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水色の世界で  作者: ゆき
1/1

始まり

異常とは何か?

僕が小さい頃、友達が消えた。目の前で、急に現れた馬車に撥ねられて。一瞬で僕の友達は僕の眼の前から消えた。いや、友達の体はあった、と思う。いやあった。だって僕はその子、そうだ、「エリ」だ。エリに近寄って、体を揺らしたはずだ。でも、エリはそこにいなかった。その体はもともとエリのものだったけど、でもそこにエリはいなかった。だってエリは泣いてる僕のことをいつも仕方がないなと、困ったような顔をしながら、でも笑いながら、頭を撫でてくれたのだ。それがエリなのだ。

でも、そうしなかったと言うことはそれはエリじゃないのだ。エリのものであっただけで。あの馬車がエリを連れて行ってしまったのだ。


でも馬車はそのまま止まらずに走り去っていった。


だから僕はその馬車を追いかけようとした。エリをどこへやったと、そう叫びながら、泣きながら。でも追いつけるわけがなく、すぐに見失った。周りにいた人はエリがいなくなったその体をどこかへ持っていこうとしていた。…その時の人々の顔はどうだっただろうか。きっと、無表情だったのだろう。だってこの世界はそう言う世界だ。


エリだけだった。泣いてる僕を正常だと言ってくれたのは。普通はそう言うものだよ、と。そう言ってくれたのは。


結局その馬車を捕まえることはできなかった。走っても走っても、追いつくことができなくて、僕は泣き叫んで、でも何もできなかった。

周りの人たちは僕を指差しながら「異常だ」と言っていた。でもそんなこと日常茶飯事で、だからこそ僕は喚き散らした気がする。そんなこと言ってる場合じゃないだろう、と。今すぐエリを助け出すべきだ、と。


周りの人は、いつの間にか離れていった。そうして僕はまた一人になった。


エリが死んでから数か月後くらいだろうか、大人たちが話していた。大笑いしながらいろいろなことを語らっていたが、何かの話題でふと誰かがつぶやいた。

「あの少女は仕方なかった。むしろ光栄だろう、あの方のもとに行けるなんて。まあでも、あいつは『普通』になってくれてよかった。これであの方も安心してくださる」

そのあとは「あの方」の賛辞を永遠にしていた。

意味が分からない。「あの少女」はエリのことで、「あいつ」は僕のことだろうか?それなら「あの方」とは誰だ?でもまるで熱に浮かされているかのように「あの方」のことを語る大人たちのことがあまりにも気味が悪くて、僕はその場から逃げ出した。


それから長い年月がすぎ、僕は18歳になった。もう成人だ。そして僕はあの日からだんだん泣かなくなった。なぜだろう…。なんで泣かなくなったのだろう。大人になったからだとかいう単純な話ではない。悲しいと思うことさへなくなったのだ。こんな僕を見たらあの子…エリはどんな顔をするのだろうか。困った顔をするのだろうか。それとも変わったね、と異常だ、と言うのだろうか。

周りの人たちは泣かなくなった僕を歓迎した。これで君も大人になった、と。


そんな人たちをいつまでも異常だと言っている自分は…、もうなんなのだろうか。自分自身も異常だと、そう思いながら、今日も生きていた。


この世界は異常だ。

皆が笑って暮らしている。誰も悲しそうな顔を見せない。

だからこの世界は異常だけど、この世界を異常だと考える僕の方が異常なのかもしれない。

人々は言う。「君は異常だ」、と。

もはや誰が異常で何が正常なのか、なんて僕にはわからなかった。

…違う。本当はわかっていた。自分が正常だと認めて欲しいだけであって、僕が異常だと言うことなんて。

だって、普通の定義は最大多数が賛同することだ。だから、僕以外の全てがこの世界は正常だと言うのならば、この世界が「正常」であることが普通なのだ。つまるところ、僕が異常なのだ。


でも泣かなくなった自分はおかしいと自分で思ってしまって…。




僕は18歳の冬、急に不安に駆られ、走り出した。夜の街を。あの日エリが消えたあの場所を目指して。

その時だった。視界の端に、あの馬車があった。忘れもしない。今の時代にはあまりに不釣り合いで、それなのに周りの人は特に気にも留めない馬車。僕は、僕は、すぐさまその馬車に飛び乗った。そのまま馬車の人に気づかれずに、乗り続けた。

突発的で計画性がない行動であることは重々承知している。それでも次この馬車をみかけるのはいつになるかわからない。今まで見かけなかったのだ。もう現れないことだってあるかもしれない。馬車の人を脅そうか、それともこのまま隠れ続けようか。そんなことを思っていたら馬車は急にガクンと揺れた。

思わず顔を上げると、真っ暗な場所にいた。どこだろう?それでも馬車はそのまま進み続ける。周りにはいつの間にか光が灯っていた。僕はどうしようもなく怖くなって、そのまま馬車に隠れていた。


そして馬車は僕を乗せて、不思議な城に着いた。

ここ数年は受験勉強をしてたのですが、ふと小説を書こうと思ってちょっと書いてみました。

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