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とあるパーティーの冒険譚  作者: 狗山犬壱
とある冒険者の受難
3/11

第3話 自由都市カナード

あの後、シーナに連れ回された結果、本人の希望もあって街の案内をする事となった。


「わぁ……! すごいです!見たことのないお店ばかりです! 」


「にゃはは! レナ、目がキラキラしているにゃ! 」


 シーナの奴に連れられて来たのは港地区にあるバザール。ここでは他の国から商いに来た商人が露天を開いている。


「この街、カナードは海洋航路の中継地点だからな。他国からの商船が補給と商いの為に逗留しているから色々と珍しい品が出回っているのさ」


「そうなんですね……すごいなぁ」


「王都にだって、これに負けないくらいのバザールがあっただろ? 行ったことないのか? 」


俺がそう言うと、レナは少し寂しげに笑い


「……私、少し事情があって王都にあるお屋敷からあまり出た事がないんです。」


「訳あり、か」


「あ、あはは、そんなに大層な理由じゃないんですけどね」


 貴族のご令嬢、それもレナードが言うには相当身分が高いとのこと。ギルドでの話や、今のを聞くに随分と寂しい思いをしていたのだろう。


「……なぁ、レナ。あのさ」


「レナー!! こっちにゃ! サンマドッグの屋台はこっちにゃー!」


「あ、はい!今行きます! えっと、ライさん?」


「あー……何でもない。行こうぜ、シーナの奴が待ちきれないみたいだ」


 いかん、いかん。俺の今すべきことはレナが冒険者として独り立ち出来るまでのサポートだ。この子の境遇に同情することじゃないだろ、距離感を間違えるな


「やっと来たにゃ! レナ、見て見て! これがサンマドッグにゃー!」


「これがサンマドッグ……」


 米粉から作られた生地のシンプルなコッペパンに、新鮮なシャキシャキのレタス、焼きたてのサンマを挟み、魚醤ベースに香草と数種類の香辛料をブレンドした特製ソースをたっぷりとかけたカナードのご当地グルメ……それがサンマドッグ


「見た目は中々シュールだが、まぁわりと美味い。小骨が面倒だけどな」


「そこは骨ごとバリバリ食べるのがクールにゃ! 」


「いや、意味が分からん……って、おいおい、レナ。無理すんなって」


 シーナの言う通り骨ごと食べたのだろう。半泣きになりながらゆっくりと咀嚼しているが、正直痛そう


「むぐぐ……く、口の中に骨がぁ……」


「にゃはは! レナ、面白い顔にゃー! ……うにゃっ!?」


「お前はちょっとは自重しろ! バカ猫! 」


 あまりに自由すぎるこいつにちょっとイラっとしてしまったので、つい手が出てしまった。頼むからホント自重してくれ、俺の命が懸っているんだからさ


数時間後


 一通り街の案内が終わり、夕飯を食べるべく俺達はギルドの裏手にあるパドメの酒場に向かっていた。

挿絵(By みてみん)

「お、来たね。いらっしゃい二人とも、いつもの席は空いているよ。あれま、珍しいね今日はもう一人いるのかい? 」


 恰幅が良い青髪のエルフーーパドメが俺達を迎えてくれた。この酒場は下手な食堂よりも美味い飯にありつける。しかも値段はリーズナブルで、金のない初心者冒険者には更に割安で飯を提供してくれる。


「ありがとう、パドメ。こっちの子はしばらくの間預かることになった見習いのレナだ。レナ、この人はパドメ。ここの女将だ」


「は、はじめまして! レナと言います! よろしくお願いします! 」


「はいよ、元気な挨拶ありがとうね。真面目そうで良い子じゃないか、ライ。」


「はは、だろ?おい、シーナ?……あれ? 」


あれ? さっきまでレナの横にいたはず。いったいどこに……


「おばちゃーん! 日替わり魚定食! 」


「って、おい。まだ挨拶している最中だったろうが」


「えー! だって、お腹が空いたにゃ! 」


なんと言う自己中……流石は猫。仕方なくレナと二人でシーナのいる席に向かう。


「シーナは日替わり魚定食だね。二人は何を食べるんだい?」


「俺はキノコのラタトゥイユとミノ・タウの串焼きを3本。レナはこの店初めてだから、メニューを持ってきてやってくれ。」


「はいよ。レナちゃん、うちは何でも美味しいから楽しみにしてな?」


「そうなんですか?わぁ……何を食べようかな? 」


「あっはっはっは! おまけしてあげるから楽しみに待ってな!」


「はい! お願いします! 」


 パドメは豪快に笑うと厨房へと消えていった。相変わらずエルフのわりに恰幅が良いな、あの人。本人いわく、昔は傾国の美女としてブイブイ言わせてたらしいが……


「さて、メシが来るまで時間があるから明日以降の予定を決めておこう。レナ、聞いておきたいんだが、見習いのクエストはどれくらいまで進めている?」


「えっと、基礎のクエストは終わっています。師事させていただいたシルビア先生からは【サフィール】様の遺跡を巡礼するよう言われています。」


「【詩吟神巡礼の儀】か。と言うことはそれほど時間はかからないな」


「??? しぎんしん、ジュンレイ?」


まぁ、普通は分からんよな。俺も知り合いの吟遊詩人に偶々教えてもらっただけだし


「吟遊詩人を志す者が必ず行う儀式だよ。歌舞演曲を司る4人の女神の内、自分が信仰する女神の遺跡を巡礼し、女神から加護を授けてもらうんだよな?」


「はい。私の場合は【歌】の女神、サフィール様を信仰していますので、アルスト王国南西にある【蒼歌の遺跡】へと巡礼することになります。」


 この世界には神が実在する。それこそ現在進行形で俺達の動向に目を向けているらしいが、俺はどちらかと言えば精霊信仰寄りだ。まぁ、必要以上に崇めたりはしていないが

「うにゃー……むつかしいことは分かんないにゃー」


「とりあえず、次のクエストは遺跡だってことだけ覚えとけば良いさ。あ、それからお前が前に言ってた魚釣りのクエストは帰りの道中にやるから釣り竿を忘れるなよ?」


「にゃっ!? 魚釣り!? 」


「ああ、約束してたからな。明日にでもセルシオに言って受けてくるよ。」


「やったにゃー!! 魚釣り♪ 魚釣り♪ 」


スゲー喜び様だな、こいつ。どんだけ魚好きなんだよ、まさしく猫まっしぐらってか


「ふふ、シーナさん嬉しそうですね」


「基本的に行動原理が猫だからな。本能に忠実なんだよ」


「何だか可愛いですね。私、釣りってしたことないんですけど……出来ますかね? 」


「どうだろうな。ま、何事も経験だ」


「アタシが教えてあげるから、一緒にやるにゃ! 」


「うん!……じゃなくて、はい!」


 まだ会ったばかりだってのに随分と仲良くなったもんだ。こういう時、シーナの無邪気さが羨ましくなってくるな。


「待たせたね。ご注文のキノコのラタトゥイユとタウ・ミノの串焼き、それから日替わり魚定食だよ。」


「にゃー!! 待ってましたにゃー!」


「あっはっはっは! そんだけ喜んでくれるならこっちも作り甲斐があるってもんさ! そっちのお嬢ちゃんはなに食べるか決まったかい? 」


「あ、はい! 私はこの鴨肉のキッシュをお願いします! あと、デザートにアップルパイを一つ」


「はいよ。パイの方は少し時間がかかるから、それまではこれでも摘まんでておくれ。こいつはサービスだよ」


少しハーブの甘い香りがする。これはハーブクッキーか


「あ、動物の形しています! 可愛い」


「あー! レナ、良いなー! 」


「ふふ、後で一緒に食べましょう? ライさんも一緒に」


「ああ、ありがとう。これ食ったら貰うよ」


明日から色々と大変そうだが


挿絵(By みてみん)


ま、精々頑張るとするかね





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