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番外ストーリー ~その4~

――――――(side off)―――――――― 


「町のど真ん中に正体不明の石像が現れただと?」


 獣王国ユーラザニアの主にして、元魔王のカリオンはそんな報告を受けて怪訝な表情をうかべた。

 報告者の話だと、何の前触れもなく町の中央に巨大な女神を象ったような石像が現れたという。



「さっさと破壊するなりして処分しろ」

「それが······」


 見た目は神々しい女神像だが、禍々しいオーラのようなものを放っており並みの者では迂闊に近付けないという。


「ちっ、ミリムとフレイが留守の時に面倒だな············まあいい、俺様が処分してやる」


 言うが早いかカリオンはすぐに行動に移った。

 配下の三獣士のアルビス、スフィア、フォビオを連れて町の中央通りに向かった。



 そこにあったのは見上げる程に巨大な女神像だった。

 部下の報告通り、見た目は美しいとも言える女性を象った石像だが、全身の毛が逆立つような感覚を覚える程、禍々しい気配を放っている。



 何故こんなものが前触れなく突然現れた?

 そんな疑問もよぎったが、カリオンにはどうでもいいことだった。


「へっ、誰が何の為に置いたのか知らねえが、勝手に人様の国にこんなもの置きやがって······。壊されても文句はねえってことだな?」


 カリオンが手元に力を集中させる。

 そして女神像に向けて強力な一撃を放った。


 カリオンの攻撃が女神像に直撃した。

 しかし女神像は僅かにヒビが入った程度で吹き飛んではいなかった。


「加減し過ぎたか······? まあいい、アルビス、フォビオ、スフィア! 周囲の奴らを避難させろ、本気の一撃をくれてやる」

「「「はっ!」」」


 三獣士達がカリオンの指示に従い素早く動く。

 巻き添えを喰わないように周囲の人の気配が遠ざかる。


「さて、今度こそ······ん?」



――――――ピシッ


 カリオンが攻撃する前に女神像の亀裂が広がっていく。今頃になって攻撃が効いてきたというわけではない。

 女神像が崩れ落ち、中から何かが飛び出した。


「――――――――――!!」


 声とも言えない叫びをあげて出てきたのは女神像をそのまま人間にしたような姿の女だった。

 反射的に迎え撃つカリオン。


「なんだてめえは?」

「―――――――」


 カリオンの言葉に女は答えない。

 口を開いて何か言っているようでもあるが、まるで聞き取れない。

 謎の女は両手から無数の種のようなものをばらまいた。


「――――――――」


 種は(いびつ)な生物へと変化していく。

 あっという間に周囲は気味の悪い魔物で溢れていた。


「―――――――」


 女が何かを指示したように魔物達は周囲の人々に襲いかかっていった。


「何者か知らねえが俺様の国に喧嘩を売るつもりだな? 面白え、受けて立ってやるぜ」


 カリオンの口元に笑みがうかぶ。

 愛用の武器である白虎青龍戟を取り出し構えた。

 以前にミリムとの戦いで消失した物をより強化して復元していた。


 相手が何者かは知らないが手加減するつもりなど毛頭ないようだ。


「アルビス、スフィア、フォビオ! 全軍の指揮はお前らに任せる、周囲の被害は気にしなくていい! 町なんざ、また建て直せばいい! 人的被害を出さねえように魔物どもを排除しろ! 俺様はコイツの相手に集中する。邪魔させるんじゃねえぞ!」


 カリオンの言葉を受け、三獣士達が迅速に動く。

 種から変化した魔物は翼を生やしていたり、無数の触手を持っていたりなど様々なタイプがいる。

 カリオンから見てもかなりの力を秘めた魔物も何体か確認できた。



 だが、迎え撃つのは歴戦の戦士である獣人達だ。

 カリオンは心配などまるでしていない。

 魔物どもは他の連中に任せ、目の前の女に集中する。


「―――――――!」


 謎の女が魔力の塊をカリオンに向けて放った。

 カリオンは素早くそれを避けた。


「ミリムの奴がいなくてよかったぜ。あいつがいたんじゃすぐに終わって俺様が楽しめねえからな」


 謎の女からは禍々しい気配とかなりの魔力を感じる。久々に本気を出せる相手にカリオンは獰猛な笑みをうかべた。



「――――――――!」

「俺様に喧嘩売ってきたんだ、精々楽しませろよ!?」


 謎の女とカリオンの攻撃がぶつかり合う。

 女は腕を鋭利な刃物のように変化させ、カリオンと打ち合っていた。

 変幻自在な動きでカリオンを翻弄しようとするが、百戦錬磨のカリオンにその程度の小細工は通用しない。




 どれほどの時間が経ったか。

 互角と思えた戦いの均衡が崩れた。

 カリオンの攻撃が女の右腕を斬り飛ばした。

 しかし右腕を失ったにもかかわらず女の表情に変化はない。

 何も感じてないかのような無表情のままだ。


 女の傷口と右腕からは血は流れず、黒い煙のようなものが吹き出ていた。

 女は失った右腕を元通りに再生した。

 どうやら自己再生能力を持っているようだ。


 そして斬り飛ばされた右腕は黒い煙が纏わりつき、新たな魔物へと変化した。


「おっと、あぶねえな」


 女の右腕から生まれた魔物がカリオンに襲いかかる。カリオンはそれをなぎ払い撃退した。


「――――――!」


 カリオンの隙を突き、女が攻撃を放つ。

 女の両腕から膨大な魔力の塊がレーザーのように放たれた。

 カリオンは間一髪で避けるが、レーザーが通った場所は地面が消滅したように抉れ、悲惨な光景になっていた。



「あーあ、こりゃフレイあたりに留守もろくに守れないのかとネチネチ言われそうだな」


 カリオンが周囲を見渡し苦々しい顔で言う。

 気楽そうな物言いとは裏腹に目の前の女の力に驚嘆していた。

 こいつは手加減など考えている場合じゃないと。


「俺様の本気を見せてやるぜ」


 カリオンは切り札とも言える〈百獣化〉を使い、本気の戦闘形態となった。


「―――――――!」

「ようやく反応らしい反応を見せたな?」


 女はカリオンの形態変化を目にして明らかに警戒態勢に入っていた。

 今までとは違い表情にも僅かに変化が見られる。


「―――――――――!!」

「さて、お前との戦いはなかなか楽しかったがこれで終わりだ。せめて一瞬で消してやるぜ······獣魔粒子咆(ビースト・ロア)!!!」


 カリオンが自身の最強の一撃を女に向けて放った。

 この技を対個人で使用するのは2度目だ。

 周囲の被害を抑えるべく範囲は絞り、対象は確実に捉える。


「―――――――!?」


 カリオンの放った攻撃が女を呑み込む。

 回避することも出来ないまま女は声にもならない声をあげた。


「へっ、何者かは結局わからなかったがこれで終わりだな············ん?」


 勝利を確信していたカリオンだが表情が変わる。

 直撃を受けたはずの女がまだ目の前に立っていたからだ。

 身体中から黒い煙をあげ、ボロボロの満身創痍だがまだ生きていた。


「マジか······あれを喰らって生きてんのかよ。俺様の最高の一撃だってのに自信無くしちまうぜ······」


 カリオンも技を放った反動で少しふらついていたが、構え直した。

 愛用の武器も今の技の反動で刃先が消失してしまっていたが、そんなことは関係無い。

 今度こそトドメを刺すべく動こうとしたが······


「―――――――――!!!」


 女の身体から出ていた黒い煙が魔物へと変化していく。

 何十、何百と現れてきた。

 そして女は両腕を触手のように変質させ、自ら生み出した魔物を取り込み吸収した。

 魔物を吸収した女は全身が変質し、巨大化していく。



「―――――――――!!」


 初めの女神像と同じくらいまで巨大化していく。

 だがその顔は悪鬼のような姿となっていた。


「自分で生み出した魔物を自分で喰うってありかよ······?」


 呆れたような声でつぶやくカリオンだが状況はかなりまずい。

 女は巨大化して姿を変えただけでなく身体の傷も回復していた。


「――――――――!!!」


 女······もはや女とは呼べないような異形の姿となった()()は両腕の触手を一点に集め、魔力をそこに集中させる。

 尋常ではない魔力が込められているのが見ただけでわかるほどだ。

 放たれればカリオンどころか獣王国そのものが消滅してしまうだろう。


「ちっ······ミリムの時のような二の舞は御免だぜ。二度と俺様の国を消させるかよ······!」


 カリオンも自分を奮い立たせ、ありったけの力を集中させる。

 しかし一度獣魔粒子咆(ビースト・ロア)を撃った反動で先程の威力は望めない。


「―――――――!!!!!」


 触手に集められた魔力がカリオンに向けて放たれた。

 反応が一歩遅れたカリオンはまだ攻撃態勢に入れていなかった。

 ほぼ無防備状態でカリオンは迎え撃とうとするが······



――――――――――!!!!!


 カリオンの前に何者かが現れ、膨大な魔力の攻撃を防いだ。

 魔力の塊は吸収されるかのように消えていった。



「なんだ、何が起きた?」


 カリオンが目の前に視線を向ける。


「······間一髪」

「前にも似たようなことがあったわね」


 そこにいたのは黒嵐(テンペスト)星狼(スターウルフ)に跨がった二人の少女だった。
















原作で私の好きなキャラクターはカリオンにゲルド、次点にランガです。

彼らを出したいがためにこのストーリーを作りました。

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