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センセイ
貴方が隣でフッと笑った。
切なそうな、擦り切れそうな笑顔。
---どうして、そんな顔なさるの?
怖くて聞けない。
いつか貴方が遠くへ行ってしまうような気がしてならないのです。
だから怖くて、切なくて。
聞いた瞬間に、全てが終わる気がして。
いつも曖昧な笑顔でしか応えられない。
---どうして、そんな顔なさるの?
ねぇ、みんな心配してるのよ。
本当に、私なんか、いつも貴方のことばかり。
貴方の笑顔を見ると、安心と不安と。
だって、そんなに疲れた顔なさってるんですもの。
なにが貴方を苦しめるの?
そんな顔で褒められても、切ないだけ。
嗚呼、苦笑いしかできない。
---どうして、そんな顔なさるの?
愛しい人、どこにも行かないで。
貴方にそっと手を添えたい。
もし、それで貴方がいなくならないのならば。
こどものように、貴方を捕まえて離さない。
その手も、怖くて動かせないまま。
本当に、貴方は何処へ行こうとしているの?
不安になるから、私から離れないで。
嗚呼、貴方が笑ってくれる。
ねえ、どうして、そんな顔なさるの?
---まだ、怖くて聞けない。