水葬夢現
水葬に目開き、
揺らぶ水草、眩き陽、旋回魚群、泡の舞踊。
沈み堕つ心を湛める、幾許の華。
湧昇流がもたぐ己が身の、
上へ、上へと、誘わる心地。
温水のやわらかい手、
淋しい首を抱き、指を絡み、
唇を目を、心を、潤わせ。
水面に蕩う物憂げの夜。
星安らかに見下ぐ、我が濡れた現実を、
思わせ気に嘲うか、哀れむか、何も悟らずか。
瓏々たる月の、唯、我を定む瞳が、
かつての日を詰り、謗り、戒めては嘲り。
心数多在る現の、
夢心地。又は、人殺し。
何を以て知る。
見る物の危うさ、脆さ、儚さ。
何を以て言う。
我が命の弱さ、確かさ、
貴方を目に宿せる、この心。
相見ゆ時、相異なう時、
相同じ夢を見ては、別つ悲愴さ。
我、潮流にまかせ、軽蔑の波を耳に湛めつつ、
また沈み、蒼白のラティメリアを倣い、
また浮き、数多命に罵られ、
永久と我見ゆこと叶わず、
血の離別、肉の離別、果ては粒となり、餌となり、
畢に漆海潤わす水葬と成れり。
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