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悪魔の気まぐれ



(ルミネside)


 わたし達は逃げるようにフラメア達から距離をとった。フラメア達は本心からわたし達を心配してくれてる。

 ······それはわかる、けど············


「ふふ······ルミネ············あたし達なんでこんなことになったんだっけ?」


 シアンが目に涙を溜めながら言う。


「あたしは······ただささやかな幸せが欲しかったのよ······。貧しくてもいい······家族と······普通に笑いあえるくらいの······それってそんなに大それた願いだったのかな······?」


 そんなこと······わたしが聞きたい。

 わたしだってハルトがそばにいてくれるだけでよかった。

 裕福な暮らしなんていらない。

 ただそれだけでよかったのに············


「フラメアさんの言葉を受け入れて······手をとれば幸せは来るかもしれないのに······それを自分から拒んで······本当······バカよね······あたし達·········」


 ······返す言葉が見つからない。

 きっと、もうわたし達には幸せになる資格すらない。


「ふふ、ふふふっ············あはははははっ!!!」


 シアンが大声で笑った。

 涙を流しながら笑い続けた。

 無理矢理笑わないと······きっと耐えられないから。


「ルミネも泣いたら······? ほんの少しだけど······

スッキリするわよ」

「······わたしはいい。涙は······真実を知ったあの日に······全部流したから」


 もうわたしは一生泣かない。

 そう誓ったから······あの日に。

 もっとも、わたしの一生はもうすぐ終わるだろうけど······


 ハルト······待ってて、もうすぐ行くから············

 こんな汚れきったわたしだけど······どうか受け入れて。









(リムルside)


 シアンとルミネの対策の会議を終え、一息つく。

 俺の方針を皆に話した。

 二人を説得する。その方向で動くと。



 7日後、二人を迎え撃つ面々は厳選した。

 無闇に攻めても彼女達に喰われて更に力をつけられる危険があるからだ。

 ベニマルとシオンが前に出て二人を抑える。

 他の面々は後方から援護と住人の避難と守護だ。


 ディアブロなど悪魔勢は万が一のために待機だ。

 ············というより悪魔勢を出すと二人を殺しかねないからな。



「甘いと思うか? 二人を殺さないと決めた俺を」


 会議が終わり、解散してそれぞれが持ち場に戻った。俺は残ったベニマルに言う。


「いえ、俺たち元オーガ勢もリムル様が殺さないよう配慮してくれたから、今こうしてここにいますからね。リムル様が決められたことを支持しますよ」


 そうだったな。

 ベニマル達も当初は俺を仲間の仇だと思い、殺しにきてた。

 俺の説得にも耳を貸さず、本当に大変だった。

 だが今はこうしてここにいる。


 今ではこの国になくてはならない人材だ。

 あの時殺してしまっていたらこの魔国連邦(テンペスト)はなかったかもしれない。


「しかし······本当に説得なんて可能なんですか? 俺の場合は誤解でしたが彼女達の復讐は誤解じゃない······。非は向こうにあるとはいえ、向こうもそれは承知している。············どうするんです?」


 それについては考えがある。

 しかし、現状では懸念材料が多いんだよな······



「リムルさん······」 「リムル様······」


 エレンとフラメアが落ち込んだ様子で入ってきた。

 カバルとギドも後ろから続く。


 何かあったのかと聞くとシアンとルミネを追いかけ説得してきたという。

 だが二人はフラメア達の言葉にも応じなかった。


「リムル様······お二人を、シアンさんとルミネさんをどうするおつもりですか······? やはり敵として殺してしまわれるんですか?」


 フラメアが心配そうに聞いてくる。


「············安心しろよ、俺は二人を殺す気なんてない。必ず説得してやるさ······二人を救う」


 そのための方法にも考えがある。

 ただシアンの言葉を信じるなら時間はあと7日間······

 間に合うかどうか·········



『説得できんのかね~? オレ様には無理だと思うが』


 例の悪魔が空間からニュッと姿を現す。


「············まだいたのかお前」


 神出鬼没な奴だ。


『そんな顔すんなよ、邪魔する気なんてねえからよ。まあ存在自体が邪魔だって言われたらどうしようもねえけどな、ヒャハハハハッ!』


 相変わらず楽しそうにしやがって。

 まあ、何かするわけでもないならいいか。


『それよりも救うだなんだ言ってたがアレか? 楽にしてやる、救いを与えるとかいって結局やることは同じ、要は殺すってことか?』


「ちげーよ。言っただろ? 殺す気はないってな。文字通り救ってやるってことだ」


 二人を憎しみから解放してやる。

 もちろん殺すって意味じゃない。


『へえ、自信あるのか? ならこれを見ても同じこと言えるかな?』


 悪魔がそう言うと空間から何かを取り出した。

 見たことある形だ。

 あれは······大画面の液晶テレビか?

 なんでそんなものを持ってるんだ、コイツ。


『こいつは過去の出来事を映し出す魔道具だ。これであの女共の過去を見せてやるぜ』


 過去の出来事を? そんなことが······

 コイツ本当に何でもアリだな。

 多分これを使ってシアンとルミネに俺と旧ファルムス軍の出来事を見せたんだな。


「シアンさんとルミネさんの過去············ですか?」


 フラメアが悪魔に問う。


『ああそうだ、あの女共の憎しみの元、大切に想ってた人間がどんな奴なのか、全部見れるぜ?』


「なんで俺達にそれを見せる? なにか見返りが欲しいのか?」


『んなもんいらねーよ。あいつらの過去を見てお前らがどんな反応するか見たいだけだ。出血大サービスだよ』


 コイツ、本当にそれだけなのか?

 だとしたらどこまでもふざけた奴だ。


『一応聞いてやるぜ、見たいか? これから殺さなきゃならなくなるかもしれない奴らの過去だ。知っちまったらますます殺しにくくなるぜ?』


 どうやら本当に俺達の反応を見たいだけらしいな。

 だが、なら願ったりだ。

 二人の憎しみの元、見させてもらおうじゃねえか。


「殺さねえって言っただろ? 見てやるぜ、二人の過去を」


 俺の言葉に悪魔はニッと笑う。

 他の面々、特にフラメアとエレンは興味津々だ。



『じゃあ見せてやるぜ。さあ、お涙頂戴劇場の始まり始まり~ってな。ヒャハハハハッ!!』






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