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まだ何も書かれていない魔法の書  作者: 油野ゼブラ
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プロローグ

初めまして、油野ゼブラと申します。

この小説は完全に自分の趣味、自己満足で書いているものです。

小説初執筆ということもあり、文は拙く、投稿ペースも保証できないと思いますが、それでも読みたいという方はぜひどうぞ。

面白くない、自分に合わないと思った方はすぐに読むのをやめてこの作品のことを忘れてください。

たぶんそれが作者と読者お互いのためになります。

ですので、感想もお手柔らかにお願いします(作者が豆腐メンタルなので)。

あと、感想に返信はたぶんしません。ご了承ください。

以上のことに納得できた方は、ぜひご覧ください!

 20XX年、初秋。

 真白皆人ましろみなとは窓から西日が差しこんでオレンジ色に輝く校舎の廊下を歩いていた。

 彼はつい2分前に担任である若手の男の数学教師から渡された昨日の提出の課題を教室に運んでいるところであった。

 そんな彼の脇を段ボールや工具をもった数人の生徒が追い越していく。


「段ボールこんだけあれば足りるかな?」


「いやー、たぶん全然だと思うよ。駅前のスーパーにももらいに行ったほうがいいかも」


「……!じゃあはやくしないと!他のクラスにとられちゃう」


 彼らの声は焦りつつも弾んで聞こえる。


 そして、そのような声は学校中から聞こえてきた。

 この高校はこの日から、2週間後にある文化祭の準備が本格的に始まっていたのだ。

 クラス展、部展の準備で多くの生徒がせわしなく動いている。

 彼らの顔はどこか楽しげで、傾いてきた太陽の光を浴びて余計輝いて見える。

 

 しかし、それらは客観的な印象であった。

 皆人の表情は決して明るいとはいえないが、この喧騒を嫌がっているような暗い表情も見られない。

 

 ――無表情。それが彼の表情を表すのに最適だろう。


 彼は活気に満ちた表情の生徒の一団の側を通りかかっても、早くも文化祭当日のクラス展を回る順番を話し合っている熱々カップルとすれ違っても、表情を全く変えなかった。

 彼ら彼女らを目で追うことも、逆に目を背けることもなく、皆人はただまっすぐ、前を向いて歩き続けた。

 

 彼から感じられる雰囲気はただ一種類、無関心。

 彼からは周囲の人への興味がまったく感じられない。

 その様子はまるで、彼だけこの騒がしい空間から切り離され、彼だけが存在する別の時空を歩いているようであった。


 真白皆人は現在の学校の様子に対して何の印象も抱いていなかったのだ。


 そしてその表情を全く変えることなく、皆人は自分の教室に到着した。

 中からは、やはり校内の他の場所と同じく、にぎやかな声が聞こえてくるが、皆人はまったく躊躇することなく前の戸を開けて教室に入った。

 

 教室では9人の生徒がクラス展の話し合いをしていたようだった。

 一瞬、静かになる教室。しかし本当に一瞬であった。


 すぐに、いかにも「スポーツ少女」といった雰囲気のショートカットの女子生徒――このクラスのクラス展責任者、湾晏澄わんあずみが話を再開した。


「それでー、やっぱあたしは森木に不気味な声やってもらったほうがいいと思うなー」


「壮太か?あいつはゾンビの役とかのほうがよくないか?演技うまそうなイメージがある」


 そう答えたのは皆人ほどではないが表情の変化に乏しいクールな男子生徒――学級委員の樫津晴輝かしづはるきだ。


 すると購買で買ってきたと思しきクリームパンを頬張りながら、同じく学級委員である雷電愛里彩らいでんありさがゆっくり話し始めた。


「あ~たしかにね~。森木くん演劇部だもんね~。じゃあ代わりにわたしがその怖い声やろうか~?」


「いやー、雷電さんの声だと怖がらせるどころか逆にほのぼのさせちゃう気が……」


 制服を着崩し、少しチャラチャラした印象を受ける男子生徒――円場瞬まるばしゅんがやんわりと断ると、他の人もうんうんと頷いた。


 そんな感じでほとんどの人は皆人の登場を無視したが、一人、彼に話しかける者がいた。


「あれっ、皆人どうした?部活行ったんじゃなかったのか?」


 先ほどまでの話し合いをだるそうに聞いていた眼鏡の男子生徒――針宮和俊はりみやかずとしである。 


「ああ、先生にこれ頼まれて置きに来たんだ」


「そうか、おつかれー」


 和俊は皆人の数少ない「仲間」の1人だ。それまで正面しか向いていなかった皆人の視線が初めて動き、和俊の方を見た。


「ちょっとアンタ、やっと口開いたかと思えば真白と話しただけ?いい加減案出してよ」


 そこに新宝舞しんぽうまいの鋭い視線が割って入る。彼女の顔立ちはよく整っているが、その目つきは非常に鋭く、和俊をひるませた。


「っ!い、いやーだってオレもともと制作班のリーダーなんてやるつもりなかったし……」


「うるさい早く案出せ」


「は、はい……」


 和俊の弁明は舞の短い言葉と鋭い視線ではねのけられてしまった。

 そして彼女の視線は皆人のほうを向いた。


「真白も用済んだなら早く消えてくんない?邪魔」


「ちょっと舞ちゃん、言い方きつすぎだよ……」


 あまりに辛辣な舞の言葉を、隣に座っていたボブヘアの美少女、佐浦佳乃さうらかのがたしなめる。

 しかし舞はまったく悪いと思っていないようで、そのまま何事もなかったかのように資料を読み始めた。


 一方皆人のほうも、舞の睨みやあんまりな物言いを気にする様子を見せず、そのまま教室から出ていこうとする。

 すると、


「まあ少し待ちたまえ皆人クン。せっかくだからキミもなんか一つ案を出していったらどうだい?」


「ワタシもミナトのアイデアきいてみたい!」


 彼を呼び止める声がかかった。


 最初に呼び止めたのが財充たからみつる。イケメンと言って差し支えないきれいな顔立ちだが、今は瞳の奥に意地悪い光を宿している。


 そして充の言葉に乗ったのがドリス・ホワイト。イギリスからの留学生でクラスのみんなからは「ドリー」と呼ばれている。


 皆人は適当に答えて早く部活に行こうと考えたが、彼が言葉を発するよりも先に、充が再び口を開いた。


「おっと、すまない。どうせ自分のこと以外まったく興味がないうえ、成績も平凡なキミのことだから、何も思いつかないだろう?ま、どっちにしろキミの意見は採用されないだろうね。ここはボクたちに任せたまえ」


 そう言って充は、「あっちいけ」とでも言うように手を振った。

 皆人は何のために充がそんな小芝居をしたのかわからなかったが、早く部活に行きたかったので、


「そう。じゃあよろしく」


 と言ってすぐに教室を出ていった。


「充も言い方ひどくないか?」


 そんな会話も聞こえてきたが、皆人はまったく気にせず戸を閉めた。


 その瞬間、皆人は異様な気配を察知した。

 口では説明しがたいが、とにかくこれまでに感じたことのない、全身の遺伝子までもが疼くような違和感だった。


 何かが、起こる。


 そう感じつつも皆人は歩き始めた。

 そして自分のクラスの前の戸と後ろの戸のちょうど中間あたりに差し掛かった時。


 皆人の視界は白い光で埋め尽くされた。


 彼の意識は、そこで、途切れた。



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