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第十二回 悪魔の謎を解け

『システム解説』魔法は詠唱中に攻撃を受けると維持できないことがある。維持できるかどうかはダメージの質と術者の能力による。

 リリサとシャオリーが悪魔と接近戦を開始する。悪魔は二人の挟撃を捌いていた。特段に悪魔が有利な展開ではない。


 リリサとシャオリーも攻撃をもらわないので今の所は五分だった。


「悪魔にデバフを掛ける。仲間にバフを掛ける。魔法で悪魔に攻撃を加える。どれかの行動を取れば均衡は崩れるが、急いで崩す必要はない」


 悪魔の加護のデバフの効果がわからないので、行動していいか不明だ。効果反転系のデバフなら時任が動いたために形勢は不利になる。


 悪魔を対象にした攻撃魔法を唱えたが、味方に向かっていく可能性もある。


「今のところは何ともない。『死刑執行』のようなデバフなら、時間が来たら俺が死ぬ展開もあるよな。救いが安らかな死を意味する可能性も否定できん」


 何もしないでは、何もわからない。効くかどうかわからないが『マナ吸収』の魔法を悪魔に放った。魔法は悪魔に命中した。抵抗はなく、『マナ吸収』が効果を現す。


 悪魔から赤い弾が飛んできた。悪魔からの攻撃は初めて見る。避けようとしたが、誘導弾なのか時任に命中した。


「痛くも痒くもない」生命力もマナも減らないのが不気味だった。


 シャオリーの攻撃とリリサの攻撃が悪魔に命中した。悪魔から再び赤い弾が飛んできて時任に命中する。


「何かわからないが、悪魔にダメージが入ると赤い弾が俺に飛んでくるのか。悪魔の加護の対象者に飛んできて、累積していくのか?」


 よろしくない状況だ。今までの経験からこの手の効果はスタック制。一定段階を越えると、効果を現す。効果は進めば進むほど致命的になる。


 確認のためにシャオリーに『マナ吸収』を撃った。すると、シャオリーから青い弾が飛んできて時任に命中した。気分が軽くなった。


「悪魔が攻撃を受けると赤い弾がくる。味方を攻撃すると青い弾がくる。赤い弾の累積効果は味方を攻撃して青い弾をもらって消せる」


 適度に味方を倒さないように攻撃して、効果を消していけば無害、と普通は思う。だが、事前情報がないので思い込みは危険である。


 シャオリーとリリサが押し始めた。赤い弾がどんどん時任に飛んできた。時任は冷静だった。


「ここで慌てて味方に弱い攻撃を入れるのは思考の放棄。やれば俺は死ぬ。俺が死ねばリリサかシャオリーにデバフが行き、この戦いはきっと負ける」


 砂地が振動した。下から赤い炎と青い炎の柱が五本ずつ立つ。時任は青い柱に触れた。青い柱が消えて、体が一気に軽くなる。


「青い火柱は青の弾と同じ効果だな。しかも弾より炎の柱のほうが効果は大きい」


 赤い火柱と青い火柱は十二秒で小さくなり消えた。現状ではリリサとシャオリーを支援しつつ、青い火柱が吹き出したら触るのがベスト。だが、時任はまだ動かない。


「この罠には先がある。赤い火柱が出現する意味がわからない。それに不可解なことがまだある。鍾乳石が一つも降ってこない」


 天井を見上げると、鍾乳石が消えていた。なぜだ? と疑問が湧いた。消えた鍾乳石の謎がわかない内には、仕掛けの全体像の判断が難しい。


 天井に向けてオーブからの光線を円形に撃った。特段変化がないが、下にいるシャオリーとリリサの動きは違った。明らかに何かを避けていた。


「鍾乳石は俺から見えなくなっただけか?」


 目の前の敵に集中しながら頭上の落下物に気を付けるのは至難の業。だが、リリサとシャオリーはやってのけた。『危険感知系』のスキルで落下してくる場所を予測している。


 悪魔は落下してくる鍾乳石に回避行動を取っていない。悪魔の実力なら鍾乳石を感知できれば、躱せそうだが躱さなかった。悪魔が唱えようとしていた魔法の詠唱を破棄した。


 ダメージが入って詠唱が中断されたためと予想できた。


「悪魔は俺と同じく鍾乳石が見えていない。また鍾乳石には悪魔にダメージを与えて魔法詠唱を止める効果がある」


 鍾乳石が当たった悪魔から赤の弾も青の弾も飛んでこない。鍾乳石による悪魔へのダメージには弾の発生判定がないと判断した。


 時任は鍾乳石への攻撃による支援を考えたが中止した。


「鍾乳石が見えない以上、再度生えてきているかどうかわからない。また、ダメージがどれだけ入るかも不明だ。俺から悪魔への安全な攻撃手段はとっておこう」


 リリサの槍が悪魔の足を払った。姿勢を崩した悪魔にシャオリーが両手を向ける。シャオリーの両手から強烈な白いビームが放出された。大量の赤い弾が時任に飛んできた。


 赤い弾を浴びると、寒気がして体が震えてきた。

「まずいな、赤い弾を受け過ぎたか。状態異常が出てきている」


 地面から再度、赤と青の火柱が立つ。時任はすぐには青い炎の柱に跳び込まなかった。


 悪魔が空中に瞬間移動した。悪魔に青い光が集まりだす。大技の『天地崩壊』に似たモーションだ。


『天地崩壊』は広範囲に大ダメージを撒き散らす大技。威力は失った生命力に比例する。残り生命力が一%以下で最大威力になる技だった。


『天地崩壊』の場合、モーションが始まれば極大ダメージを与えなければ止めらない。

「今のふらふら状態で喰らったら死ぬ」


 青の火柱に逃げようとした時にリリサとシャオリーが見えた。二人は青の火柱に飛び込んだ。まさか、と思い時任は瞬間的な判断で赤の火柱に飛び込んだ。


 直後に悪魔が光って大爆発をした。時任は無傷だった。

「これが救いの意味か。悪魔の加護を持つ場合、悪魔の大技は赤の弾の累積が進んでいるほど、ダメージは低い。逆に悪魔と敵対している場合は、青の累積効果がないと悪魔の大技には耐えられない」


 シャオリーとリリサは知っていたのか気付いたのか、青の火柱に飛び込んで一時的に青の累積を得てダメージを軽減した。だが、累積値が足りなかったのか傷を負っていた。


 時任の体が白く光った。悪魔の大技を受けたことによりデバフが解除されたと悟った。


 リリサとシャオリーが膝を突いた。軽減してもダメージはかなり深刻だ。悪魔がふらふらとなって地上に出現する。悪魔は回復魔法を唱え始めた。


「俺の出番はここだ!」


 悪魔に回復されれば逆転される。詠唱を妨害するために時任は悪魔の上の天井を光線で撃った。悪魔が倒れた。落下してきた鍾乳石が最後の止めになった。悪魔の生命力は一%も残っていなかった。


「勝った!」と時任は喜んだ時にリリサとシャオリーが動いた。お互いに駆け寄っての一撃、二人の攻撃は同時に当たり、二人とも倒れた。


「相打ちだ! 戦闘不能? それとも死亡? どっちだ」


 近寄って確認しようとすると、視界が暗くなる。時間にして五秒くらいだった。


 視界が元に戻った時にはシャオリーもリリサも消えていた。二人がいた後には死亡痕跡がない。戦闘不能状態でも体は残るが、二人の体はない。大仁田に次ぐ謎の現象だ。


 部屋の中央が光ってレインボーの宝箱が現れた。

「俺が開けるのは仕方ないよな」


 アイテムによっては入手時に譲渡不可になる場合が極稀にある。モルルンの秘宝が譲渡不可のアイテムなら後で大いに揉めるのは必定。


 しかし現状では時任しかいないので、宝箱を開けないと今までの苦労が無駄になる。


「譲渡可能であってくれ」と願ってレインボーの宝箱を開けた。戦闘の後遺症なのかふらっとした。気を確かに持つ。宝は箱の中身は空だった。


 ここまできて空だとがっかりだ。くまなく宝箱を調べるが何もない。他に箱を探すがない。

「今までレインボーの宝箱が空だった経験は一度もない。でも、現状は何もない」


 時任は憂鬱な気分になった。

「リリサかシャオリーが生きていたら、それこそ裏切者呼ばわりだろうな」


 最悪、時任が宝を独占したとの疑惑がかかる。レインボーの箱が空だった事実を証明する物はなく、証人もいない。

「これは最悪の宝だな」

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