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幻想伝奇  作者: 砂の人
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ある1つの鏡像

私は古い友人から鏡を譲り受けた。その鏡は、丁度私の背丈ほどの大きさをしており、寝室に置くことにした。

ある晩、私は気づいた。鏡の中の私が、少しずつ、しかし確実に、現実の私とは異なる動きをしているのだ。私はそれから、その鏡の中の世界が平行世界の一部であると考え、毎晩、鏡の中の自分が見せる異なる生活を観察した。

そこには、私が選ばなかった道や、取らなかった選択が展開されるようになっていた。


やがて、私は現実と鏡の中の世界の境界が曖昧になっていくのを感じた。どちらが真実で、どちらが幻なのか。自己が不安定になるのを感じながらも、なぜか私は鏡の前に立ち続けた。

そして鏡の中の私は、私と同じように鏡を見つめていた。その鏡にはまた別の私が映し出され、その私もまた、私を見ていた。私か、或いは鏡の中の私は強烈な眩暈を感じ、その場に倒れこんだ。その拍子に鏡が割れて、破片が部屋中に飛び散ってしまった。


私は、部屋中に散らばる無数の破片の中に、それぞれ別の自分を見た。不気味に思い破片を砕くと、更に分割された私の人生が、そこにあった。その分割は永遠に続き、空気中に漂う埃のような小さなサイズの破片にも、また別の私が映し出され、その中の複数の私と私は目が合った。


あの日を最後に、私は寝室に入っていない。


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