第7話:「空中商店街最大の裁判」
突如として下された空中商店街の撤去命令。
その裏に潜む陰謀、そして最後の裁きの時――。
むむ、これは見過ごせぬ! さて、今宵も裁きを下すとするか!
プロローグ
空中商店街の平穏を揺るがす衝撃的なニュースが発表された。
「市は空中商店街を“違法建築”と認定し、撤去を決定しました!」
「なんやてぇぇぇぇぇ!?」
商店街の住人たちは大混乱に陥った。
確かに、空中商店街は特殊な経緯で建設された場所だが、これまで幾度となく存続のための裁きを経て、街の一部として認められてきた。
「これはきっと、大和都市開発の仕業や!」
「せっかくここまで盛り上がった商店街を潰そうとするなんて……!」
そして、その背後には空中商店街の存続を快く思わない市長と不動産業界の圧力があるという噂が流れていた。
「お奉行様! なんとかしてくれ!」
「むぅ……ならば、決着をつける時が来たようじゃの」
お奉行様は扇子を広げ、静かに言った。
「幽霊裁判、開廷じゃ!」
第一幕:「撤去命令の真相」
商店街の住人たちが役所に直談判に行くも、すべて門前払い。
話を聞いてくれる者はおらず、記者たちも市の発表をそのまま報道するだけだった。
そんな中、お奉行様の元へある情報がもたらされる。
「お奉行様、証拠を掴みました!」
現れたのは喫茶店「リーガル・カフェ」の店主、河合さちえ。
元弁護士の彼女は、撤去決定の経緯を徹底的に調査していた。
「市が空中商店街を撤去する本当の理由、それは……」
「大和都市開発が、市役所に賄賂を渡して動かしていた」
「なんと!?」
「市は“違法建築”を口実にしてるけど、本当は大和都市開発がこの場所を更地にして、高層マンションを建てる計画を進めていたのよ!」
「むぅ……ならば、この件、裁くしかあるまいのう」
お奉行様は堂々と立ち上がった。
「ワシが、この商店街の正義を示す!」
第二幕:「幽霊裁判、開廷!」
お奉行様は空中商店街の広場に「特設裁判所」を設置し、住人たちを集めた。
そして、市長や役所の関係者、大和都市開発の代表者たちを呼び出した。
「これより、“空中商店街撤去問題”について裁きを行う!」
会場は大きなざわめきに包まれる。
「な、なんだこれは!? 幽霊裁判だと!?」
「市に対してこんな裁判を開いても無意味だ!」
しかし、お奉行様は静かに目を閉じ、扇子を掲げた。
「この裁判はただの裁判にあらず。“江戸の流儀”で行うものなり!」
バァァァァァン!
突然、周囲に霊たちが現れ、空中に巨大な巻物が浮かび上がる。
「こ、これは……!」
「幽霊の証言……?」
お奉行様は巻物を指し示す。
「そなたらの不正、すべて見えておるぞ!」
そして、次々と幽霊たちが証言を始めた。
「ワシはかつてこの土地で商売をしていた者。大和都市開発が強引に立ち退かせたのを見ていた!」
「市役所の一部の人間が、大和都市開発と裏で繋がっていたのを聞いたことがある!」
「撤去決定の裏に、“大和都市開発が資金を提供した”という記録がある!」
この幽霊たちの証言が、圧倒的な説得力を生み出した。
第三幕:「決定的証拠!」
そこへ、河合さちえが満を持して立ち上がる。
「さらに、これが決定的な証拠よ!」
彼女が提示したのは、市長の側近と大和都市開発の代表者がやり取りしていた極秘のメール記録だった。
「市の幹部と開発業者が、撤去計画の裏で資金のやり取りをしていた証拠」
これを見た途端、市の関係者たちは顔を青ざめた。
「な、なぜそんなものが……!」
「ぐっ……!」
お奉行様はゆっくりと扇子を閉じ、静かに言った。
「さて、これを見てもまだ“違法建築”を理由に撤去するつもりか?」
市長は冷や汗をかきながら必死に言い訳をする。
「こ、これは……で、でも、法律的には……!」
「ならば、江戸の法律を持ち出すのみ!」
お奉行様がそう叫ぶと、江戸時代の“空中建築自由令”の条文が幽霊の力で浮かび上がる!
「この法に則れば、空中商店街は正式に存在してよいのじゃ!」
「ば、馬鹿な!?」
「現代の法律にも通用する抜け道を使っておる……!?」
観客の住人たちは大きく沸き立った。
「つまり、この空中商店街は合法ってことや!」
「そうや、もう撤去する理由なんかないんや!」
最終幕:「裁きの時!」
お奉行様は最後の判決を下す。
「大和都市開発よ! そなたらの企みはすでに露見しておる!」
「よって、空中商店街の撤去命令は無効!」
「さらに、市の関係者と大和都市開発の不正については、正式に調査を開始する!」
バァァァァァン!!
雷鳴のような音とともに、幽霊たちの声が響き渡る。
「正義がなされた……!」
住人たちは歓声を上げた。
「やったぁぁぁ! これで商店街は守られたんや!」
「お奉行様、最高や!」
一方、市の関係者たちは肩を落とし、大和都市開発の代表者は無言で立ち去った。
エピローグ:「そして新たな未来へ」
お奉行様は煙管をくゆらせながら、満足げに微笑んだ。
「ふむ……今日の裁きも見事に決まったのう」
藤田親方が肩を叩く。
「ほんま、お奉行様がおらんかったら、ワシらはどうなってたか……」
ノコギリ仙人が笑う。
「まあ、これで終わりじゃないじゃろ? 次はどんな事件が起こることやらのぉ」
こうして、空中商店街最大の裁判は無事に決着した。
しかし、お奉行様はまだ感じていた。
「商店街を狙う影は、まだ完全には消えていない……」
次なる戦いに向けて——。
次回:「空中商店街の封印」へ続く!