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お奉行様の空中裁判  作者: クロクマせんぱい
6/11

第6話:「影の奉行VSお奉行様」

空中商店街に現れた“もう一人の奉行”――。

影に潜み、密かに裁きを下すその正体とは何者か?

むむ、これは見過ごせぬ……さて、今宵も裁きを下すとするか!

プロローグ


空中商店街に奇妙な噂が流れ始めた。


「最近、夜になると“もう一人の奉行”が現れるらしい」


ある者はこう言う。

「夜中に商店街の隅で、法衣を着た影が悪党を裁いていた」


またある者はこう証言する。

「違法な商売をしていた奴が、真夜中に白い面をつけた男に追い詰められたんや」


そして、決定的だったのは——


「その影が名乗った名前や。“この世に正義をもたらす、真の奉行”……やて」


「……なに?」


お奉行様は煙管を吹かしながら目を細めた。


「つまり、ワシの名を騙る者が現れたということか……?」



第一幕:「夜の裁き人」


最近、商店街の裏通りでは不思議な事件が多発していた。

詐欺まがいの商売をしていた行商人が、突然怯えた様子で姿を消す。

賄賂を受け取っていた役人が、ある日「すべてを自白する」と言い出す。

さらには、大和都市開発の関係者までもが不可解な辞職をしていた。


「お奉行様、これはワシらにとってええことなんちゃいます?」


藤田親方が言う。


「商店街を狙っとった悪い奴らが次々に消えていってるんやで?」


「むぅ……そう簡単な話ではなさそうじゃの」


お奉行様は顎を撫でる。


「裁きというものは、表に出て正しく行うからこそ意味がある。影で誰かが密かに処断を下すようなことになれば……やがて、秩序は崩れる」


その時——


「お奉行様! 大変や!」


駆け込んできたのは、喫茶店「リーガル・カフェ」の店主、河合さちえだった。


「さちえ、どうした?」


「昨夜、商店街の裏通りで『影の奉行』が、ある商人を取り締まっていたんだけど……その後、商人が行方不明になったのよ!」


「なに……?」


「しかも、目撃者の話じゃ、『影の奉行』はお奉行様そっくりの姿をしていたらしいの!」


お奉行様の眉がピクリと動く。


「ワシそっくり……? ますます妙じゃのう」



第二幕:「影の正体を暴け!」


お奉行様は霊たちに命じ、夜の商店街を見張らせた。


「今夜こそ、“影の奉行”の正体を暴くぞ!」


そして——深夜。


ヒュゥゥゥ……


夜風が吹き抜ける商店街の裏通りに、黒い影が現れた。


その姿は、確かにお奉行様そっくりだった。


法衣をまとい、腰には扇子を差し、そして、顔には白い能面のような仮面をつけている。


「悪を裁くは、我が使命……」


静かにそう呟く影。


「ほう、見事な口上よのう」


お奉行様が姿を現す。


「しかし、その名乗り、ワシにそっくりじゃな?」


影の奉行はゆっくりと顔を上げた。


「お前こそ偽者だ」


「なに……?」


「お前は商店街を守ると言いながら、悪を生かしている。ワシこそが、本当の裁きを与える者……真の奉行なのだ」


お奉行様は扇子を広げた。


「ふむ、では尋ねよう。“真の奉行”よ。そなたはどのような裁きを下すのじゃ?」


影はゆっくりと答えた。


「悪を根絶やしにする……ただそれだけだ」


「ふむ……つまり、そなたの裁きに情けはないということか?」


「裁きに情など不要……悪は、消すのみ」


「……なるほどのう」


お奉行様は目を閉じ、一つ深く息を吸った。


「では、ワシがそなたに裁きを下そう」


「幽霊裁判、開廷じゃ!」



第三幕:「幽霊裁判VS影の奉行!」


幽霊たちが現れ、商店街の路地が裁判所へと変貌する。


「被告、“影の奉行”! そなたは、この商店街の秩序を乱す存在なり!」


「ふん、くだらぬ……お前こそ、甘すぎるのだ!」


「では尋ねる。“裁き”とは何か?」


「悪を裁くこと……ただそれだけだ」


「ふむ……では、“裁かれる側”の声は聞かぬのか?」


「聞く必要などない。悪は悪だ」


お奉行様は静かに目を細めた。


「そなたの言葉……かつてのワシと同じじゃのう」


「……なに?」


「ワシもかつては、悪を憎み、裁きのみを信じておった。しかしな……」


お奉行様は商店街の住人たちを見渡す。


「ワシは、この商店街で“人と人とのつながり”を学んだ」


「……?」


「裁きとは、悪を罰することにあらず。裁きとは、人が道を誤らぬよう導くことじゃ」


影の奉行の手が震えた。


「そんな……甘い……」


「甘くとも、それが“本当の奉行”よ」


お奉行様は扇子を振り上げ、最後の裁きを下す。


「影の奉行! そなたの裁きは、ただの独善! よって、この世に必要なし!」


バァァァァン!!


白い仮面が砕け、影の奉行の姿が薄れていく——


「……我が道が……否定されるとは……」


「さらば、もう一人のワシよ」


影は静かに消え去り、商店街には再び静寂が戻った。



エピローグ:「真の奉行とは?」


事件が解決し、商店街は再び平和を取り戻す。


藤田親方が苦笑しながら言った。


「お奉行様……あんた、ほんまにすごい人やな」


「むぅ……ワシもまだまだ学びの途中じゃ」


「せやけど、結局“影の奉行”って何者やったんや?」


お奉行様は少し遠くを見つめながら呟いた。


「それは……過去のワシ自身だったのかもしれぬのう」


ノコギリ仙人が笑う。


「お主も、ずいぶん丸くなったのぉ」


「ふむ……それも商店街のおかげかもしれぬの」


こうして、今日もお奉行様は空中商店街を見守る。


次なる事件に備えて——。



次回:「空中商店街最大の裁判」へ続く!

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