第84話 アリアとロックバード
ご訪問頂き本当にありがとうございます。
この2話はバタバタの投稿でした。次回こそは余裕を持って投稿できるようにしたいと思います。
俺たちのすぐ近くではアルベルトとミアの熱い抱擁が交わされている。
そんな2人を邪魔をしないように、少し離れた所で俺たちも数日ぶりの再会をささやかに喜んだ。マレーナとサラ、そしてリーサたちがアズライトから戻って来たのだ。
「マレーナ、戻ってきたんだね。それにサラさんもリーサさんも。」
「ここに戻って来たら絶対に楽しいって思って立候補したんですよ。でも大浴場に入りたいって人たちも結構いて抽選だったんですよ。」と笑っている。
「お父様を驚かせる為に戻って来たのですが、その前に私たちが驚かされてしまいましたわ。ふふふ。」とサラが柔らかく笑う。
「この街道はコーヅ殿が作ったのか?こんなに綺麗な街道は王都でも見たことがない。」
「土台は俺ですけど、模様はイメールです。」
「イメール?」とリーサが確認するように聞き返してきた。
「最近はこういうデザインを施す作業を請け負ってもらってるんです。お陰で俺が作り散らかしても綺麗に仕上がるので助かってます。」と俺は冗談っぽく笑いかけた。
「そのイメールはどちらでしょう?」とサラが目を細めるようにして、夕陽に紅く染められている中でイメールの姿を探している。
「あそこに見える集会所で仕上げ作業してくれてます。」
俺が指差した方向をみんなが見るが「……集会所?」という呟きが聞こえてきた。
「サラ様、違いますよ。あれは劇場です。」
コソッとシュリがサラに耳打ちしている。ここまで聞こえてるけど。
「サラ様、見に行ってみますか?」と、リーサが提案した。
「そうですわね、暗くなる前に行ってみましょう。」と返事をすると、俺に向き直り「それではコーヅ様、後ほど。」とリーサ、マレーナと一緒に集会所に向かって行く後ろ姿を見送った。
その視界の端には、変わらず向かい合って両手を繋いで幸せそうに話をしているアルベルトとミアの姿もあった。
俺は既婚者だし爆ぜろとか思ってないよ。幸せそうで何よりって思ってる。他の人たちがどう思ってるかは分からないけど。
サラたちが視界から消えると、ティアとシュリに「こっちも作業続けようか。」と北側の外壁付近に衛兵の待機所を作るために移動した。
衛兵の待機所は執務や来客対応、留置所や食事、仮眠したりと様々な用途で使われるので、そこそこ大きな家の様に作る必要があるそうだ。俺はざっとそれぞれの部屋をイメージして床を広めに作ってから部屋を区切る壁を作っていった。
そこまで作ったところで陽が完全に落ちてしまい、手元も良く見えなくなってきた。俺は区切りも良いし作業を切り上げることにした。
「全部作り切れなかったのは残念だけど。」と俺は作り途中の待機所を見ながら言った。
「領主様が来るのは明後日なんだし充分だよ。コーヅくんは望みすぎだと思うよ。」
「そうよ。明日の午前中には終わるでしょ、それで充分よ。あー、お腹空いた。」
ティアはサッサと野営地に向かって街道を戻り始め、シュリも俺に「行こ。」と言ってティアに続いて歩き始めた。俺も2人に続く様にして歩いていった。
野営地の方に見える大浴場が下から当てられた光でシンボルタワーのように遠くからでもよく見える。
村ですれ違う村人たちからは口々に街道作りの礼を言われたが、俺にはイメールの功績のように思えていて、恐縮しっぱなしで頭を下げたまま通り抜けた。
「はぁ……ああいうの慣れないな。」
「喜ばれて感謝されてるんだから堂々としてなさいよ。」とティアには言われたけど、そんなに性格は簡単に変わりませんよ。
野営地に着くと、ここも間接照明で美しく照らされていた。シンボルタワーと相まってとても幻想的な空間だと感じた。アズライトにだってこういう空間を作れるよな、マレーナなら。
それはそれとして、食事前にフリーダに確認しておきたいことがある。そのフリーダは配膳場所の近くで夕食のメニュを指示していた。
「屋台で料理を作れるか試したくて、鍋を2つとジャガイモと塩と油を借りたいんだ。」
「何のことか良くわからないけど、いいわよ。でも何するかの興味あるから私も見せて貰っていいかしら?」
「勿論いいよ。じゃあ、食事が終わったら声をかけに来るよ。」
そう言うと、俺たちは食事の列に並ぼうとした。
「あ、待って!そういえばコーヅに料理長から干からびた茸を預かってるわよ。」
「あ、干し椎茸!?本当に?嬉しいなぁ、それがあると料理が美味しくなるんだ。」
俺はフリーダに礼を言うと、配膳の列に並んで食事を受け取った。
アズライトから領主を迎えるための物資を運んできた人たちが増えていて今夜の野営地は賑やかだ。
「賑やかでいいね。」と誰にともなく話しかけてからテーブル席に着いた。ここはティア、シュリ、ショーン、イメールにサラ、リーサ、マレーナというメンバーで食事をしている。
「この数日は静かだったもんね。」
「私が来たからにはコーヅさんに寂しい思いはさせませんよ。」とマレーナが胸を張る。
「賑やかと騒がしいはちょっと違うんだよ。」
「あ、ひっどーい。私はちゃんと弁えてますよーだ。」とマレーナにべーっと舌を出された。そんなやり取りを微笑ましそうに見ていたサラが口を開いた。
「コーヅ様、劇場は素晴らしい出来でしたわ。イメールも素晴らしい仕事をしていました。」
「集会所ってあとどのくらいで完成しそうなの?」
俺は劇場ではなく集会所と訂正をした上でイメールに聞いた。
「えっと、明後日くらいに終わると思います。」
「それは困りましたわ。お父様をお迎えする時には完成していて欲しいのです。明日中にできませんか?」
領主の長女であるサラに言われれば、それは命令と同じ意味になる。
「分かりました。食事が終わったら作業を再開します。誰か手伝いをお願いできますか?」
「私がやります。」とマレーナがハイハイと手を挙げたが、その2人だけでは心配だからとショーンも加えた3人で作業することになった。
「コーヅくんもまだ働くんでしょ?」
「うん。屋台で食事が作れるか試したくて。」
「え?コーヅさんがまた何かやらかすんですか?」と、マレーナが身を乗り出してきた。
「何もやらかさないよ。ちょっと火魔石を使って食べ物を温められるか試すだけだから大したことじゃ無いよ。」
マレーナは俺の言葉を信用していないとばかりにジト目で見てきた。
「本当に何もないけど……、終わったら見においでよ。」
「はい!」
「そんなに簡単にこっちの作業は終わらないけど。」とイメールは呟いた。
食事が終わると、イメール組とコーヅ組に別れて作業を再開することになった。俺は先にフリーダのところに戻って鍋を2つとジャガイモと塩と油、そして火魔石を借りた。
「そんな材料で何をするのかしら?」とフリーダは首を傾げた。
「屋台の調理台がどの程度熱を通すか試したいと思ってね。その場で調理ができるのか、温めることしかできないのかの実験だよ。」
俺はフリーダと実験用の荷物を持ってテーブル席に戻ると、イメールに魔力回復薬を2本渡した。
「助かります。」とイメールから礼を言われたときに何かが頭上を通り過ぎた。空を見上げると2羽のロックバードが村の上空を旋回している。
みんなが一斉に立ち上がった。分かっている人たちは今度は何だ?という目で様子を窺っているが、初めてロックバードを見た衛兵たちは剣を抜いて構えた。サラも剣は抜いたものの体が硬直している。そしてリーサは「サラ様、お下がりください!」とサラの前に立って剣を抜いた。
しばらく上空を旋回していた2羽のロックバードは足で掴んでいた何かをそれぞれが落とした。そしてそれらはドォン、ドォンという音を立てて広場に落ちた。そしてロックバードたちはそのまま外壁の上に降り立って「ギャア!」と一鳴きした。
「サラ様、下がりましょう。」
「それはいけません。私も衛兵です。皆を置いて逃げることはできません。」
「サラ様!」
「できません!」
「お願いです、サラ様!」
そんな緊迫したやり取りの中「おーい!」とアリアが大きく手を振りながら笑顔で走り抜けていった。そのアリアの後ろ姿をサラとリーサはキョトンとした表情で見つめていた。
「あの?」とサラは近くにいたシュリを見やる。
「あのロックバードはアリアちゃんのお友達なんですよ。」と笑顔で返した。
「アリア……あんな性格だったか?」とリーサが首を傾げる。
アリアが近付くとロックバードたちも壁から降りてきた。そして嬉しそうに「グルル……。」と喉を鳴らしながらアリアに顔を擦り付けている。アリアもその首を優しく撫でながら話しかけている。
他の衛兵たちはロックバードからの『贈り物』の方に向かって走っていった。俺は怖いので少し離れたところで止まって様子を窺っていた。
「おい!今度のビッグバイパーは死んでるよ。」
「何だよ、つまんねぇな。」
「それはお前だけだよ。」
今回のビッグバイパーは2匹とも死んでいるようだった。それを聞いてから俺もビッグバイパーの方に歩いて行った。
「すげぇ狩りの仕方だな。頭が無いぜ。」
「ビッグバイパーだって速えのにな。それ以上なのか、あのロックバードは。」
衛兵たちは感心しながら検分をしていた。そしてそこにタイガーやサラ、ティアも加わり詳細に確認が進められていく。
「タイガー隊長、これはどういう事なのですか?」
「あそこのロックバードたちからアリアへの贈り物だよ。」
サラの表情には疑問符が浮かび上がっている。タイガーは説明のほとんどを端折ったので理解できないだろうなと思って聞いていた。
「タイガー隊長、これはアリアの討伐ってことになるのか?」
「そりゃそうだろう。よし、解体を始めてくれ。」
タイガーの指示で衛兵たちは解体を始めた。しばらくその様子を見ていたタイガーはサラを誘うとアリアやロックバードの方に歩いて行った。
俺も俺の作業を進めるためにティアに声をかけてテーブル席に戻った。そこにはシュリとフリーダが座って待っていた。そしてイメール達の姿は無かった。
「やっぱりアリアのロックバードだったんでしょ?」
「うん、そうだったみたい。今度は落ちてきたビッグバイパーも死んでたし。」
「へぇ、賢いのね。」とフリーダが感心する。
「じゃ、俺たちも行こうか。」
俺は荷物を持つと、屋台に向けて静まり返った村を歩いていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は3月1日(火)の投稿を予定しています。
月初でバタバタするのでその前に準備を終わらせておきたいと思います。




