ショートストーリー⑥ ルミネの魅了攻撃?
感想ありがとうございます。
ちょっと短いショートストーリーですがお試しで復活投稿してみました。
(リムルside)
「さて、リムルよ。詳しい話を聞かせてもらおうか?」
久々にゆっくり出来る休日ということで専用の庵でゴロゴロしていた俺に突然の来客だ。
来客は武装国家ドワルゴンの王であるガゼル王だ。供を連れずに一人で来たようだ。
相変わらずのフットワークの軽さだ。
「詳しい話?」
「とぼけるか。先日、大規模な魔法実験を行うとして魔国連邦にしては珍しく入国をずいぶんと制限していたであろう? 一体どんな実験をしていた?」
魔法実験? そんなものに本当に心当たりは······
「あ······」
ひょっとしてシアンとルミネの騒動のことか。
二人を説得するまでの7日の間は最悪の事態を避けるために人の出入りを制限していた。
そしてその理由は大規模な魔法実験を行うためのものとしていたな。
············すっかり忘れていた。
「なんだ? 俺にも言えない内容なのか?」
どう説明するべきか············
ガゼルに嘘や誤魔化しは通用しない。
黙ってて不信感を持たれても困るしな。
「ええっと······実はな······」
俺はシアンとルミネについて簡単に話した。
全滅させた旧ファルムス軍の身内で俺を憎み、悪魔と契約して力を得て復讐しに来たと。
そして最終的には和解したことも。
「復讐か······しかし元は無力な人間の娘が悪魔と契約したくらいで貴様をどうにかできるとは思えんが」
「かなり気まぐれな上位の悪魔だったんだよ」
自称下級だが規格外な悪魔だからな。
数々の世界を渡るとか言っていたが本当かどうかはわからないのでそこまでは話していない。
「そんな相手とどうやって和解した?」
「二人の身内を復活させた」
和解した経緯も簡単に説明した。
その話を聞いてガゼルは呆れた表情をうかべた。
「まったく非常識な······まあ貴様のやることだ。いちいち驚いたりはせぬ」
人を非常識の塊みたいに······
反論はできないが。
「で、その二人の娘······野放しにして大丈夫なのか?」
「今話しただろ? もう二人は俺を憎んだりしていない」
「そういうことではない。元は無力だった者が急に強大な力を持って増長していないのか?」
ああ、そういう心配か。
シアンとルミネは憎しみに囚われてはいたけど力に溺れてはいなかったと思ったが。
「······リムルさん、ここにいるって聞いたんだけど」
噂をすれば何とやらだな。
ルミネが訪ねてきた。
メイド服を身に付けた可愛らしい姿だ。
············何故メイド服?
「······来客中? お邪魔だった······?」
「ルミネ! いきなり訪ねたら迷惑かもって言ったじゃない」
俺とガゼルを見て少し気まずそうな雰囲気を見せるルミネ。
その後ろからシアンも姿を見せた。
ルミネと違い、メイド服ではなく普通の格好だ。
「ごめんなさいリムルさん、ほらルミネ! 邪魔になるから行くわよ」
「······そのおじさん、誰?」
シアンが頭を下げて言うがルミネはマイペースにガゼルを見て首を傾げた。
おじさんって······ガゼル王をおじさん呼びか。
「リムルよ、この娘達か?」
「ああ、今話したシアンとルミネだよ」
「ほう······」
俺がそう言うとガゼルは興味深そうに二人を値踏みし出した。
「あ、あの······リムルさん? この人は?」
「ドワーフ国の王、ガゼル王だよ」
ガゼルの素性を知ったシアンが驚きの表情を見せた。ルミネは無表情で驚いてるのかわからないが。
――――――――!!!
ガゼルから凄まじい闘気が放たれた。
エクストラスキルの〈英雄覇気〉だ。
それをシアンとルミネに向けて放ったようだ。
「あ、あの······?」
「······?」
二人は戸惑ってはいるものの平然としていた。
抵抗力のない者ならこのスキルを受けたら立っていることも難しいはずだが。
「ほう、これを受けてそんな反応を見せられたのは初めてだな」
ガゼルが面白そうに言う。
〈英雄覇気〉をいきなり浴びせられたら普通は警戒するだろうからな。
二人は困ったような反応を見せただけだ。
ガゼルはさらに威圧に殺気も混ぜたが二人の反応は変わらない。
「何故構えぬ? この距離ならば首をはねることも可能だぞ」
ガゼルが剣を抜く構えを見せる。
だがシアンとルミネは動きを見せない。
「えっと······あたし達は別に戦うつもりはありませんから······」
「······脅しが見え見え、それにリムルさんのプライベートルームに来るお客さんがそんな非常識なことするとは思えない」
それは二人は俺を信頼してくれているということかな?
まったく戦意を見せない二人にガゼルは警戒を解いたようだ。
「なるほど、力に溺れてはいないようだな。お前達を試したことを詫びよう」
どうやら二人を認めたようだ。
威圧を消して二人にそう言った。
「ところで二人は何か俺に用事があったんじゃないのか?」
ルミネがメイド服姿なのも気になるが。
「······新作のケーキを持ってきた。リムルさんに味見してもらおうと思って」
ルミネが色々なケーキを差し出してきた。
新作······ルミネが作ったやつか。
ルミネのお菓子作りの腕はヨシダさんにも匹敵するからな。
それは楽しみだ。
「······おじさんも食べる? ドワーフはお酒好きだと聞いた。丁度お酒の入ったブランデーケーキもある」
ガゼルの正体を知って尚おじさん呼びか。
本当に物怖じしない子だな。
「ほう、せっかくの好意だ。一つ貰おうか」
おじさん呼びを気にした様子も見せず
ガゼルがルミネの差し出したケーキに手を伸ばす。
「あの······毒味は必要ですか? ドワーフ国の王様なんですよね?」
シアンがおそるおそる問いかけた。
毒味といってもシアンとルミネに毒は効かないはずだが。
どうやって毒味をするつもりだろうか?
「必要あるまい。リムルが信頼しているのだろう?」
まあ二人が毒を仕込むなんて思ってない。
もう俺を殺す理由はないし、そもそも俺を殺せる毒なんてそうそうないだろうしな。
ガゼルはルミネのケーキを一口食べた。
「ほう、うまいな。甘いものはあまり好まんがこれはいい」
どうやらガゼルの口にあったようだ。
俺も他のケーキをつまむ。
ルミネはますます腕を上げたようだな。
どれも一級品以上の味だ。
店を開けば繁盛するだろうがルミネは恋人、いや婚約者のハルトを満足させたいがために腕を磨いているんだよな。
ガゼルはルミネのケーキが気に入ったらしく、いくつか土産に持って帰っていった。
魔導王朝サリオンの皇帝エルメシアもルミネの作る甘味を気に入っていた。
大物達を次々と虜にするルミネって実は最強なんじゃ······
「ところでルミネはなんでメイド服姿なんだ?」
さっきから気になっていたことだが。
「······もうそろそろハルトが迷宮での修行を終えるから······。たっぷりご奉仕して疲れを癒してあげたい」
ああ、そういうこと······
メイド服はドワーフ達の武具工房でもらったらしい。
「······メイドの心得とか色々学ぼうと思った。······リムルさんならそういうことに詳しいと聞いた」
······誰から聞いたそんなこと?
前世の知識でそういうのはあるが特別詳しいわけじゃないぞ。
「それならば妾が教えてやろう」
突然声が聞こえたので振り返ると俺と同じ八星魔王のルミナスがいた。
美しい銀髪をなびかせ、金銀妖瞳を備えた吸血鬼の真祖だ。
「············なんでここにルミナスがいるんだよ?」
「何、戯れで足を伸ばしただけじゃ」
ガゼルといいルミナスといいフットワークの軽い奴ばかりだな。
まあ俺も人のことを言えないが。
「······誰?」
ルミネが首を傾げて言う。
シアンも初対面のようだがルミナスの雰囲気に少し緊張しているように見える。
「娘よ、メイドの心得を学びたいと言ったな? 妾直々にメイドのなんたるかを叩き込んでやろうぞ」
戸惑う二人に構わずルミナスが話を続ける。
確かにメイドのことなら俺よりもルミナスの方が詳しいかもしれないが。
ルミネはルミナスの言葉に真剣に耳を傾けているようだ。
「意中の人間を満足させたいのだろう? 今日の所は妾を主人として満足させてみよ」
「······ん、わかった」
······ひょっとして単に自分の世話をさせようとしているだけじゃないよな?
ルミナスはルミネを連れて庵を出ていった。
俺とシアンだけが残り微妙な空気になる。
「あの······リムルさん、さっきの人は一体?」
「まあルミナスに任せておけば大丈夫だと思うぞ? ············多分」
俺はシアンの言葉に曖昧に頷いておいた。
「リムルよ、この娘、妾に寄越せ」
「真顔で寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ!」
後日、ルミナスがそんなことを言い出してきたので俺は素で突っ込んでしまった。
ルミネのメイドとしての働きぶりはルミナスすらも満足させるほどだったようだ。




