おひとり様バー
B氏は、ここ一年ほど通っているバーでマスターと話をしていた。
「この店は変だよマスター、いつも客がオレ一人じゃないか」
「人目につかない場所にありますからね。不思議なもので、B氏が来ない日も、だいたい一人しかお客さんが入らないんですよ」
「よし分かった。それなら次はオレが友達と一緒に来てやるよ。」
しかし後日、B氏の友人は急用が出来てしまい、結局その日もB氏は一人で行くことになる。
次にB氏は逆に、誰も客が入らない日を作ってやろうと考え、行く予定だった日を突然キャンセルしてみる。
ところが翌日バーで聞くと、昨日は飛び込みで新規の客が一人入ったという。
「ここまで来ると不気味だよ、マスター。この店は一体…」
B氏の話の途中で、カラン…と店の扉が開く音がした。なんと別の客が入ってきたのだ。
次の瞬間、B氏は何かに気が付つき、血相を変えて店を飛び出してしまった。入ってきた客が言う。
「めずらしいね、この店にオレ以外の客が入ってたなんて。それにしても、彼は一体どうしたんだい?」
「さぁ…、でもたまに…、一年に一回くらい必ずあるんですよ。お客さんが、何かに気づいて出て行ったっきり、二度と来なくなることが…」