プロローグ~転生編~「神に期待した僕がバカでした」
目を開けると、目の前に仙人のような格好をした老いぼれた爺さんが現れた。
「うわっ!なんなんすかアンタ!?」
驚いて叫んだ俺に怒るように横から声が聞こえてくる。
「ちょいちょいそこのキミ!神サマに向かってアンタとは失礼ダナ!」
右を向くと天使のような羽の生えた幼女が怒っていた。
この爺さんが神様?ということはここは死後の世界なのか。
何ということだ、やはり神は実在したのだ!
そして今俺に話しかけてきたこの天使はどうやら神の使いのようだ。
「ウツダ・コウセイよ、異世界転生してみないか!」
神が口を開けたかと思えば、いきなり聞き慣れない言葉が出てきた。
「異世界転生?」
神が言うには異世界とは俺が生前居たのとは別の世界で無限のように存在し、そこで新たな生命として人生をやり直すことを異世界転生といい、年間500人もの死者が成仏より異世界転生することを希望し、新たな人生を希望した異世界で過ごしているらしい。
異世界の文明はそれぞれ発達の仕方が異なり、中にはゲームのRPGのような魔王に支配された危険な世界も存在するとか…
しかし意外にもその魔王に支配された世界が人気で、そこに転生した元死者たちは魔王を倒すために日々冒険してるようだ。
「ウツダ・コウセイ、お主も魔王に支配された世界を救う勇者となり、
ピチピチギャルにモテモテのハーレムを築きたいじゃろ?」
神の魅力的な誘惑に一瞬いやらしい想像をしてしまった。
しかし自分の中でもう答えは出ていた。
魔王から世界を救う勇者?モテモテのハーレム?
そんなことを俺は望んでいない。
俺はサッカーがしたいんだ。
これから全国大会で名を上げてプロへの入団を夢見ていた。そんな時にこれだ…
もう一度サッカーがしたい、それだけなんだ!
「神様、もしもなんだけど…
サッカーが盛んな異世界があったらそこに転生してもらえないすか…?」
無謀な要望なのは分かっている。
さっきの神の話でどの異世界も現世ほど文明が発達していないのは知っていた。
サッカーの歴史が150年もあるといっても人類史の中では最近もいい所だ。
サッカーが盛んな異世界なんてある訳がない…
それでも聞かずにはいられなかった。
「なんじゃ、そんなことでいいのか、あるぞい。」
神の返答で俺は叫んだ。
「うぉおおおおおお!!やったああああああ!!いええええええええい!!」
マジであるのか…何でも聞いてみるものだな。
歓喜でテンションがおかしくなってる俺はそこに転生してくれと神に催促した。
しかし天使の横槍が入いる。
「えー!ナンデー!!
魔王を倒して女の子にモテモテの方がいいでしょー!ハーレムだよハーレム!
男だけのムサ苦しい学校に居たんでしょー!
もしかしてお尻撫でられても抵抗しなかったし、ソッチなのソッチなのー!?」
何で男子校通ってたことだけじゃなくお尻のことまで知ってんだ、そして変な勘違いをするな。
後輩に喰らわせなかった分の脳天チョップをこいつの頭の上に浮いてる輪っかごとお見舞いしてやりたかったが必死に堪えた。
「まぁまぁ好きにさせてやれ。
希望の世界に転生させてやろう。
ただしその世界には既に先客がいるということを忘れるでないぞ。」
神の言葉で再び歓喜のテンションに戻った。
しかし何か注意事項を言っていたな。
まぁいいや、希望の世界に行けるなら今は何でもいい。
「では転生させるぞ。」
そう言って神は右手に持っていた杖を俺の方に向けた。
天使はその短い腕を精一杯振りながらバイバイしていた。
来るんだな…ウズウズしながら転生するその時を待っていた。
そして・・・
「イカラ、ヤモテトハ、イパツオノ、ヤチエナサーーーーーーー!!!!」
神は訳の分からない呪文を唱えた。
すると俺の身体が足の方からどんどん消え始めた。
どうやらテレポーテーションで異世界に運ばれるようだ。
そして首から上の部分が消える次の瞬間、俺は見知らぬ大地を踏みしめていた。
・・・はずだった。
・
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「姫様、お背中をお流しします。」
「ああミアか、頼む。」
「ついに明後日開幕ですね。」
「帰って来たんだ。あの舞台に。」
「今年こそ残留できるでしょうか。」
「きっと出来る。今年はお前がいるからな。」
「そんな…姫様。」
「さて、湯船に浸からせてもらうぞ。…ん?」
『『バシャーーーン!!!』』
神の呪文でテレポーテーションされた俺は暖かい水の中に飛び込んでしまった。
「ブハーッ!!」
慌てて水面から顔出し酸素を吸収した。
あの神め、何てとこに飛ばしてくれてんだ。
心の準備なしで水面に潜ったため、ショックで危うく溺れ死ぬところだったが、皮肉にもこの水面に顔を出そうとするもがきが生き返ったという実感を与えてくれた。
半身浸かったまま立ち上がり疑問を抱く、ここはどこだ?
今浸かってる生暖かい水、体感的にこれは35℃くらいだろうか。
「あ…」
周りの湯気が薄くなるとそれに気づいてしまった。
そこには金髪でグラマラスな女性が裸で立っていた。
「ひゃああああああああああああ!!」
相手も気付き悲鳴を上げた。
何てことだ、ここは女湯で女性の裸体を思いっきりガン見してしまった。
これでは俺が変態扱いされる、何とか言い逃れをしなければ!
「いや、違うんだ!
俺は男にしか興味がないんだ!
だから変態じゃない!!」
「寄るな変質者!!」
『『ボコッ!!』』
必死の言い逃れも虚しく、金髪女性の局部を隠しながらの前蹴りが俺の頬に直撃した。
さらに!
「姫様から離れてくださいっ!!」
『『ゴボッ!!』』
奥にいたもう一人の銀髪の少女にタライで顔面をブン殴られ完全にダウンしてしまう。
辛うじてダウンする瞬間に頭の中で思ったことはハッキリと覚えてた。
「こっちの子はまな板だ・・・」
こうして俺の異世界での第二の人生は波乱の幕開けとなったのだった・・・