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第九回 『山彦』スキル併用魔法五連撃

『システム解説』

ニルヴァでは相手にダメージを与えても数字では表示されない。代わりに流血や破壊のエフェクトにより表現される。

 シャオリーに従いていったのが正解かはわからない。リリサは一人でも悪魔部屋の前まで来そうなので、シャオリーを選んだ。通路の先は四角い部屋で行き止まりになっていた。


 ブン、と音がして入口が消えた。同時に部屋の中央に魔法陣が現れ赤い鎧を着た武者が召喚される。鎧武者は刀を抜くと、斬りかかってきた。


「速い」と時任は驚いた。加速系の魔法が掛かったプレーヤーの動きだ。シャオリーが反応して、鎧武者に掌底を撃ち込もうした。シャオリーの動きも鎧武者に負けずに速い。


「人形遣いの動きじゃない」


 鎧武者がシャオリーの攻撃を回避して斬りかかる。シャオリーは鎧武者の懐に入ってひたすら、拳を繰り出す。懐に入られると刀では長すぎて対処が難しい。


 シャオリーは刀の攻撃を避けるだけではなかった。刀の側面を叩いて攻撃をそらしていた。すぐにはシャオリーがやられないようなので、時任は『鈍足』の魔法を準備する。


 鎧武者が一歩引いてフェイント攻撃を仕掛けた。シャオリーは引っかかり腕が伸びきった。鎧武者の刀がシャオリーの右腕を切り落とした。


 ニルヴァではプレーヤーが四肢切断の状態になると、血が噴き出す演出がある。だが、血が出ない。


 シャオリーが口をカッと開くと炎を噴き出した。鎧武者が炎に包まれた。時任はなぜ、シャオリーが武器となる人形を連れていないか理解した。


「シャオリー自身が人形なのか」


 高ランクの人形遣いなら人間そっくりな人形を使うと聞いた覚えがある。初めて見るが、本当に人間そっくりだった。鎧武者に着火した炎は簡単には消えなかった。普通の油を使っていない。火攻め用の液体だ。


 鎧武者が瞬間的にシャオリーとの距離を詰める。鎧武者はシャオリーの影に刀を突きたてた。理由はわかる。人間型人形の動きが良すぎるので、近くに本物のシャオリーがいる。


 時任が人形遣いではないなら、本体は人形の影の中に隠れているとの読みだ。

「俺もそう考えるが、おそらく違う」


 カンという固い音を立てて、刀は床から弾かれた。シャオリーの本体は必ずどこかにいる。だが、影の中ではなかった。シャオリーは距離を取った。


 チャンスが来たので『鈍足』を掛ける。『鈍足』は抵抗され効果を現さないが、これは時任の計算の内。ここで時任は『山彦』のスキルを発動させる。


『山彦』の効果は直前に唱えた魔法を即座に発動させる。連続で四回まで発動するが、発動するたびに消費されるマナは四十%ずつ上がっていく。


『鈍足』のマナ消費が十なら、十四、二十、二十八、三十九と上がる。五回発動なら合計で百十一と消費量は多い。合計五回の『鈍足』が唱えられた結果。鎧武者の抵抗を突破した二回分が積み重なって掛かった。


 鎧武者は『鈍足』の効果を感じたのか、構えを下段に取り防御の構えに入った。何かの方法で着火状態の痛みは消しているか。窒息もしそうにないのは、兜の効果だな。


「鎧武者はまだ着火状態だが時間が経てば、炎は消える。さらに時間が経てば『鈍足』の効果も消える」


 普通の魔術師を相手にしているなら鎧武者の防御に回る判断は悪くないといえる。古代魔術師が相手ではあまりよい策といえない。時任は次の魔法として『老化』を準備する。


『山彦』スキルを使用して五連続の魔法を使えば、魔術師系ならごっそりマナがなくなりしばらく魔法は撃てない。


 マナを一度でもゼロにするとマナ消失状態のペナルティが発生する。マナ消失状態ならしばらくマナは回復しない。


 マナの量が多い古代魔術師は使う魔法にもよるが『山彦』での五連続使用でも、マナがわずかに残る。


 オーブを持った古代魔術師なら、すぐに普通の魔法が使える程度にマナが回復する。


 炎が消えたタイミングで鎧武者がシャオリーに斬りかかる。シャオリーは再び炎を吐こうとした。さすがに二度目の炎の攻撃は読まれた。


「『鈍足』の効果を『加速』のスキルで補填して戦っているな。わからん戦術ではないが、マナ消費が馬鹿にならない。勝負を早目に決めにきたか」


 鎧武者が横に素早く避けたところで、切断されたシャオリーの右腕が鎧武者に目掛けて飛んだ。鎧武者は死角からの飛び道具だったが、叩き落とした。


 バチンっと音がする。シャオリーの右腕が放電していた。鎧武者は刀で受けたので、電流により動きが一瞬固まった。すかさず、シャオリーの蹴りが鎧武者の胸にヒットする。


 姿勢を崩した鎧武者にシャオリーの攻撃が入る。掌底、中段蹴り、上段蹴り、下段蹴り、の多段攻撃が全部ヒットする。


 最後にシャオリーがダメ押しで膝蹴りを入れようとしたが、止めて飛び退いた。鎧武者から青い陽炎が昇る。『生命燃焼』と呼ぶ能力がある。使えば全ての能力値が上がるが、生命力が急速になくなる。


「『鈍足』が切れた頃だから、これは好都合」と、時任は幸運に感謝した。


 時任は『老化』の魔法を発動させた。老化は時間経過によって対象者の全ての能力を下げる。老化状態になっている敵が『加速』や『生命燃焼』を使っていれば、老化状態は急速に進む。


 二つ同時使用ならさらに効果が高い。鎧武者は一撃を放ったところで、急に動きが緩慢になった。

「勝負あったかな」


 どんどん遅くなっていく鎧武者に対してシャオリーはすぐに手を出さない。子供でも勝てるような状態にまで老化が進んだ時に、シャオリーは一方的な攻撃で鎧武者を撃破した。

次の第10回目は判定回です。ここで作品の評価を著者がします。

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