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異世界を鍛えた武術と最強の能力で渡り歩く  作者: アリクイ
第1章 世界は変わり生命は軽く
5/6

怪力無双

初クエストなので、初投稿です。

 ゴォーン…ゴォーン…

 荘厳な鐘の音が、遠くから響いてくる。


「ん、んん…知らない天井だ。」


 1度言ってみたいと友人が語っていた言葉を口にしてから、ベッドから出て、身支度を整える。


 コンコンコン

「宗一殿、起きてございますか?もう朝食が出る刻でございますよ。」


 ちょうどいいタイミングで、マヤが呼びに来てくれたようだ。


「ああ、すぐ行くよ。先に行っててくれ。」


「そうでございますか。では、私はお先に食堂へ行っているでございます。」


「ああ、そうしてくれ。」


 そうして、身支度を整え終えた後1階の食堂へ行く。


「宗一殿!ここでございます。」


 マヤが席を取っておいてくれたようだ。


「おはよう、マヤ。朝から元気だな。」


「おはようございます。宗一殿。」


 挨拶を交わしながら席に着くと、ミツバちゃんが料理を手にやってくる。


「おはようございまーす!今日の朝食は、瘤猪定食でーす!」


 そう言いながら配膳してくれたのは使っている材料は同じものだが、昨日とはガラッと変わって和風な定食だった。


 粒のたった玄米と、味噌汁、それに生姜焼きのようなものがおかずになっている。


 そのラインナップは、時代は違えど確かに日本人が作った国というのを感じさせるものだった。


「朝食も美味そうだな。」


 いただきます。

 そう言ったが最後、飯を食い終わるまで独り言すらつぶやかない時が流れた。


「ふぅ、ごちそうさま。」


「ごちそうさまでございました。」


 その味はまだ離れて1日しかたっていないのに関わらず、懐かしさを感じさせるとても美味しいものだった。


「さて、飯もくったことだがこれからどうするんだ?」


「はい、宗一殿には現在先立つものが無さすぎる状況にあるのでございますよ。ですから、これから簡単なクエストを行いつつ、装備を整えようと思うのでございます。」


「確かにそうだな。しかし俺はこれが一張羅だぞ?防具もなければ武器もないが、クエストを受けても大丈夫か?」


 心配なのは不測の事態だけではなく純粋に防御力が足りないのではないかと思う。


「その格好で3体も魔物を倒しているのでございますよ?大丈夫だとは思うのでございますが、心配なようでございましたら防具だけでも私が用意しておくのでございますよ。」


「ああ、かなり頼り切りになってしまうけどお願いしていいか?」


 さすがに申し訳なく思うが命には変えられない。


「いやいや、いいのでございますよ。それにまだ、戦えぬと決まった訳ではございません。何せまだ宗一殿は祝福(ギフト)を試してすらいらっしゃらないでございませんか。」


「ああそうか、確かにそうだったな。」


 そう、まだ俺は祝福(ギフト)の詳細を知っただけで使い心地やどれだけのものなのかは未知数なのだ。


「じゃあまずは、ギルドへ行ってクエストを受けてくるか。というかマヤは一緒にクエスト受けて予定とかは大丈夫なのか?」


「あと2日ほどなら大丈夫なのでございますよ。でございますから、少し急いでいるのでございます。大丈夫だとは思うのでございますが、やはり早急に宗一殿の戦い方というものを見つけて下さらねばせっかくの武術が簡単に潰えてしまいかねないでございますから。」


「はは、そうか。戦い方か。」


 俺の持ち味はこの日本にいた頃より遥かに強い体と冴え渡った日本拳法の技、そして強力な祝福(ギフト)だ。

 この祝福(ギフト)がどれほどのものかでこれからの戦い方が変わってくるだろう。


「なら早速ギルドに行かなくちゃな。」


「そうでございますね。早速出発と行くのでございます。」


 そしてギルドについた俺たちは早足にクエスト受付へいった。


「はい、こちらクエスト受付窓口です。ギルドカードをお見せして頂ければ、ランクにあった推奨クエストを紹介いたします。」


 受付にいたのは普人族の女の子だった。ギルド職員は普人族の方が多いのだろうか?そう思いつつギルドカードを渡す。


「これで、お願いするよ。」


「私も共にクエストを受けるのでございますので、多少推奨ランクを上げてもいいのでございます。」


 そう言いながら横からマヤが差し出したギルドカードは、金に輝いていた。


「はい、承りました。」


 それを見た職員は手元を見て作業しだした。


「え?マヤって金級(ゴールド)だったのか?」


「そうでございます。金級(ゴールド)のⅠなのでございます。」


「かなり凄いじゃないか。普通に俺より強いんじゃないか?」


 金級(ゴールド)と言えば昨日の説明でも上から数えた方が早いランクだったはずだ。


「いえ、残念ながら恐らく負けてしまうかと思うのでございます。」


「え?どうしてだ?」


「精査が終了致しました。金級(ゴールド)ランクの方がいらっしゃいますので、推奨ランクを銅級(ブロンズ)のⅢとさせて頂きました。こちらが今回の推奨クエストです。」


「おっと、理由は道中にするでございますよ。」


「ああ、そうしようか。」


 職員の前の棚に、3枚の紙がおかれている。


 右からブラックハウンドの討伐、ブラッドバイパーの討伐、暴走した黒牙熊の討伐とある。


「どれがいいんだ?」


「そうでございますね。では全て受けるのでございます。」


 マヤがかなり無理があることを言う。


「うえっ?!さすがに3つは今日中に終わらないぞ?」


「ははは、宗一殿。期限を見るのでございますよ。今日中に終わらせるのではなく、1週のうちに終わらせるのでございます。

 討伐者は暴走した動物の討伐など1度限りが多いクエストをメインのクエストとしてその道中に魔物を狩ることが多いでございますので常に2、3個のクエストを受けるものなのでございますよ。クリアしたものから新しいクエストを受けておくのが普通なのでございます。

 まぁ、私はクエストを受けずに森にて魔物を追う事ばかりしてございましたけどね。」


「へえー、そうだったのか。なら問題ないか。」


 1日で終わらせるようなスパルタレッスンじゃなくて心底良かったと胸をなでおろした。


「では、この3つのクエストをお受けしますか?」


「そうだな、お願いするよ。」


「お願いでございます。」


「はい、受理致しました。こちら、ギルドカードをお返しします。行ってらっしゃいませ。」


 さぁ、初クエストだ。どうなる事やら。


 ――――――――――――


 クエストの道中、さっき聞き損ねた理由を尋ねた。


「そう言えば、俺に勝てない理由ってなんだったんだ?」


「それはでございますね。まず1つ目に、膂力が及ばないことがございます。推測でございますが、現在でもギリギリ互角と言ったところに数倍になるであろう祝福(ギフト)の力を合わせると、私の膂力では到底対抗できなくなるのでございます。


 そして2つ目に、祝福(ギフト)の相性にございます。私の祝福(ギフト)は魔力を貯めて攻撃を無力化し貯めた魔力で反撃する能力でございます。これは所謂、魔法攻撃となり魔力による反撃が宗一殿の天衣無縫の鎧によって低減されてしまうのでございます。


 そして3つ目に私に遠距離攻撃手段がないことがございます。宗一殿は炎も操れるはずでございます。つまり遠距離から貯めた魔力を削られてしまえば、後に残るは膂力に劣る生身のみとなり、負けてしまうであろうという寸法なのでございます。」


「そうかぁ?まぁ言わんとすることは分かるがそう上手くは…。」


 ピタッ


「宗一殿。」


「ああ、何かいるな。動物の声が聞こえない。」


 ガアアアアアアアアアアアア!!!


 静かな森がさらに静けさを増した時。不快な咆哮が響き渡り、魔物の群れが姿を現す。


「ブラックハウンド!なんて群れでございましょう!」


「昨日の狼か!この数、10体やそこらじゃないぞ!」


「どこかで瘴気溜まりでも発生したのでございましょう!ここはぶっつけではございますが祝福(ギフト)の発動を!」


「ああ!分かった!犬っころ共ッ!!征くぞッ!


 怪力無双(かいりきむそう)!」


 そう叫んだ直後、体を炎が包み込み燃え盛る。

 炎はそのまま周りの数匹の狼を燃やしながら広がり、また俺の周りに収束しだした。


 そうして出来上がったのは、炎でできた真っ赤な当世具足。兜は鬼の角が雄々しく突き上がり、体を覆う鎧は刺々しい形をしている。面頬は険しい鬼の顔を様している、まさに鬼武者。それだけでは無い。


「これは…天衣無縫の鎧が変化したのか。それに力がグングン湧いてくるようだ。今なら富士山だって打ち砕けそうだ。」


 そう、その圧倒的力は己に砕けぬモノ無しと言うような万能感を与えていた。


「素晴らしいでございます。ここまでの祝福(ギフト)は四代氏族でも、そうはいないほどのものでございますよ!」


「そうなのか。よし!これなら!」


 束になって襲いかかってきていた不気味な狼(ブラックハウンド)へ向けて拳を振り上げ一歩踏み出す。

 そして、全てを巻き込むように斜打を用いて波動拳なしでぶん殴る。すると、


 ドガァン!


 交通事故でも起きたかのような音を出し、複数体の狼の頭を一気にぶち抜いた。

 ぶち抜かれた狼は即座に霧散し、魔核だけが残る。


「結構やれるじゃねぇか、俺。」


 その後ろではマヤが脇差ほどの長さの刀で着々と狼を討伐している。


「マヤもやってるな。俺も気合い入れていくか!」


 その時、心まで若い頃に戻ったかのようだった。心が体と合わさる感覚。

 飛びかかってきた狼に胴蹴りし、腹をぶち抜く。

 体勢を低くしながら、近づいてくる狼を面踏み蹴りで蹴り潰す。

 後ろから襲ってくる狼を外打で破潰させる。

 同時に飛びかかる狼の片方を投げて、もう片方にぶつける。

 次々と襲いかかってくる狼を埒外の膂力と冴え渡る技で征圧する。

 時間を忘れて、自らの限界を探っているとふと周りにもう狼がいないことに気がついた。


「終わったか。かなり多かったな、周りが魔核だらけだ。」


「素晴らしい…素晴らしい武術でございました。人型を相手とし、打ち崩すことを求めた物はこの世界にはあまり無いものでございますが、殴る蹴る投げる全てを高水準で行う素晴らしい武術でございました。そして恐ろしい膂力に身を任せるのではなく、それを扱いこなすその技術は私では足元にも及ばない極まった武がございました。」


「はは、そこまでべた褒めされるとさすがに恥ずかしいな。そんなことより魔核を集めようぜ。昼になっちまうよ。」


「そうでございますね。集めてしまうのでございます。」


 そうしてしばし無言でそこら中に散らばった魔核を集めていく。


「ひいふうみい…34個か。随分いたんだな。」


「どこかの瘴気溜まりで大量に発生したのでございましょう。恐らく暴走した黒牙熊も、同じ瘴気溜まりのせいでございますよ。」


「瘴気溜まりねぇ。ま、早いとこその黒牙熊を狩って帰るとしようぜ。魔核はたっぷり手に入れたんだしな。」


「油断は禁物でございますよ。ここまで大きな群れができるほどの瘴気溜まりなら、黒牙熊が魔物化している可能性がございます。」


「魔物化したらどうなるんだ?」


「黒牙熊が魔物化すれば瘴気の濃度によるのでございますが、最低でも幽霊級(ゴースト)の上位。下手をすればいきなり狂霊級(レイス)の中位の魔物になることがあるのでございます。そうなれば、推奨ランクは金級(ゴールド)のⅡから、私には少し荷が重くなるのでございます。」


「そりゃあ、かなりやべぇな。さっさと目撃箇所に行って、魔物化する前に仕留めないと。」


 さすがに初めてで自分より強いであろうヤツを相手にするのは命が危ない。


 無事に帰るためにもさっさと見つけ出さなくては…。

その姿、鬼武者につき。

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