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VSゴズール、メズール

(シアンside)


 迷宮攻略は順調に進んでいる。

 ついさっき40階層の階層守護者(ガーディアン)嵐蛇(テンペストサーペント)を倒した。

 こいつの吐く毒霧もあたし達にもうなんのダメージを与えることはできなかった。

 すでに格下の魔物だったみたい。


 20階層の階層守護者(ガーディアン)エビルムカデなんて見かけも気持ち悪く、吐き気をガマンして食べたのにたいして力が上がらなかった。

 すでにあたし達は相当強くなってるってことみたい。それでもまだ魔王リムルには敵わないだろうけど。



 49階層はスライムばかりの階層だった。

 部屋いっぱいにスライムがいたり、巨大なスライムだったり、毒や色んなモノが混じった奴だったり············なんなのこの階層。

 ただスライムは他の魔物に比べて遥かに美味しかった。


 スライムを美味しいと思うなんて人としてもう終わってるかも············。

 魔王リムルもスライムだって話だけど、あいつも美味しいのかしら?



――――――――50階層


 10階層ごとに階層守護者(ガーディアン)が出るはずだから気を引き締める。

 現れたのは二体の巨大な魔物。

 牛の頭を持つ魔獣と馬の頭を持つ魔獣。

 事前に聞いてた情報だと50階層は牛頭と馬頭の魔獣が日によって交互に出てくるということだったはずだけど。


 もしかしてサービスデーだから二体同時?

 まあ、力を得るには好都合ね。



「ルミネ!」

「······ん、コイツら今までの魔物とは格が違う」


 あたし達は戦闘態勢に入る。


「俺はゴズール。侵入者よ、覚悟!」

「俺はメズール。全力でいくぞ!」


 コイツら喋れるのね。

 つまりそれだけ知能が高いってことだわ。

 牛頭がゴズール、馬頭がメズールって言うみたい。

 ゴズールは巨大な斧と盾を持ち、メズールは槍と盾を持っている。


「ダークネス·プリズン!!」


 あたしは闇の鎖で二体を拘束する。

 しかし鎖は簡単に引きちぎられた。

 ゴズールが斧を振るってくる。

 あたしは後ろに跳んでそれをかわした。


「······ダークフレイム!」


 ルミネが炎の魔法で二体を焼き尽くそうとする。

 かなりの熱量のはずなのにあまり効いてないみたい······

 二体同時に倒すよりどちらかに集中した方が良さそうね。


「ルミネっ!」

「······ん!」


 ルミネも同じことを考えてたみたい。

 まずはゴズールを一気に倒す!


「ダーク·デスバレット!!」


 あたしは小さな闇の球体を次々とゴズールに向けて放つ。

 ゴズールは斧で器用にそれを防いでいる。


「······ダークカッター!」


 ルミネが真空の刃を放ち、ゴズールの首を狙う。

 しかし、それを寸前でかわされる。

 でかいくせに素早いわね······。



―――――――――!!!


「がふっ······!?」


 強い衝撃を受けて壁まで吹き飛ばされる。

 メズールの槍を喰らったみたい······。

 喉の奥から血が溢れてくる。


 あたしは口の中の血を吐き出す。

 メズールは更に突進してきて追い打ちをかけてきた。二度、三度と壁に叩きつけられる。


「ぐっ······ゲホッゲホッ······は······はっ」


 あたしは血を吐きながら立ち上がる。

 死ぬ程痛い······でも今のあたしはこの程度じゃ死なない。


「······ダークボム!」


 ルミネの魔法でメズールはあたしから距離をとる。


「······シアン、大丈夫?」

「平気よ······このくらい」


 まだ少し痛むけどもうほとんど治ってきてる。

 前を見ると右からゴズール、左からメズールが迫って来てる。


――――――――ズッ


 あたしはなんとか二体の攻撃を避けたけどルミネがゴズールの斧を受けてしまった。

 ルミネの右腕が宙に舞う。


「······うぐっ!!」


 ルミネが苦痛の声を出す。

 ルミネの腕があたしの目の前に落ちる。

 ······これはチャンスかも。

 あたしは千切れた腕を拾い、それを食べた。


「!?」


 その瞬間、あたしの力と魔力が大幅に上がった。

 さすがルミネの一部ね。

 並みの魔物よりも段違いだわ。


 それを見ていたゴズールとメズールが困惑したようにしている。

 まあ普通人間が仲間の体の一部を喰うなんてことしないものね。

 おかげでスキができてるわ。


「お返ししてあげるわ、ダーク·ネオブレード!!」


 あたしの放った闇の剣がゴズールの右腕を斬り裂いた。ゴズールが大声をあげて腕をおさえる。

 すかさずあたしはゴズールの腕を拾い、口に運ぶ。



 ······やっぱりコイツら相当上位の魔物だったみたいね。

 力と魔力が信じられないくらい上がったわ。

 トドメを刺してやる。


「焼き尽くしてあげるわ、ダークネス·ギガフレア!!」


 ゴズールにも再生能力があるみたいで、すでに腕が生えかけていた。

 でも問題無いわ。

 大幅に上がったあたしの魔力で焼き尽くしてやる。


 ゴズールは闇の炎に呑まれ、光になって消えた。

 倒せたみたいね。


――――――――ズッ!!


 お腹に強い衝撃が走る。

 メズールの槍があたしを貫いていた。

 油断していたわね······。

 メズールはあたしを貫いたまま槍ごと持ち上げた。


「ゴズールを倒すとは見事······だがここまでだ」

「く······あなたがね」


 あたしから流れた大量の血が槍を伝ってメズールに触れる。


「ブラッド·ゾーン!!」


 あたしの血が巻き付くようにメズールを拘束する。


「グッ······拘束したくらいで俺は倒せ······」

「あなた、もう一人の存在忘れてない?」


 あたしの後ろ、メズールの目の前にルミネが立つ。

 すでに〈強化再生〉で右腕は再生していた。


「······たっぷり魔力を込めた、今度こそ······焼き尽くす、ダーククリムゾン!!」


 ルミネの放った炎の魔法があたしごとメズールを焼く。

 あつい······熱い······アツい······けど、あたしはこの程度じゃ死なない。


 燃え尽きる前にあたしはメズールの体に噛みつき、喰い千切る。

 メズールは光となって消えた。

 金色の宝箱と下へと続く階段が現れる。



 あたしはその場に座り込んだ。

 あたしの身体も頑丈になったものね······。

 今なら暴走馬車も弾き返せそうだわ。


「······シアン、生きてる?」

「ええ、平気よ······けどルミネ、あなた今の魔法撃つの少し躊躇したでしょ? あたしの身を案じて」

「······」

「余計なお世話よ、ルミネだってあたしが同じように躊躇したら怒るでしょ? 簡単に死んだりしないわよ」

「······ごめん、シアン」

「いいわ······あたしも言い過ぎたわ、ありがとう······ルミネ」


 それにしても、あんな化け物よく倒せたものだわ。

 でもあれも魔王リムルの配下に過ぎない。

 あの程度に苦戦してるようじゃ駄目ね。

 もっと強くならないと······。



 今の戦い、ルミネはあいつらのことを食べていない。だからあたしだけが一方的に強くなってしまった。

 ······最後の仕上げが必要ね。


「ルミネ」

「······ん、いただきます」


 ルミネがあたしの肩に噛みつき、肉を喰い千切る。


「ん······ぐ······っ······っ!!」


 ······痛い······でもこれくらい、なんてことない······!

 あたしがルミネの腕を食べて強くなったように、ルミネもあたしの身体を食べて強くなった。


 〈暴食〉のスキルは自分よりも格上の生物を食べれば大幅に力が上がる。

 あたしの身体を何度か食べればルミネも同じくらいの強さまで上がる。

 喰い千切られた身体も〈強化再生〉ですぐに回復した。


「······ん、シアン······おいしくはないけど、魔物よりははるかにマシ」

「魔物と比べられても嬉しくないわね······まあ美味しいって言われても困るけど······」


 確かにさっきのルミネの腕、不味くもなく美味しくもなかったわね。


「ふふっ······あたし達完全に化け物ね。いっそ身も心も化け物になれた方が楽なのかも」

「······それはダメ、わたし達は人間として復讐を遂げる······人間の心だけは······絶対なくしちゃいけない」


 そう······そうだったわね。

 ルミネの言う通りだわ。

 気が狂いそうな怒りに呑まれそうになっても人間としての心だけはなくさない。



 魔王リムル······お前を殺すまでは。




二人の使う闇魔法の名前はノリと勢いで決めています。なので名前と効果が一致しないこともあるかもしれません。

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