」
お奉行様は煙管をくゆらせ、目を細めた。
「……これは、何やら不穏な気配じゃのう」
第一幕:「異変の兆候」
空中商店街の中心にそびえる「風見鶏の塔」。
この塔は、商店街の象徴として、昔から住人たちに親しまれていた。
だが、今——その塔のすぐ側に、奇妙な裂け目が現れていた。
「まるで空間が歪んでおる……」
ノコギリ仙人が低く呟く。
「気づいたのは昨夜じゃ。最初は小さな歪みだったが、今朝にはこの通り、大きく広がっておる」
お奉行様は裂け目に近づき、霊視を試みた。
すると——
バシュッ!!!
突然、強い風が吹きつけ、お奉行様の前に不気味な影が立ちはだかった。
「これは……!」
影は低く囁く。
「この商店街は、封じられるべき場所……」
「ここに住まう者は、過去の“業”を背負う者……」
「封印せねばならぬ……」
影が語る言葉に、お奉行様の表情が険しくなる。
「封印……? そなた、何者じゃ?」
影は答えない。
「間もなく、この商店街は消える……」
影がそう言い残し、風とともに消えた。
第二幕:「空中商店街の過去」
「お奉行様、この“封印”って何のことなんや?」
藤田親方が不安げに尋ねる。
お奉行様は静かに口を開いた。
「ワシも詳しくは知らぬが……かつて、この空中商店街が作られた時、“封じられた何か”があったのかもしれぬ」
「封じられた何か?」
河合さちえが眉をひそめる。
「そうじゃ……江戸の時代、この場所は元々“空に浮かぶ市場”として作られたという伝説がある」
「空に浮かぶ市場……?」
「しかし、当時の記録はことごとく失われておる。それが意図的に消されたのか、あるいは何かの力によるものかは分からぬ……」
お奉行様は顎を撫でながら、考え込んだ。
「もし、この裂け目が過去と繋がるものであるならば……それが開いた時、何が起こるか分からぬのう」
その時——
「お奉行様ァ! えらいことや!」
住人の一人が慌てて駆け込んできた。
「風見鶏の塔が……崩れそうなんや!!!」
第三幕:「封印の正体」
急いで現場へ向かうと、風見鶏の塔が不穏な振動を放っていた。
「なんじゃ……塔が……?」
すると、裂け目の中から、再び影が現れる。
「この塔は、封印の要……」
「塔が崩れれば、商店街の均衡も崩れる……」
お奉行様はピンときた。
「つまり、この塔が空中商店街を支えておるのか!」
ノコギリ仙人が驚いた様子で言う。
「たしかに……この塔は、商店街の構造の“中心”になっておる。つまり、これが崩れたら……商店街全体が不安定になるかもしれん!」
「むぅ……ならば、塔を守るしかあるまいのう」
だが、その時——
ズズズズ……!!
裂け目がさらに広がり、黒い気配が塔にまとわりついた。
「お奉行様、このままじゃ塔が持たん!」
「ふむ……ならば、この塔に“封じられておるもの”を暴くのみ!」
お奉行様は再び霊視を試みた。
すると——
過去の映像が見えた!
——江戸時代、この塔は“空に浮かぶ市場”の守護として建てられた。
しかし、その市場には“禁じられた技術”が使われており、封印を余儀なくされた……。
お奉行様はハッと息を飲んだ。
「これは……“空中市場の遺産”か!」
「つまり、空中商店街は単なる商店街ではなく、かつて“封じられた空中都市”の名残だったのか……!」
第四幕:「封印を守れ!」
「お奉行様、塔が限界や!」
藤田親方が叫ぶ。
「むぅ……ならば、封印を強化するしかあるまい!」
お奉行様はノコギリ仙人と共に、塔の修復に取り掛かる。
「仙人よ! 妖怪大工の力で、この塔を支えられるか?」
「ふむ……やるしかないのぉ!」
ノコギリ仙人がノコギリを振るい、空間の歪みを削ぎ落とす!
「そして、封印の儀を執り行う!」
お奉行様が巻物を開き、江戸の法を唱える。
「封じられしものよ、時を超えてここに安らげ!」
ズズズズ……!!!
裂け目が縮まり、塔が安定し始める。
「や、やったんか!?」
「むぅ……これで封印は保たれたはずじゃ」
エピローグ:「まだ終わらぬ戦い」
塔は無事に安定し、空中商店街は守られた。
だが、お奉行様は目を細め、遠くを見つめる。
「しかし……まだ影が完全に消えたわけではないのう」
ノコギリ仙人が腕を組む。
「確かにな……“封じられた空中市場”があったということは、まだ知られざる歴史が眠っているはずじゃ」
お奉行様は静かに煙管を吹かした。
「ワシらの戦いは、まだ終わらぬ……」
次回:「最後の裁き! 未来の掟」へ続く!