第2話 迷いお化け
と、その時一人の迷いお化けが目に入った。
今のお化けたちはみんな統率が取れていて列から離れるお化けなんていないはず。
悪い予感を感じて僕はそのお化けのところに行って話を聞く事にした。
「どうしたんだい?ツアーは今日が初めて?」
「分かんない、僕はどうしてここにいるの?」
迷いお化けはどうやら招かれざる客のようだ…どうやら何も覚えていないらしい。
おかしい…お化けが無秩序に現世にやって来ていた昔ならともかく
今のハロウィンはしっかり管理されていて勝手にやって来るお化けなんているはずがない。
僕はそこにある種の疑惑を感じてこのお化けを世話する事にした。
ツアーお化けの管理をリサに任せるとこの迷いお化けを案内していく。
「今日は楽しいハロウィンの夜だよ!折角だから楽しもう!」
「う、うん…」
迷いお化けは多少気乗りしない風だったけど必死のアピールで僕の言う事を聞いてくれた。
仮装の楽しい人達や楽しい雰囲気の屋台、大道芸人たちのパフォーマンスを見て喜ぶ迷いお化け。
この様子なら特に何も起こらないかなと思った矢先だった。
「あ、妖精さんがいる!」
不意に現れた妖精に迷いお化けは興味を持ってそいつを追いかけて駆け出していった。
僕は急に走り出したお化けに驚いて必死に追いかけた。
その時はこれから何か悪い事が起こらないかそれだけが心配だった。
その様子を見ていたコウモリが夜の闇に消えていく。
コウモリはずっと…最初からその様子を監視していた。
迷いお化けが境界の門から出てきたところからずっと…。
お化けが妖精を追っている事に気付いた時はもう手遅れだった。
妖精はお化けを誘導する役目だったのだ。
僕とお化けは妖精に導かれてある場所にやって来てしまっていた。
その場所とは街の外れの共同墓地。
夜の共同墓地は無数のお墓が建ち並んでいていかにも怪しい雰囲気だった。
「待っていたよジャック」
僕とお化けを待っていたのはやっぱり魔女だった。
妖精とコウモリを下僕にしっかり計画を練っての登場のようだった。
魔女は妖しい笑みを浮かべながら僕を見下ろしていた。
毎年の事だけど彼女の企みはいつも厄介だ。
その度に阻止してきたけれど、一度だって楽に済んだ試しはない。