第10話 友達
お話を書くのってすごく難しいです。読み返しても、正直微妙に感じてしまう自分がおります。書く前に頭に浮かんでいたネタを文章に起こそうとすると、どういう風に表現して良いか悩んでしまいます。アドバイス等、あればご助言賜りたいです。
【sideレナ】
「……ん、こっちには何もいないみたいにゃ。レナ、行こ。」
少し硬い声でシーナさんは移動を促す。その表情はどこか険しく、先程までの快活さが見られない。まるで外敵を警戒している親猫のようだ。
「(やっぱりライさんのことが心配なのかな? )」
ここまでの道のりでは特に魔物に遭遇することもなく、シーナさんのお陰で順調に進んで来ることが出来た。安全に進むことが出来るのは良いのだけれど、それがシーナさんの負担になっているのかもしれない。
「あの、シーナさん。」
「ん? どうかしたのかにゃ?」
「実は思った以上に疲れが出てしまったみたいでして。ちょっとだけ休憩しませんか? 」
「え、でも、レナはしれん?って言うのを受けるのにゃよね? 急がなくても良いのかにゃ? 」
「それほど長い時間休む訳じゃないので、大丈夫です。」
「むーん……でもにゃー」
シーナさんの反応は芳しくない。街や森での様子からはこういう誘いには快諾すると思っていたけれど、意外にも責任感は強いようだ。でも、どうにか気を休めてほしい……あ、街を出る前に買っておいた【アレ】の存在を思い出す。私は冒険カバンからアレの入ったバスケットを取り出す。
冒険カバンはどんな形状の物でも、容量を超えなければ仕舞っておく事ができる便利な道具のこと。王都に居た時、叔父様から譲っていただいた物なのだけれど、とても重宝している。
「実は街を出る前に、これを買っておいたんです! じゃーん♪」
「そ、それは! まさか!? 」
「ええ! 自由都市カナード名産の……」
「サンマドッグにゃー!! 」
猫まっしぐらとはまさにこの事だろう。シーナさんは私の手の中にあるバスケット一杯に入ったサンマドッグに手を伸ばす。でも、流石に通路で休憩するのはちょっと心配なので、シーナさんへ声をかける。
「あ、ダメですよ? 休憩するのならもう少し広いところへ行かないと」
「は! りょ、了解にゃ! うぅ……休憩場所、休憩場所はどこにゃ~」
そう言えばシーナさんって何歳なんだろう? 見たところ同い年くらいに見えるのだけれど。……出来ればお友だちになりたいなぁ、なんて思ってしまう。
通路をしばらく進むと、少し開けた場所へとたどり着いた。ここなら見通しが良く、何か異常があってもすぐに分かりそうだ。
「シーナさん、ここなら大丈夫ですか? 」
「ちょっと待つにゃ。スンスン……うん、大丈夫そうにゃ。」
「それじゃあ、ご飯の準備をしますからちょっとだけ待ってて下さいね。」
シーナさんへそう告げると、私は食事の支度に取りかかる。バスケットに入ったサンマドッグと自分用のサンドイッチを冒険カバンから取り出す。
「にゃー! ご馳走がいっぱいにゃー!食べて良い? 食べて良い!? 」
「あはは、どうぞ召し上がって下さい。」
「いっただきまーすにゃ! ハグッ!ハグッ!」
シーナさんは口一杯にサンマドッグを頬張り目元を緩ませる。猫耳はパタパタと動き、尻尾は垂直にピンと伸びていた。
「(あ、あれって猫が機嫌良いときの尻尾の動きだ。ホントに食べる事が好きなんだなぁ。可愛いなぁ! さ、触ってみたい! )」
何を隠そうこの私、可愛いものには目がないのだ。王都に居たときはお屋敷に迷い込んできた、猫や犬に餌付けして撫で回していた。正直、カナードに来てからはなかなか可愛い動物と触れあう機会がなく、もふもふしたモノに飢えていた。だから、シーナさんを初めて見た時、衝撃を受けた。
「(この猫人、可愛すぎる!! )」
もう正直、今すぐにでも抱きついて、猫耳や尻尾をもふもふしたい!ああ、でも、もし嫌われてしまったら!……そんな風に思うと二の足を踏んでしまう。
「……もふるべきか、もふざるべきか……うぅ」
「んー? レナ、どうしたにゃ? 具合悪いにゃ? 」
顔をあげると、シーナさんがいつの間にかこちらを覗きこんできた。柔らかそうな猫耳が目に映る。ーーうん、自分の気持ちに正直になろう。
「し、シーナさん! 」
「は、はいにゃ! 」
「お願いがあります!! 」
「にゃ!? な、何にゃ? 」
双瞼見開き、烈迫の気をもってシーナさんへと告げる。
「私に! 貴女の猫耳と尻尾をもふもふさせて下さいぃぃー! 」
その瞬間、辺りが静まりかえった。シーナさんはポカーンとした顔をして、すぐに頬を赤らめ、アワアワと狼狽し始める。
「な、何いっているにゃ!? そ、そんな恥ずかしいこと、出来るわけないにゃ! 」
「ダメですか? 何でしたら先っちょだけ! 先っちょだけでも! 」
「い、いい、意味が分からないにゃあ!そ、そういうのは番になる人同士がやるものにゃ! ダメにゃ! 絶っ対ダメ! 」
くっ……!普段のお気楽な様子からあっさりOKが出るかと思いましたけど、ダメでしたか。以外にガードが硬い。仕方ない、プランBへ変更します!プランBとは……
「それじゃあ、あの……お友達になってくれませんか? 」
お友達からスタート作戦の事なのだ! 同性の友人通しだと、スキンシップが多い。それこそ、ちょーっと手が滑って猫耳を触ったり、足がもつれて尻尾に触ってしまう……みたいな、嬉し恥ずかしなイベントがあったりなかったりするのだ!……多分
「え、えぇ? 急にテンション変わりすぎにゃ! さっきまでは獲物を狙う肉食動物みたいな気配がしてたのに……」
「うふふ、ごめんなさい。どうしてもシーナさんと仲良くなりたくて、つい」
「むー……別に良いけどにゃ。」
流石は猫人。勘が鋭いですね!
「それで、どうですか? シーナさん」
私は少し不安げ(表面上)な表情でシーナさんを見上げる。昔、お母様から教わったおねだりのポーズ。私はこれで、お父様や叔父様から色々なものを勝ち取ってきた! 本当はあまり使いたくはないが、仕方ない。友人ともふもふを両方得る為だ。
「むー……」
予想外にシーナさんの反応が渋い。あれれ? もしかしてバレてる? 私の目論みバレてちゃってる!?うぅ、友達なんていたことがないから、コミュニケーションの取り方が分からない! どうしよう!? これって「え、アタシ、仕事で護衛してるだけにゃんで、そういうプライベートな感じは、ちょっと重いにゃ」みたいな感じ!? 昔、仲良くなれるかもしれないと思って、声をかけた他の家の子と同じ反応なの!?
「あ、あぁぁ、あの!し、シーナさん!? も、もし、ムリそうでしたら……」
「アタシ、レナとはもう友達だと思っていたにゃ! ……レナは違ってたのかにゃ?」
何この天使、いや聖にゃんこ。こんなの、こんなこと言われたらぁ……!
「そんなことないよ!! 私達、友達だよ!? シーナちゃん! 」
惚れてしまうじゃないですかぁぁぁぁー!! 何!? この子、もふもふなだけじゃなくって、メチャクチャ良い子じゃないですかぁ!?
「う、うふふ……ふひひ……」
「にゃ!? れ、レナ! どうしたにゃ!? 今、女の子がしちゃマズイ顔してたにゃ! 」
おっと、心の萌えが顔にまで伝搬していましたか。いけない、いけない……
「ご、ごめんね? なんだか嬉くって、つい……えへへ」
「にゃはは、変なレナにゃ! 」
「えへへ……それじゃ、ご飯の続き食べよう? シーナちゃん」
「あ、そうだったにゃ! サンマドッグ♪ サンマドッグ♪ 」
嬉しそうに食事を再開したシーナちゃん。あぁ、可愛いなぁ! よし、ライさんへの恩返しの他にもうひとつ、目標が出来た!
「(いつの日か、必ずシーナちゃんの猫耳と尻尾をもふもふしてみせる!!) 」
この日、私はそう決意したのだった。
「(うにゃあ!? な、なんだか背筋がゾクゾクするにゃ!? )」




