↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/326

第11話 職業と給料

 昨夜、早く寝たのもあって今朝の目覚めは良かった。夜はどうしても色々考えてしまうけど、結局俺は前に進むしかない。その為にはやっぱり魔術の上達しかないと思う。


 俺は窓を開けて身を乗り出すようにして外を見た。今朝は雲が少なく空が大きく晴れ渡っている。そんな街は高名な画家が描いたような絵画のような美しさに、曇った心にもほんの少し晴れ間がのぞいてくる。

 窓を開けたまま着替えやストレッチなどの朝のルーチンをこなしていると、ジュラルが朝食を持って入ってきた。

「おはようさん。壁があると狭く感じるなぁ。タイガー隊長に怒られないように早く報告しとけよ。俺も今日の昼で警護業務は終わりだから、次は訓練場で会おうぜ。」

「ジュラルには本当に色々お世話になりました。」

 ジュラルは笑顔で頷き、昨夜の食器や洗濯物を持って戻っていった。ジュラルを見送った俺は朝食を持ってリビングに戻ると温かいうちに食事を始めた。最後のパンを口に押し込むと、口を動かしながら食器を戻すと、また窓から街を眺めてた。


「あーあ、結局壁にしちゃったのね。」

 ティアは玄関で立ち止まって部屋を見回している。

「おはよう、ティア。壁にしたら区切った部屋がどんな感じになるか見てみたくてね。だからタイガー隊長に壁を設置する許可を貰いたいんだ。ついでに光魔石を使う照明も付けたからティアに光魔石を作って欲しいんだけど。」

「光魔石は作り方を教えるから自分で作りなさいよ。3日もあれば作れるようになると思うわ。それより先にタイガー隊長に面会申し込みましょ。あなたの扱いで色々忙しいみたいだし。」

「俺の扱い?何それ?」

 ティアはリビングの椅子に座って俺を見て、ため息をついた。

「コーヅの魔力が多才だからよ。あなたは土魔術が好きみたいだし、建物や道路の建築や補修とかだってできるじゃない?生物魔術もAランクだから高レベルの治療もできるようになる。空間魔術で空間収納袋作りもできるでしょうし。他の属性もそこそこ高いから複合魔術の研究開発とか考えれば考えるだけ色々と出てくるのよ。」


 俺はティアの言葉に唖然とした。俺は日本に帰りたいってずっと言ってて、ティアだって止めないって言ってるのに……何を言ってるんだ?まるで俺がこの世界にずっと残るようじゃないか。俺は不機嫌な声で返事をした。

「俺はこの世界に長居したくはないんだけど。帰れるならすぐにでも帰りたいんだよ。」

 ティアはそれに対して特に表情を変えることも無く淡々と知っていることを答えてくれた。

「そうかもしれないけど、本当にあなたをニホン送り帰す方法を知らないの。だから私たちができることは、あなたがあなた自身で帰る方法を見つけ出すための手伝いよ。それまであなただってこのジルコニア王国で生活するんでしょ。」

「……それをタイガー隊長が考えるの?」

「そうよ。AランクやSランクになると国の方針が関わってくるの。国を発展させるためにどういう方向で活躍してもらうか。私は古代魔術の研究よ。ぶっちゃけ火魔術のSランクなんて普段は必要ないのよ。ドラゴンのような伝説の魔獣が現れた時や戦争を避けるためのカード。だから普段は暗殺を避けて周辺国から離れたここに居るの。まぁ、王都が嫌だったのもあるけど。でもね私が居るだけで相手国は警戒を強めるわ。あなたを警護しているのもそういう理由。あなたの潜在能力は周辺国には脅威になるのよ。」

「暗殺を警戒しないといけない程、治安が悪いの?」

「ううん。今は周辺国とも関係は良好だから大丈夫よ。でも砦の中にもスパイは紛れ込んでいるはずだからね。警戒してる事をスパイにアピールしてるのよ。」

 確かにそれが本当だとすると色々と腑に落ちてくる。一応、俺が日本に帰る為の支援はしてくれるようだし。実際にここの人達はみんな良くしてくれて居心地も悪くはない。

「ごめん、色々と考えてくれてたんだね。ありがとう。」

「さて、これでコーヅくんは納得してくれたかしら?早速タイガー隊長のに空き時間を聞いてみましょうか。その後に光魔石作りね」

 

―――

 

 タイガー隊長の部屋は訓練場の脇にあった。確かにここなら部屋に居ながら訓練の様子が良く見えるな。

 コンコンコン

「タイガー隊長、ティアです。コーヅの事でお話があります。」

「おう。入れ。」

 部屋の中からタイガーの声が聞こえてきた。

「失礼します。」

 ティアが先に部屋に入り、それに続いて俺も入った。タイガーは書類から顔を上げると俺たちの方を見た。そこには疲労の色がありありと浮かび上がっていた。こういう仕事疲れにヒールは効かないのだろうか?

「2人一緒にどうした?」

 ティアが直接伝えろとばかりに俺を見てきた。俺もそのつもりだったので、直立不動の姿勢に胸へ拳を当てて話し始めた。

「はい、今住まわせてもらっている部屋に間仕切りの壁で寝室や浴室を作りました。このまま使用する許可を頂きたく相談に伺いました。」

 タイガーは眉間を指でトントンと叩いて考えている。やっぱりセキュリティ的に問題があるのだろうか。

「その部屋を見てみない事には判断できんが問題なかろう。警護している連中は襲撃を警戒しての事と思うが、今はそういう情報も届いていないしな。」

 はぁ……良かった。無事に許可を貰えた。これで堂々とリフォームを続けられる。ホッとした俺の表情を見てタイガーが続けて言う。 

「コーヅのことだから俺の予想の斜め上を遥かに超えたことをしてそうだな。明日の午前中に部屋を確認に行くから待ってろ。丁度警護の連中も交代するから新しい奴らを紹介する。」

 少々タイガーの言い方に引っかかるものも感じる。でもまぁ許可が貰えたから良いことにしよう。

 ここまで黙って聞いていたティアが会話に入ってきた。

「ねぇ、結局コーヅは何をするようになるの?」

 タイガーは一転して眉間に皺を寄せて険しい表情になって深いため息をついた。

「それがまだ決まらないんだ。コーヅが多才すぎて各方面から引く手あまただ。建築や土木関係、治療院、討伐業務。それから空間収納袋作りもな。どれが一番アズライトにとっていいのか、比較して各方面を説得するというのがなぁ。……いっそコーヅに決めてもらうか?」

 タイガーが考えることを放棄したように突然俺に振ってきた。

「え?俺が決めて良いんですか?えっと……今は部屋のリフォームしているので建築関係って事ですかね?」

「そうか。もう考えるのも調整するのも面倒くさくなった。まずはそれでいってみるか。コーヅがやりたいと言ってる事をやらせるのが一番良いだろう、ってな。」と言って頭の後ろで両手を組んで背もたれに体を預けた。

「そんなので良いんですか?えっと、建築関係の仕事のイメージは何となくは分かるのですが、具体的にはどういう仕事をすることになるんですか?」

「そうだなぁ、道路や橋だろ、それから建物を作ったり、補修したりとかだな。今はあまり財政的に余裕が無くてな。シンが居た頃は補修が必要そうなところをシンが気付いてサッサと直してくれてたんだ。シンが居なくなってからその辺りが上手くできていなくてな。」

 そのまんまの土建屋だな。それなら経験は無いけどやることは分かりやすい。

「仕事をすると給料は出るのですか?」

「お前さんの場合はしばらくは固定給だな。当面の間は月に金貨1枚と領主様から指示を貰っている。」とタイガーは頭を掻いた。

「ええぇぇぇ!?金貨って、そんなに?」

 ティアが驚きの声を上げた。でも俺はそんなに驚いていたティアに驚いた。貨幣価値が分からないので俺にはピンと来ないが、そんなに多いのだろうか?

「私の5倍……。」

「ああ、俺の給料よりも高いよ。」と2人がため息をついている。

「ティア、こういう事は考えたらダメだ。黙ってそういうものだと受け入れるしかない。」とタイガーは自分に言い聞かせるように言った。

「そうかもしれないけど……私の5倍……。」と2人がもう一度ため息をついた。

 状況はあまり理解できていないけど、そんな2人を見ていると申し訳なくなって来る。

「領主様はコーヅが日本の知識や技術をアズライトに持ち込んでくれる事を期待している。まずはその金を使ってアズライトの事を知ってくれ。研究開発費みたいなものだ。ちなみに酒場が知りたかったら俺に聞いてくれ。」とチラッと俺を見た。これは誘えという事だなと理解した。

「ちょっと、ずるい。私も。」とティアが割り込んできた。

「それなら皆で行くか、コーヅの奢りでな。」

「いいわね!」

「よし、領主様が戻って来て、俺の仕事が落ち着いたらな。」

「分かったわ。あの大通りできたお店は?」

「分かった。俺もあの店は気になってた。」

 俺は置いてけぼりだったけど、街の一面を知るための話がまとまったようだ。

 でもこんなに緩い感じなら俺は部屋のリフォームにもお金をかけられるし、スリッパや魔道具も自分のお金で買えるし、料理も試したりできる訳だな。

「分かりました。いくつか考えている事があったので、それに使わせてもらいます。」

 タイガーは身を乗り出して「例えば?」と俺に具体的な説明を促してきた。

「部屋のドアと照明の光魔石と、部屋の中で履くサンダルでスリッパというものです。」

「スリッパ?なんだそれ?」


 俺はタイガーにスリッパがどんなものか、何のために使いたいのかを説明した。

 

「そうか……ダメとは言わないが。」と興味を失ったかのように椅子に座りなおした。「まぁ、この季節には良いかもしれないなぁ。俺にも1つ作ってくれ。ティア、コーヅを靴屋に連れて行ってやってくれ。ついでにお前もスリッパとやらを作って貰ったらどうだ?」  

「それって俺も街に出て良いという事ですか?」と今度は俺が食い気味に聞いた。

「ああ、同伴者が居ればな。コーヅにはもっとアズライトの事を知ってもらわないと何も始まらないからな。」

「街に出られるのは嬉しいですね。いつも窓から綺麗な街並みを見てたんです。いつか街の中を散歩してみたいなって思ってました。」

 

 俺たちはしばらく雑談をしてから隊長室を出た。タイガーもずっと悩んでいたことに結論を出せたのですっきりした表情で俺たちを見送ってくれた。


 金貨1枚分の給料は明日持ってきてくれるそうだ。

 貨幣についても聞いた。

 白金貨1枚=金貨10枚=大銀貨100枚=小銀貨1000枚=大銅貨10,000枚=小銅貨100,000枚だそうだ。

 貨幣価値は街で買い物をしながら肌感覚で覚えていく必要があるし、どんなものがどんな値段で売っているか、店に行けると思うだけで楽しみになってくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。