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2-06


2-06



 翌朝、未明に届いた中央カーディナルからの指令書(※)で寝不足のヘンリート艦長は、かなり早めの時間から司令室の艦長席で憂鬱ゆううつ時間ときを味わっていた。


 始業時間30分前にやってきた2人の研修生、ヨイマチ・アッカーマン(通称:アック)とシジョウ・アイリ(通称:イリ)は艦長席前に呼び出されたが、監督官がまだ来ていないからなのか、2人は居心地の悪い雰囲気を発散している艦長を前に、朝から居た堪れない気持ちで立たされていた。

 かといって艦長がむすっと黙っているのに、士官候補生の分際で下から「御用は何でしょうか」などと言えるほど神経も太くない2人はそのまま立たされるしかなく、2人とも何かの罰なのかと心中穏やかではなかった。


 実は司令室に到着してすぐに、個人端末にアルミナ中佐からの指示書(※)が届いており、もちろんそれは彼らも個人端末の通知表示で知ったのだが、内容を確認するヒマすらないタイミングで艦長から呼ばれてしまったのだ。


 (※ 艦長に届いているのは中央からの指令書。研修生らに届いているのはアルミナ中佐からの指示書である。ややこしい。)


 そして10分弱のやたら長く感じた沈黙時間が過ぎた頃、監督官が司令室に来たらしく艦長が彼を呼びだし、小走りでやってきた監督官が研修生2人の隣に立ち、敬礼した。

 それに軽く返礼した艦長。


 「今朝早く中央カーディナルから指令書が届いた。全くこんな…。

  いや、んっんん。研修内容を一時変更する。

  ヨイマチ・アッカーマン士官候補生、シジョウ・アイリ士官候補生は

  本日より7日間、戦闘技術情報室預かりとなり特殊任務に就くことになった。

  その特殊任務は極めて困難なものであると考えられるので、

  司令室としても惜しまず協力してやって欲しいとの通達だ。」

 「「はい!」」

 「監督官はその間は通常任務に戻ってよろしい。」

 「はっ!」

 「その後の予定は特殊任務終了後に決められる。従って両士官候補生は

  割り当てられたデスクを明け渡し、戦闘技術情報室でアルミナ副艦長の

  指示に従うように。」

 「「はい!」」

 「以上だ。(敬礼)」

 「「(敬礼)」」



   *  *  *



 そそくさと艦長席を離れた研修生2人は一旦自席へと戻り、アルミナ中佐からの指示書を確認した。

 「見て、これ。昨夜指示された内容がまとめられてるだけじゃないわ。」

 「ああ、閲覧許可の出た資料が一覧になってるな。すげぇ量だなこりゃあ。」

 「さっき艦長が『極めて困難』って言ってたのも分かるわ…」

 「これ全部目を通すだけでも何日かかかんじゃね?」

 「こんなにあるなんて知らなかったもん」

 「外部委託資料やそっからの見積書、支払関係書類全部あるんだが…」

 「ええっ、わ、ほんとだ。ちょっとトリハダが…」

 「おいイリ、お前とんでもないこと言い出したなあ?」

 「何よ、アックだって乗り気だったじゃないの。」

 「いや別にイリのせいにする積もりはねえんだが、こりゃ大人しく

  訓練やってたほうが良かったんじゃねーかって。」

 「もう遅いわよ…、でもこれってすごいチャンスなんじゃない?」

 「そうかもな…、ちゃんとできればだけどな…」

 「今からそんな弱気でどうすんのよ。頑張ろうよ。」

 「相変わらずイリにゃ敵わねえなー、はは…おっとと」


 気づくと任を解かれた監督官が不満そうな表情でこちらを見ていた。


 「とにかく片づけてトオルたちんとこ行こ。」

 「おう。」



   *  *  *



 ――全く、研修まで好きにするとは…。


 朝からとんでもなく憂鬱な気分で監督官と士官候補生に指示をしたヘンリート艦長は艦長席から離れる彼らの背中を目線で追いつつ小さく呟いた。

 この指令書がアルミナ中佐の仕業だとは分かっている。


 憂鬱なのはそれだけじゃない。

 何かというと、中央カーディナル経由で届いた指令書には、アイトーカ市とアステロイドベルト1で起こり得る海賊スネア残党のテロ対策に人員を配備しておけ、という内容があったのだ。


 アイトーカ市のほうはタイミングがいい。

 ちょうど今日から7日間、ソダース副艦長以下50名がアイトーカ市警備本部に協力支援という形ではあるが駐留軍と警備隊の親睦を深めようということで警備本部に詰めることになっているからだ。


 ――まさかこれも彼女の仕業とは思いたくないが…。


 そのまさかである。

 実はここのところ、軍服(駐留軍)への印象があまりよくない。とくについ先日軍服(駐留軍)と制服(警備隊)とが居酒屋で乱闘騒ぎを起こしてしまったことでこれがさらに顕在化してしまった。

 そんな事もあって親睦を深める必要があるということと、市民らにもっと軍服に慣れてもらおうということから、まずは一緒にチームを組み各街区を警邏してもらいましょう、という趣旨でそういうことになった。


 それがこのタイミングなのはもちろん、戦技情報室が1枚噛んでいるからであり、思考結晶コッペパンがそれぞれを担当する思考結晶に指示を与えて、こういう場合にはこのようにするといいという『提案』をそれぞれに出した結果である。


 もちろんそれぞれの担当者たる、司令室なら参謀官たち、警備本部なら本部長や警備隊長たちは、乱闘騒ぎやあちこちでの小さな対立騒ぎに対処するための案を思考結晶の補助で、自分たちが立てたと思っているのだが。


 ――ソダース君は下の者に厳しいところがあるんだったな…、

   親睦を主眼において行動するようにと念を押したが、やはり心配だな…。


 憂鬱のタネは尽きないが、問題はそちらではなくアステロイドベルト1のほうだ。

 一応は10名ほどが先日やってきた中央カーディナルからの調査団の護衛としてアステロイドベルト1に付き従っている。

 だがテロ対策というからには増員しなくてはならないだろう。


 せっかくこちらに従順なスネア残党改め宙域開発事業団を、刺激しない程度の増員をしなくてはならない。

 あちらには艦載機1機で出てもらっていたが、もう1機だすとするか、と艦長は操縦できる者が司令室にあと何人いたかを考えていた。


 艦長の憂鬱は治まることがなかったのだった。



   *  *  *



 そして戦闘技術情報室。

 朝の打ち合わせである。アルミナ中佐は室長席のところに立ち、皆が着席しているのを認めてから挨拶をし、話し始めた。


 「さて、今日はひさびさに全員そろったわね。召集したのだけれども。」(中佐)

 「「あはは」」、「「ははは」」、「ふふっ」

 「まずは改めて研修生の2人を紹介するわ。あれ?、増えてるわね。

  もう居るの?、早かったわね。じゃ、4人ね。」(中佐)

 「「ぷっ…」」 「「(くすくす)」」

 「もう知ってると思うけれど、カーディナル第一士官学校を卒業して…、

  だったっけ?」(中佐)

 「「はい」」

 「当艦へ研修にやってきたトオル研修生とマイコ研修生、それからアック

  研修生とイリ研修生よ。」(中佐)

 「中佐、名前をきちんと仰らないと…」(ステ)

 「いいじゃないの、これからそう呼ぶことになるのだから。

  正しい名前なんて名簿見ればわかるでしょ。」(中佐)

 「それはそうですが…」(ステ)


 そして研修生の4人を見てから、正面を向いて皆にひとつ頷き、


 「この4名には今日から7日間で、

  ホロとシミュレーター訓練メニューに追加する予定にしていた、

  司令室側で担当していた訓練の見積もり作業をしてもらうことになるの。

  皆さんのお手をわずらわせるかもしれないけれども、

  笑顔で協力してあげてね。」(中佐)

 「そりゃまたきついんじゃねーか?」(ロッ)

 「7日でできますかね?」(テリ)

 「コンバート作業じゃないわよ。見積もるだけよ?、完璧じゃなくても

  いいのよ。これだって立派な訓練なのだから。」(中佐)

 「そういうことなら。」(テリ)

 「いい見積りだったらスタッフロールに名前載せてあげるわ。」(中佐)

 「「!」」

 「マジですか?!、じゃなくて本当ですか?!」(トオ)

 「言い直さなくてもわかるわよ。本当よ。だから頑張りなさい。」(中佐)

 「「はい!」」

 「(いい返事だぜ)」(ロッ)

 「研修生はここからの会議には関係ないけれど、戦闘技術情報室というのが

  一体どんなことをしているのかを知ってもらうためにもこのまま

  居ていいわ。自由に発言しても構わないし。」(中佐)

 「「はい!」」

 「もちろん他言無用よ。作戦行動の機密原則。知ってるわよね?」(中佐)

 「「は、はい!」」

 「よろしい。では始めましょう。最初はテリーからよろしく。」(中佐)

 「はい。」(テリ)


 そう言うと中佐は着席した。代わりにテリーは立ち上がり室長席制御台に歩み寄った。いつものように制御台の下から操作盤がせり出た。


 「前回行ったラスタラの地上走査を、今回はさらに住人が居るところを詳しく走査しました。」(テリ)


 テリーはそう言いつつ操作盤をちゃっちゃと操作して室長席制御台の上に、第三惑星ラスタラの住人が居る地域を広く浮かび上がらせた。薄暗く浮かび上がった地形図はあちこち色分けされている。これからその説明があるのだろう。

 一部、市街から離れた山中が明るく表示されている。


 「こちらの山中ですが、『山の民』と呼ばれる住人の居る区域です。

  ここに微弱でしたが敵性種《HS》らしき反応がありました。」(テリ)

 「おいおい…」(ロッ)

 「敵性種《HS》ですって?」(キャ)


 テリーは振り向いて皆に頷くと、その山中の部分を拡大した。


 「どうやらかなり古いシェルター設備があり、そこを基準として

  周囲に集落を築いて『山の民』たちは住んでいるようです。

  そしてそのシェルター設備の下に、天然の洞窟があり、

  そこを一部加工したようで、石造りの建造物とその奥に石室の

  ような空間がありました。」(テリ)

 「その建造物や石室は浸食されていないの?」(中佐)

 「はい。理由は不明ですが、浸食されていないようです。

  シェルター設備も当時のもので、この天然洞窟を利用した

  石造りが基本のかなり原始的なものと言えます。」(テリ)

 「そんなとこに敵性種《HS》かくまって何やってんだ?」(ロッ)

 「御神体、のようですよ。」(テリ)

 「そんな…」(キャ)

 「バカげてるぜ…」(ロッ)

 「宗教なんてそんなものでしょ、確定なのね?、テリー。」(中佐)

 「はい。過去の通信記録にありました。敵性種《HS》だとは記録

  されていませんでしたが『奥には御神体がある』、と。」(テリ)



 ここで『山の民』とやらについて少し説明をしよう。

 彼らはこの第三惑星ラスタラに最初に移民してきたひとたちの子孫だ。

 独自の価値観をもち、都会の生活をいとい、山で生きる民族だ。


 ついでに言うと『森の民』というのも居る。

 もともとは1つの集団だったのが、何百年か前に部族が分かれたらしい。

 それら2つの『民』は後から移民してきて発展して行く人たちのことを、海に近いところに住んでいるので『海の民』と呼んでいる。


 『海の民』の中には過去には森や山の民を捕まえて奴隷にしたりする悪人も存在したので、森の民たちは特定のルートでしか外部との接触をしない。

 百年ほど前には海の民へのそういった憎悪から逆侵攻したりして、双方相当な被害を出し、痛み分けた歴史がある。

 現在は奴隷制も廃れており、地上基地の発展による抑止力も手伝ってそういった争乱を起こさなくなっている。

 後期移民である最初の町、現在のメルキ市が地上基地より海側にしか発達しなかったのはそういう事情もある。


 『山の民』たちは海や森の民との接触をとことん嫌う。だが衰退傾向にあるようで、もうあまり人数はいない。



 「よくそんなシェルター設備の下のものなんて見つけたわね。

  大変だったでしょ?、上からじゃ。」(中佐)

 「低軌道上からあれこれ試しましたから。」(テリ)

 「そう。ご苦労さま。で、そんな苦労をしたってことは、関連があった

  ってことよね。」(中佐)

 「はい。こちらの、」(テリ)


 と言ってテリーが操作盤を弄り、『山の民』の居住区から街が一部見えるところまでを表示した。

 「メルキ市の外れから少し距離を置いたここに、ネスパラダック社の

  関係する研究所と工場がありました。そして『山の民』までの間を

  かなり往復した形跡があったんです。」(テリ)

 「彼らとやりとりをしているのね?」(中佐)

 「通信を使っていないので市のほうに記録がないんですが、そう考えた

  ほうが自然でしょうね。

  ここからはトム、よろしく。」(テリ)

 「はい。」(トム)


 テリーは床からせり出してある長椅子に戻り、代わりにトムが立ち上がってテリーが使っていた制御台操作盤に歩み寄った。


 「僕らがやっていたのは違法ナノマシン薬物、通称『ポーション』の

  経路を調べることでした。」(トム)

 「うん。」(中佐)

 「虱潰しらみつぶしのように走査データを調べて見つけたのが、

  テリーさんの見つけた工場に、それと同じ敷地にある研究所でした。

  これはもしかすると関連があるかも知れないと。」(トム)

 「つまり関連性を疑うぐらい、他には無かったのね。」(中佐)

 「はい。ポーションを収めた倉庫はいくつか発見したんですが、

  他に製造していると思しき場所はありませんでした。

  倉庫のデータはそちらに。」(トム)


 朝の打ち合わせの前に中佐に提出した資料のことだ。

 中佐は室長制御台の手元のほうに資料を表示しており、いくつかある資料のうち、トムが操作盤を弄ってひとつを引き寄せて拡大し、該当部分まで進ませた。


 「そう。ああこれね。んー…これなら艦載輸送艦1つで行けそうね。

  押さえてからあとで回収かしら。」(中佐)

 「それならこっちから2人ほど回すさ、上空待機で連絡くれたら

  回収すれば早いぜ?」(ロッ)

 「じゃあそっちはお願いね。」(中佐)

 「あいよ。」(ロッ)

 「関連していた企業はこれで全部ね?」(中佐)

 「「はい。」」(トム・テリ)


 別のウィンドウに表示されている資料にあるリストを見ながらそう尋ねる中佐。


 「ふぅん、これならなんとか足りそうね。

  それでメルキ市とホラ市の政体はこんなに浸食されてたのね?

  酷いわねー。」(中佐)


 ラスタラ地上にある全ての市は市長制・議会制を採っている。議員数はメルキ市が一番多く15名、ホラ市は10名、キド市とカム市は5名ずつだ。


 市以外にも農村や村落があるようだが、それらは旧態然とした集団生活をいとなんでいるようだ。これらは全てあとから移民してきた人々がメルキ市をつくり、さらに発展したり離れた場所を開拓して移り住んだりしたものだ。

 それら農村や村落も、一応どこかの市に所属しているという形式をとっている。


 ネスパラダック社の関連企業との癒着を過去の通信記録から割り出したのがさらに別のリストにある。

 そこには市長・議員の他に市職員らや支所職員らの名前などがずらっと並んでおり、その横に癒着している者には×印がついていた。役付きの者に多く印がついていた。



 「そうなんですよ、どうしましょう?、さすがにこれだけ居なくなると

  役所が停滞しますし…」(テリ)

 「警察組織もなのね、予想はしていたけれども、これだと上だけ

  げ替えても後が厄介かもしれないわね…」(中佐)

 「地上軍のところのはどうするつもりなんです?」(キャ)

 「他と同じで会社作ってそこに委託が一番楽ね。

  地上軍の必要ないでしょ?、襲ってくる外敵がいないのなら。」(中佐)

 「だったらもうそっちにまとめちゃえばいいんじゃないですか?」(キャ)

 「なるほど。一理あるわね。へんなライバル意識や軋轢が無いのが前提

  だけれど、同じスネア系同士なら、何とかなるかも知れないわね。」(中佐)

 「すると公務員だった警察が民間委託になりますよ?」(テリ)

 「うーん、あまり歓迎できない面もあるかもしれないけれど、

  そのへんはあとで何とでも変えて行ってもらえばいいわ。

  どうせ警備会社はつくらなくちゃいけないのだし。」(中佐)

 「腐ってたりしませんか?」(トム)

 「ん?、それはどっちの意味で?」(中佐)

 「賄賂とかそういう…」(トム)

 「ああ、それは個人が腐ってるだけなのだから、あたしたちが

  どうこうする事はないわよ。」(中佐)

 「そうなんですか?」(トム)

 「そうよ。組織ぐるみでかばい合ってて、市民が批判したら

  口封じに消されたりするならついでに手を出すわ。

  社会的に腐ってるならあとが大変でしょ?、

  でも個人が腐ってるのをあたしたちがいちいち手出しする必要は

  ないのよ。きりがないでしょ?、そんなにヒマじゃないし人手も

  足りないもの。」(中佐)

 「なるほど、そうですね。」(トム)

 「そんなの調べ上げろって言われたら面倒臭ぇだろ?」(ロッ)

 「う…、はい。」(トム)

 「おそらくたくさん居るはずですし、今それだけの逮捕者を拘留

  すると施設も管理の手も足りませんよ。」(ガル)

 「確かに。」(トム)

 「そういうこと。とにかくキャシー案で、まとめちゃう方向で

  話を持って行くわ。」(中佐)


 ここでステラが急に、

 「中佐、どこに持って行くんですか?、まさか…」(ステ)

 「どこって当事者たちに決まってるじゃないの。」(中佐)

 「ではまた中佐が降りて直接話されるんですか?」(ステ)

 「だって他にやってくれるひと居ないでしょ?、ならあたしが

  やるしかないじゃないの。」(中佐)

 「ですが中佐…」(ステ)

 「その中佐という肩書ってのは辺境では重いのよ。仕方ないじゃないの。

  あたしだってやりたくてやるわけじゃないのよ?」(中佐)

 「…はい。わかりました。ですが今度こそお供しますよ?」(ステ)

 「もちろん一緒に降りてもらうわよ。でもステラ中尉には現地で

  やってもらわなくちゃいけないことがあるの。」(中佐)


 ここで何か言いかけたステラを手で制して、


 「ああ、ちょっと待ってね、今はまず報告と方針を決めるのが先。

  だから話を先に進めさせてね。悪いけれど。」(中佐)

 「はい。」(ステ)

 「で、政体のほうはどうしようかな…、手間だし面倒だし、

  もう放置でいいかも?」(中佐)

 「放置すんのかよ…」(ロッ)

 「いいんですか?」(テリ)

 「だって、バックボーンが無くなるわけでしょ?、スネア系企業

  なのだから。」(中佐)

 「あ、そういうことですか。」(テリ)

 「そういうこと。」(中佐)

 「え?、どういうことなんです?」(キャ)

 「ふふっ、キャシー、政治家が土台としている企業からの支援が

  なくなればどうするでしょう?」(メイ)

 「えーっと、急いで他の土台を探す?」(キャ)

 「そうよね。まさかそのまま舞台を降りるなんて往生際のいい政治家

  なんて居ないもの。だから他の土台を探すんだけど、ふふっ、

  その土台って何かしら?」(メイ)

 「他の企業…?、でも票田って市民よね?、うーん…」(キャ)

 「だいたい惜しいところかなー。票やお金が欲しいなら脱スネアを

  アピールしてきれいな政治家にならなくちゃでしょ?、

  それなら真面目にやるしかないんじゃない?、

  余程酷いことをしてきたのでなければ、ね?」(メイ)

 「あ、そっか、スネア系企業が支援しなくなったら勝手に変わって

  いくしかなくなるんですね。だから放置でいいって…」(キャ)

 「そういうことなのよ、ふふっ。」(メイ)

 「なるほどー」(キャ)

 「分かってもらえた所で、政体は放置っと。

  問題は下で騒ぎを起こされる場合よね。そっちはどう?」(中佐)

 「まだそういった情報は見つかりませんでした。

  人も集まってないようですし、仮に計画があったとしても今なら

  まだ小規模で済みそうです。」(テリ)

 「ふぅん。だといいんだけれども。どっちが早いかってところに

  なりそうね。」(中佐)

 「下で動かせる人数ってどんくらいなんだ?」(ロッ)

 「63+5で68名ね。」(中佐)

 「すくねーなー、それじゃ騒ぎが起こっちまったらどうしようも

  ねーぞ?」(ロッ)

 「そう。そっちに回せる人員は居ないのよ。」(中佐)

 「スピード勝負の綱渡りかよ。」(ロッ)

 「仕方ないのよ。この艦の駐留軍全員が使えたとしてもたった250人

  しかいないのよ?、そんなにぞろぞろ連れて行けないし、

  連れて行ったら逆に警戒されたり、騒ぎを起こす連中を刺激して

  予定が早まらないとも限らないもの。」(中佐)

 「それに安全ならともかくスネアだらけの地上なんて誰も行きたがり

  ませんし。」(ガル)

 「そうよ。駐留軍を外に出すには艦長の許可だって必要だし、

  戦技情報室うちの管轄じゃないのだもの。そりゃあれこれ手を

  回せば許可を無理やりにとることはできるかもしれないけれど、

  気が進まないわ。あたしだって恨まれたくないもの。」(中佐)

 「あくまで駐留軍はコロニー艦の駐留軍だからなぁ…」(ロッ)

 「うん。」(中佐)


 ラスタラ地上のスネアに所属すると思われるのは6万人いると推定されている。そのうち地上基地を占拠しているのが1000人以上、基地の敷地と周辺に展開して居座っているのを含めると1万名弱だということが走査結果で分かっている。

 もちろん6万人全てが戦闘するような者らばかりではないし、6万人という数字の根拠も元スネアである宙域開発事業団のひとたちからの情報なども加味したものだ。彼らは宙域に来た人員はきっちり把握して管理しているが、地上のほうというのは杜撰ずさんなのである。


 そんな1万人以上いるところに駐留軍全員でも250名で一体何をするんだと思われても仕方がない。大量破壊をするなら数十人で事足りるがそんなわけには行かないし、アルミナ中佐がそのような命令を出すわけがないのだから。


 騒ぎを起こされたとして、それらの人員をラスタラ地上のしかも市街に展開して収拾しようだなんて無謀もいいところだろう。ましてや地上には警察組織だって居るわけだから、他所からいきなりやってきて協調できるわけがない。下手をすると両方が敵に回るかもしれない。


 何にせよぞろぞろ連れていってもいいことなんて無いのである。

 行きたがらないし強制的に連れていくにしても中佐の言うのではないが恨まれるだろうし手続きや選抜に編成や指揮する者らへの説明だってある。実に面倒極まる。

 ならば連れて行かないほうがいい。


 「もし先に騒ぎを起こされたら作戦中止して引き上げてくるわ。」(中佐)

 「賢明だな。」(ロッ)

 「うん。じゃ、ラスタラは一旦置いて、次ガルさんのほうお願い。」(中佐)

 「はい。」(ガル)


 今度はトムが席に戻って、ガルさんはその場で立ち上がり発言した。


 「アステロイドベルト1の元スネア基地集合体ですが、かなり離れた

  アステロイドに係留されていた艦艇を相当数発見しましたので、

  『仮称スネア宙域開発事業団』改め『アスパラギン宙域開発事業団』で

  管理運用することにしました。」(ガル)

 「海賊だったくせに堂々と星系名をつけるずうずうしさがいいわね」(中佐)

 「彼らだってアスパラギン(この)星系を長いこと敵性種《HS》から

  守ってきたという自負があるんですから名前ぐらい大目にみてやって

  下さいよ。ははは」(ガル)

 「まぁ、巣を殲滅できねーで時々飛んで来んのを対処してただけだし、

  あと数年もつかどうかって所だったけどよ、守ってきたってのは

  事実だからなー」(ロッ)

 「何言ってるの、褒めてるのよ?」(中佐)

 「褒めてるようには聞こえませんでしたよ?」(ガル)

 「「ははは」」 「ふふっ」 「「あはは」」

 「それで、離反していた連中の一部が戻ってきた可能性は?」(中佐)

 「それが、何せ出入りが多いためよくわからないんです。」(ガル)

 「うーん、せっかくまとまりかけてる所なのに、

  誰かとっ捕まえて絞るわけには行かないし…」(中佐)

 「それはさすがに…」(ガル)


 苦笑しながら言うガルさん。


 「通信ででもボロを出してくれればと思うのだけれども、

  無いんでしょ?」(中佐)

 「はい。」(ガル)

 「せめていつ起こすかだけでもつかめればね…」(中佐)

 「引き続き監視はしますが、この分だとわからないでしょうね…」(ガル)

 「監視しながら様子を見るしかないのかな…」(中佐)

 「そうですね…」(ガル)

 「たいていこういう連中って末端からボロを出すものなのだけれど…」(中佐)

 「周到ですね、なかなか。」(ガル)

 「ねぇ、さっきからの話だと騒ぎを起こすって前提なんですよね?」(キャ)

 「そうよ?」(中佐)

 「騒ぎを起こさない可能性は?」(キャ)

 「そう思いたいのよ。

  でもそれだと起きた場合には後手もいいところでしょ?」(中佐)

 「このまま何も分からなければどうせ後手になりません?」(キャ)

 「心構えと準備ができている場合の後手と、

  何も対応策をしていない場合の後手とは違うわよ?」(中佐)

 「なるほど。そうでした。」(キャ)

 「だから何か手がかりがあれば、準備だってしようがあるし

  対応策だってとりやすいでしょ?」(中佐)

 「はい。」(キャ)

 「だからガルさんにはベルトを、テリーにはラスタラ地上を、

  メイには市長や議員たちを、そしてあなたにはネズミを探って

  もらってるのよ。」(中佐)

 「はい…」(キャ)

 「それで調査団のひとたちは?」(中佐)

 「そちらは事業団の主要メンバーたちとうまくやっているようです。

  調査も着々と進んでいるらしいのですが…、」(ガル)

 「離反した連中と地上か…」(ロッ)

 「はい、そちらは全くでして、調査団の方々も懸念しておられ

  ました。」(ガル)

 「地上がきな臭ぇからなぁ…、

  降ろすわけにゃ行かねえししょうがねぇんじゃねーか?」(ロッ)

 「うん、降りても守れないもの。とにかくベルトと収容してるひとたちの

  ほうを進めてもらってて。そう指示してると思うけれども。」(中佐)

 「はい。」(ガル)

 「その収容したひとたちは?」(中佐)

 「医療団の話じゃポーション使った連中がひどいらしいぜ。

  過去に症例があるんだってよ。それで抗ナノマシン薬をカーディナル

  から取り寄せてる。使ってなかった連中は落ち着いてて、

  対処が早かったのもあってもう何人かは復帰し始めてるらしい。」(ロッ)

 「そう。そっちはもう任せるしかないものね。」(中佐)

 「んだな。」(ロッ)

 「じゃ、メイお願い。」(中佐)


 ガルさんが座り、メイが立ち上がる。メイも前には出ないようだ。


 「はい。市長の動きですが、

  近々選挙活動をする準備をしているようです。」(メイ)

 「選挙なんてまだかなり先ですよね?」(テリ)

 「選挙活動ってタテマエで何かやるってことじゃねーのか?」(ロッ)

 「おそらくは。市長派議員らも同様ですので、アイトーカ市居住区の

  広範囲で演説なりビラ配りなどをするような動きでした。」(メイ)

 「今までもちょこちょこやってたわね。一斉にやるってこと?」(中佐)

 「それがはっきりといつというのがバラバラでして、妙な符牒ふちょう

  使っているようなので日時がつかめないんですよ。」(メイ)

 「それぞれの活動人数は選挙動員程度の人数なのね?」(中佐)

 「はい、それぞれ20人も居ません。議員によっては5人しか動いていない

  ところも。」(メイ)

 「なるほど、選挙活動っつーのもわからあ。」(ロッ)

 「なら、デモや都市妨害ではないわね。市民を煽動するだけなら

  こちらもやりようはあるわ。で、いつかはわからない、と。」(中佐)

 「はい。申し訳ありません。」(メイ)

 「謝る必要はないわ。目星もつけられない?」(中佐)

 「それが、状況からみて今日明日に実行してもおかしくないんです。」(メイ)

 「ふぅん…」(中佐)

 「こっちは準備できてるぜ?、いつ来ても大丈夫。」(ロッ)

 「ということらしいので、ロックに任せるわ。」

 「あいよっ」(ロッ)

 「はい。」(メイ)

 「で、ネズミの動きは?」(中佐)

 「変わりなく、毎日忙しいようで市民相談やってます。」(キャ)

 「いいことね。余計な動きはしていない感じ?」(中佐)

 「お悩み相談に、探し物や届け物、喧嘩の仲裁にイベントの手伝いで

  動き回っているので、もしその合間に変な動きをしていたとしても

  わからないんですよ。」(キャ)

 「そうなの。」(中佐)

 「あからさまに怪しい動きをすれば分かりやすいんですけど…」(キャ)

 「それもない、と。」(中佐)

 「はい。」(キャ)

 「艦外に出たりは?」(中佐)

 「宇宙港の商店には何度か。でも短時間ですし買い物をしてすぐ

  ゲートを通過していました。」(キャ)

 「商店のほうは洗ってみた?」(中佐)

 「はい、別段怪しいところはありませんでした。」(キャ)

 「商店の仕入れ業者は?」(中佐)

 「そちらは端末を持っていないのも居まして、あと、基地設備が

  工事中というのもあって…」(キャ)

 「そうね、それもあるわね。ならしょうがないわ。」(中佐)

 「済みません…」(キャ)

 「謝る必要はないってば。今回はネズミは無関係なのかも

  しれないわね。」(中佐)

 「うさんくせえけどなー」(ロッ)

 「無関係であるとは思えないんですけどね。」(テリ)

 「あたしもそう思うのだけれども、もしかすると関係していても

  ごく浅いのかもしれないなって。」(中佐)

 「なん(どうし)」(ロッ・テリ)


 ロックがテリーに手振りでどうぞと示した。珍しい。


 「どうしてそう思われるんです?」(テリ)

 「今回のような、『騒ぎを各所一斉に起こす』なんてのに関わると、

  せっかくここで築き上げた市民らの信用も信頼も一気に失うことに

  なるでしょ?」(中佐)

 「そうですね。」(テリ)

 「そうか、だからネズミとしちゃあ関わりたくねぇってか。」(ロッ)

 「そうなのよ。だから関わるとしても日時を連絡するだけか、

  もし偶然同じ日に何かを起こすと知ったら時間まで合わせようと

  まではせずに傍観を決め込むのじゃないかしら。」(中佐)

 「ふむ。一理あるな。」(ロッ)

 「すると工作したりするような深い関わりはしないだろうということ

  ですか。」(テリ)

 「うん。通信は使わないでしょうし、妙な動きをしていないなら

  ただの連絡員でしょ?、それがあったとしても証拠がつかめないし

  そこまでただの連絡員に拘る必要もないんじゃないかなって。」(中佐)

 「市長派との接触はあるんですか?」(ガル)

 「いいえ。全く見当たりませんでした。」(キャ)

 「そうですか。それなら市長派の動きが差し迫っている状況ですから、

  ネズミは無視してもいいでしょうね。」(ガル)

 「『全く』ってのにはちょっとひっかかりを覚えなくもないけれども…」(中佐)

 「きれいすぎるのも怪しいってか?」(ロッ)

 「うん。まあそれはいいわ。ガルさんの言うように差し迫ってる

  状況だもの。でも無視はダメよ。」(中佐)

 「え?、どうするんです?」(ガル)

 「もし騒ぎが煽動するだけじゃなかった場合、市長派はアイトーカ市には

  居られなくなる可能性があるわよね?」(中佐)

 「ああ、逃亡補助か。」(ロッ)

 「なるほど。そういうことでしたか。」(ガル)

 「うん。だからそこで関与するかもしれない。なので動きだけは

  見ておかないと。」(中佐)

 「わかりました。」(キャ)

 「あ、キャシーには一緒に降りてもらう予定だから、メイ、

  悪いけどネズミもお願い。」(中佐)

 「わかりましたー」(メイ)


 そこですっくと中佐は立ち上がり、いつもの微笑みで皆を見回してから、


 「さて、いい具合に煮詰まってきたところで、まとめましょうか。」(中佐)


 皆が頷く。


 「まずは、あたしと一緒に下に降りる人員は2チームの予定よ。

  カンイチくんと艦載機の2機で降りることになるわ。

  それで現在決まっているのが、こちらの補佐官の2人とキャシー、

  テリー、トムね。」(中佐)

 「「はい」」

 「テリーとトムは現地を詳しく調べたのが理由よ。覚悟してたでしょ?」(中佐)

 「あはは、薄々は。」(テリ)

 「なんとなくは。」(トム)

 「(また俺こっちかよ…)」(ロッ)

 「ロック、何か言った?」(中佐)

 「いいえ、なんでもありません中佐。」(ロッ)

 「それであたしと地上基地に乗り込むのが、キャシーだけだとまた文句が

  出そうだから誰か立候補しない?、あ、ステラ中尉とリリィ少尉は

  他に役割があるからダメよ?」(中佐)

 「そんな!、どうしてそんな危険なことを私たち補佐官抜きでなさるん

  ですか!、中佐!」(ステ)

 「んー、じゃあそっちのほうから決めましょうか。

  さっきの話に出てたと思うのだけれども、ネスパラダック関連の

  倉庫・工場と研究所、を押さえてもらわなくちゃいけないの。

  そして地上には基地を追い出された63名と、第147辺境警備隊いちよんなな

  アルマローズ司令が送り込んだ5名の合計68名を幾つかに分けて

  指揮してもらわなくちゃいけないのだけれどあっちには士官がいないの。

  リリィ少尉には逃走経路を見張ってもらうという大事な役割があるので、

  ステラ中尉にしか頼めないの。おわかり?」(中佐)

 「仰ることはわかりますが…、しかし…」(ステ)

 「倉庫のほうは大して警備もされていないということが分かっているの。

  だからそっちは分隊を艦載機から通信で指揮するだけで充分なのよ。

  でもね?、工場と研究所のほうは幾つかの分隊をわけて制圧しなくちゃ

  だめなのよ。わかるでしょ?、それにはステラ中尉じゃないと、

  他のみんなでは地上の彼らが納得しないのよ。他に適任者がいないの。

  わかってちょうだい。」(中佐)

 「…わかりました。」(ステ)

 「逆にあたしがそっちへ行くと、基地のほうの話し合いで相手が納得

  しないでしょ?、追い出された人たちから何人か付いてってもらうし、

  彼らだって宇宙軍中佐に手出ししたらどうなるかが分からないほど

  無謀なわけじゃないでしょう。」(中佐)

 「ちょっと訊くが、追い出された連中に士官がいねぇってのは

  どういうこった?」(ロッ)

 「スネア残党が基地を占拠したとき、一部反抗したらしいのよ。」(中佐)

 「じゃあおじょ…じゃねぇ中佐だって危ねぇじゃねーか。」(ロッ)

 「彼らは地上基地勤務だったわ。ラスタラ住民だし。反抗しなければ

  助かったのは追い出された他の人たちが居るのだからわかるでしょ?

  あたしだって武器を持って突っ込むわけじゃないのよ?

  話し合いに行くのよ。」(中佐)

 「そりゃそうかも知れねぇけどよー…」(ロッ)


 ロックの言いたいのもわかる。なら中佐は何をしにいくのか、話し合いだけで解決するのか。地上基地だって宇宙軍の施設なんだから取り返さないわけには行かないだろう、まさか放棄してやつらにくれてやるのか、といったところだろう。


 「もちろん基地は宇宙軍のなのだから、そのままにはしないわ。

  放棄してタダでくれてやりました、なんて悪例をつくるわけには

  行かないのだもの。」(中佐)

 「んじゃどうすんだよ、

   『この基地は宇宙軍の施設です。不当に占拠しつづける行為は、

    宇宙軍への敵対行為とみなします。』

  なんて言ったって聞きゃしねぇだろうし反発するだけだぜ?」(ロッ)

 「そうね。警告なんてバカなことはしないわよ。」(中佐)

 「無理やり排除しようってのか?、したって人数が人数だろ?

  遺恨だって残るだろうし、まさか皆殺しにゃできねぇ。」(ロッ)

 「そんなことをしたって基地が壊れるだけよ。排除するにしても、

  1万人も収容すると管理も運用も追いつかないわ。

  遺恨が残ったら宙域の基地じゃないのだから地上基地なんて

  守り切れるものじゃないでしょう。」(中佐)


 宙域ならそう簡単にはちょっかいを出してこないだろう。なにせ、敵性種《HS》への警戒と対処を行っているのであるから、そこに手を出すということは利敵行為であり、星系の人類への敵対に等しいのだから。

 だが、地上基地ならそういう心配は不要だし、艦艇で乗りつける事もなく、徒歩でも地上車でも、なんなら空からでも侵入・攻撃ができてしまう。

 そりゃあ武力で守ればなんとかなるかもしれない。だがそれだと困るとアルミナ中佐は考えている。


 「ならどうすんだよ?」(ロッ)

 「さっきもちょっと話に出たわね、『他と同じように会社作って委託する』

  って。だってラスタラ地上って宇宙港は地上基地なのよ?」(中佐)

 「基地の運営を民間委託しようってのか。話が通るか?それ。」(ロッ)

 「通るかじゃなく、通すのよ。まず宇宙港部分を民間会社に委託、

  使用料を取る形にして運用してもらうこと。

  そして、彼らだってスネア企業がバックボーンなのだから、

  それが無くなると収入がなくなるのよ?、稼ぎの当てがないと

  まずいでしょ?、だから彼らにはちゃんと警備会社になって

  もらわなくちゃなのよ。」(中佐)

 「それで警察もまとめちゃうって意味なんですか。」(キャ)

 「しばらくそれでやってもらって、ダメなら何か別の手でも

  自分たちで考えてもらいましょう。」(中佐)

 「投げっぱなしか…」(ロッ)

 「そうとも言うけれども、それほど酷い話じゃないはずよ?

  とにかく説得してくるわ。他にいい案もないし。」(中佐)

 「うまくいかなかったら?」(ロッ)

 「その時はさっさと引き上げるわ。スネア企業が無くなれば、

  彼らだって考えも変わるでしょう。待てばいいもの。」(中佐)

 「暴動になるかもしれねぇぜ?」(ロッ)

 「そうなったらそれこそ片っ端から無力化して素っ裸で放り出せば

  いいわ。」(中佐)

 「(おっかねぇ…)」(アッ)

 「アック研修生?、発言するなら聞こえるように言ってね。」(中佐)

 「は、はい!、申し訳ありません。」(アッ)


 アック研修生は両側の同僚から呆れた目線で黙って注意されていた。

 ちなみに制御台が用意されていないが椅子は今朝中佐に言われてトオル研修生とマイコ研修生が奥の部屋から持ってきているので、2人分の制御台に並んで4人が着席している。

 気がそがれたのか、ロックはそれ以上言うことが無い様子だったので、中佐は話を続けることにした。


 「じゃ、続けるわね。

  施設制圧組が、テリー・トム・ステラ中尉・リリィ少尉、それと

  現地の兵隊さんたち63名から基地に付いて行く人を引いた58名、

  あとは147の調査員さん5名は現地で決めましょう。」(中佐)

 「「はい」」

 「あ!、リリィ少尉は軍服を着用のこと。いいわね?」(中佐)

 「はいっ!」(リリ)

 「いくらなんでも地上でメイド服はまずいもの。

  そしてさっき言いかけたあたしと基地に行く人、キャシーと

  現地の兵隊さん5名ぐらい。それで他に行きたい人いるかしら?」(中佐)

 「はーい」(ロッ)

 「だめよ。ロックはこっちに残ってもらわないと。」(中佐)

 「ちぇっ」(ロッ)

 「ちぇ、じゃないわよ。もう」(中佐)

 「立候補しづらいみてぇだから場を和ませようとしてだな…」(ロッ)

 「じゃ、ロックが選んで。だいたい予定を把握してるでしょ?」(中佐)

 「そうだな…、ネココンビと沈黙コンビなら連れてっていいぜ」(ロッ)

 「ネココンビ?、ああ、キューとミャーね。沈黙コンビってのは

  スティとリュウだっけ?、いいのね?、そう。んじゃお願いね。」(中佐)

 「「はいっ」」

 「あと、デンとニキを艦載輸送艦のほうで待機組ってとこか?」(ロッ)

 「えっ、デンと?」(ニキ)

 「なんだよ…」(デン)

 「んじゃスミスとデンで。ニキは俺の補佐してくれ。」(ロッ)

 「そうね、ニキは待機っていうとまた艦長席でふんぞり返るから。」(中佐)

 「えっ、あれはたまたまですよ、たまたま休憩してたっていうか…」(ニキ)

 「「あはは」」 「「ふふふ」」

 「デンとスミス、いいのね?、そう。お願いね。」(中佐)

 「(中佐のお願いキタ━━━o(゜∀゜)━━━!!)」(デン)


 ――これは突っ込んだら負けよね。突っ込んだら負け。


 「あ、そうそう研修生たちだけど、今回は連れて行ってあげられないの。

  ごめんね。」(中佐)

 「「はい!」」

 「イリ研修生はヘンな表情だけれども、連れてって欲しいの?」(中佐)

 「い、いえ、決定に従います。」(イリ)

 「ん?、そう。現地時間は何時かしら?」(中佐)

 「ラスタラ地上基地ですと4時間ほどこちらが早いようです。」(テリ)

 「じゃ、各自準備して早めに軽食を摂ってから正午に出ましょうか。」(中佐)

 「「はい!」」

 「以上。解散!」



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20150211---- 一部の語尾を修正しました。

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