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番外ストーリー ~その5~

(リムルside)


「クワーーッハッハッハッ!!」


 ヴェルドラの攻撃が邪神の眷属を完全に消し飛ばした。周囲は怪獣大決戦の後のような悲惨な光景になっていた。

 ゲルド達には悪いが整備し直しだな······



 それにしてもなんとか倒せたか。

 奴の能力〝分解〟はかなり厄介な力だった。

 眼で見た物やその周囲を問答無用で分子レベルで分解していくのはかなりの脅威だった。

 分解というよりもはや消滅だったな。



 魔力による魔法攻撃なども分解して無効化されるのでヴェルドラとうまく連携して一方が注意を惹き付け、攻撃するを繰り返した。

 徐々にダメージが蓄積していき、今のヴェルドラの攻撃でトドメを刺したのだ。



「なかなかの強さであったな。万全の状態ならばもっと楽しめただろうにそこが惜しいな」


 ヴェルドラの言う万全の状態というのは邪神の眷属のことだ。

 戦っていた時に違和感を覚えて気付いたのだが、奴は初めから満身創痍の状態だった。


 永い封印の中で弱体化したのか、弱らせてから封印したのかは知らないが万全の状態には程遠いようだった。

 ま、俺としてはその方がよかったんだがな。


〈告。対象の生命反応はまだ完全には消えていません〉


 智慧之王(ラファエル)さんがそんな警告をしてきた。それと同時にヴェルドラの足下が一瞬で消失した。


「ぬおっ!?」


 ヴェルドラがバランスを崩す。

 邪神の眷属の身体の一部が姿を現し、徐々に全身を組み立てていく。

 コイツまさか自分自身を〝分解〟してヴェルドラの攻撃を避けたのか?


「――――――――!!」

「クワーーッハッハッハッ!! 小癪な真似を!」


 すぐに体勢を立て直したヴェルドラが反撃する。

 邪神の眷属は再びバラバラに吹き飛ぶが、ヴェルドラの攻撃で吹き飛んだわけではなさそうだ。

 また自分自身を〝分解〟して攻撃を避けたか。



〈告。対象の生命反応の根本を確認〉


 智慧之王(ラファエル)さんの示した先に邪神の眷属の核となる物を見つけた。

 手の平サイズの紫色の石みたいな物だ。

 生命反応の根本というのならあれを壊せばいいわけだな。


「これで終わりだ!」


 俺は渾身の一撃を放ち、邪神の眷属の核を消し飛ばした。


―――――――バシュウウッ


 核は黒い煙のようなものを吹き出したが俺の攻撃ですべてを完全に滅した。


〈対象の生命反応は完全に消滅しました〉


 ······今度こそ本当に倒せたようだ。

 話もまったく通じない厄介な奴だった。

 弱体化していてこれじゃあ万全だったなら本気でヤバかったかもな。



 あんなのが9体もいたら確かに世界も滅ぼせるかもしれないな。

 こっちはなんとか終わったが獣王国の方は大丈夫だろうか············








(シアンside)


 本当に一日足らずで獣王国が見えてきたわ。

 ランガさん、ものすごいスピードで休むことなく走り続けてたけど疲れてないのかしら?

 あたしもルミネも飲まず食わずでいても平気だけどランガさんは普通に食事とかしないのかしら。


「ランガさん、ずっと走りっぱなしだけど大丈夫なの?」

「小娘に心配されるほどヤワではない」


 息も切らしてないし本当に平気みたい。

 それともあたし達に疲れている所を見せたくないだけかしら?


 それにしてもこんなに遠くに来たのは初めてね。

 風を切るように景色を楽しむのもよかったけど、今度はお父さん達と一緒にゆっくり旅行したいわね。



「······様子が変。多分戦闘が行われてる」


 ルミネがボソリと言う。

 確かにそんな音が聞こえてくるわね。

 もしかして邪神の眷属って奴が暴れてるのかしら?


「すぐに向かうぞ」


 再びランガさんが走り出した。




 獣王国は魔国連邦(テンペスト)に比べたら質素な建物が建ち並ぶ町並みだった。

 町の各所で獣人の兵士と気味の悪い魔物との戦闘が行われていた。


 ······こいつらが邪神の眷属?

 でも獣王国に現れた邪神の眷属って1体だけじゃなかったの?



「――――――――!!!」


 町の中心の方から耳を突くような声が響いてきた。

 見上げると巨大な化物が両腕部分の触手みたいなのにとんでもない魔力を集めているのがわかった。

 あんなの放たれたらこの国そのものがヤバイわよ!?


「ランガさん!」

「言われずともわかっている!」


 ランガさんがあの化物のいる町の中心部に向かって走り出す。

 あの化物が触手を向けている方向には一人の男の獣人が構えていた。


 ひょっとしてあの人が元魔王で獣王国の主のカリオンさん?


「ランガさん、魔力の塊ならあたしとルミネで吸収できるわ! このままあの人の前まで行って!」

「う······む、わかった」


 あたしの指示に従うのは嫌そうだったけどそんなことを言っている場合じゃないと判断してくれたみたい。



「―――――――!!!!!」


 化物が触手に集めていた膨大な魔力を解き放ったわ。寸前の所であたし達は化物とカリオンさんの間に割って入った。


「なんだ、何が起きた?」


 化物の放った魔力をあたしとルミネですべて吸収した。

 結構危なかったわね······

 あたし一人じゃ吸収しきれなかったかも。



「······間一髪」

「前にも似たようなことがあったわね」


 以前初めてフラメアさん達に会った時のことを思い出したわ。

 あの時も間一髪で助けたのよね。


「カリオン様、リムル様の命により参上しました」

「お前はリムルの所の······ランガだったな? あの化物について何か知ってるのか?」


 ランガさんがカリオンさんに簡単に事情を説明してくれているわ。

 邪神の眷属は膨大な魔力を放った後だからかまだ動きがないわね。


 それにしても邪神の眷属は魔神型と女性型の2体だって聞いていたけどコイツはどっち?

 見た目じゃ女性っぽいし、魔神っぽくもあるわ。


「邪神の眷属ねえ······まあ細かいことはいい。つまりリムルの奴がこの騒動の責任を取ってくれるんだな?」


 ランガさんの説明を聞いたカリオンさんが言う。

 そういうことでいいのかしら?


「で、アイツらは誰だ? 初めて見る顔だが······どう見ても人族だよな?」

「非常に不本意なのですが······リムル様の協力者です」


 カリオンさんがあたし達を見て言う。

 それに答えるランガさん。


「······? よくわからねえがさっきの攻撃も防いでいたしリムルの協力者ならそれなりに腕が立つんだな?」


 どうやらカリオンさんは細かいことは気にしない性格みたいね。


「―――――――!!」


 邪神の眷属が動き出したわ。

 何か叫んでいるみたいだけど、何て言っているのかさっぱりわからないわ。

 どう見ても友好的じゃなさそうだけど。


 両腕部分の触手をこっちに向けて伸ばしてきた。

 あたし達はそれぞれ回避する。


「······ダークフリーズランス!」


 ルミネが氷の槍を邪神の眷属に向けて放った。

 邪神の眷属は触手を一点に集めて防いだ。


「ダーク·デスフレア!」


 あたしは炎の魔法を撃ち込んだ。

 けど魔法耐性が高いのかあまり効いてなさそうね。



「へえ、さすがはリムルがよこすだけあるな。スゲエ威力の魔法じゃねえか」


 カリオンさんがあたしの横に立ち言う。

 こうして並ぶとかなり大柄な人なのね。

 身長差がありすぎて大人と子供に見えてしまうわ。


「······後はわたし達に任せて。無理しない方がいい」


 ルミネが言う。

 カリオンさんは平気そうな顔をしているけど、すでにかなり消耗しているのがわかるわ。


「そうはいかねえよ、これは俺様の国の問題だ。助っ人に来た奴に全部任せるわけにはいかねえんだ」


 確か獣人って何でも力で解決しようとする傾向があるんだっけ?

 プライドも高そうだし休んでいてと言って聞いてくれる人じゃなさそうね。

 ルミネもそう思ったみたい。


「······ならこれ飲む?」

「なんだそれ?」

「······わたし特製疲労回復薬」


 ルミネが取り出したのは闇魔法で作り出した自作の薬だ。

 テンペスト産の回復薬の入れ物にルミネが調合した薬を入れたものだ。

 飲むのをためらう毒々しい色をしているのよね。


「毒じゃねえのか······それ?」

「······失礼······効果は確か」


 いえ、ルミネ······あたしにも毒にしか見えないわ。


「······初対面の女が差し出す得たいの知れない薬を飲むのは元魔王でも無理なの?」


 ルミネはただ思ったことを口にしただけだろうけど、カリオンさんを挑発しているように聞こえるわ。

 カリオンさんもそう受け取ったらしい。


「はっ、俺様を毒殺できるわけねえだろ?わかったよ、もらってやるぜ」


 ルミネから薬を引ったくるように受け取ったカリオンさんはそのまま一気に飲みほした。


「うげっ······なんだこの味!?」

「······良薬は口に苦し」

「苦い所じゃねえだ······ん? お、身体が···」


 苦々しい表情だったカリオンさんがすぐに意外そうな表情に変わった。

 あの薬、見た目はアレだけど効果は確かなのよね。

 体力が回復するだけじゃなく、一時的に力も上昇するのよ。


「スゲエな······疲労回復どころか力がみなぎってくるぜ」

「······だからそう言った。ただ反動や副作用は心配いらないけど10日くらいは眠れなくなるから」

「そいつは好都合だな。どうせアイツを倒したら後始末で眠る暇なんかなさそうだからな」


 カリオンさんが獰猛な笑みをうかべて邪神の眷属に目を向ける。

 攻撃が来ないと思ったらランガさんが邪神の眷属の気を惹き付けていたのね。


「ついでにその武器も使えるようにしとくわね」


 あたしはカリオンさんの持つ刃先の無くなっていた武器に闇魔法を使って修復した。

 応急措置に過ぎないけど無いよりはいいわよね?

 カリオンさんは驚いたように自分の武器とあたしを交互に見ていた。



 さて、さっさとコイツを倒して魔国連邦(テンペスト)に帰りましょう。











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