2-02
2-02
翌日、朝の打ち合わせのあと室長席でしばらく作業していたアルミナ中佐。
主任席にはロックしか居ない。ちらっとそちらを見て、ふとロックの腕にあった赤い時計に気づき、
「そういえばデンが青いのしてたわね。」
「ん?、ああこれか。アスパラマンウォッチだぜ。」
「アスパラマンウォッチ?、何それ。」
「アスパラマンだよ、今流行ってんだよ、知らねーの?」
「ふぅん?」
「ラスタラの子供番組なんだけどな。」
「なぁんだ…」
「ちょっ、おい今ちょっとバカにしたろ!」
「な、何よ、子供番組でしょ?、大の大人がって思うじゃないの。」
「それがよくできてんだよ、ただ怪獣やっつけるだけの子供番組じゃねぇ。
人間ドラマあり涙あり笑いありで子供だけじゃなく大人でも楽しめてよ、
大人気なんだよ、なかなか深いんだよ、すげぇんだぜ?」
「へー?」
と曖昧に相槌を打ちつつ個人端末で情報を検索してみるアルミナ中佐。
「あらほんと、すごい情報密度ね。関連グッズも売れてるのねー」
「そう、これがアスパラマンウォッチって言って、主人公らの個人端末
みたいなもんなんだ。通信機能だけじゃなく探知機にもなるんだぜ?」
「ブレスレットもあるわよ?、ウォッチもあるのに。」
「そっちは両腕の紋章をクロスさせて変身する時に使う。
変身後も武器を呼び出すのに使ったりするんだぜ。」
「変身したらウォッチはどうなるの?」
「ウォッチは変身前の小道具という扱いなんだ。だから変身したら
ウォッチは装備してない。」
「ふぅん…、(ピッピッピッピ)」
「あ、ブレスレット買ってやがる…」
「ブレスレットっていうけれどこれ、袖が汚れるのを防ぐカバーみたいな
サイズあるわね。」
「ああ、紋章がでかいからなー」
「だからこれ――と腕の端末を指差して――の上からできるかなって。」
「まあ大丈夫じゃねーか?、ラスタラのは安物の布製みたいだけど、
ここのレプリカはよくできてるみたいで、紋章をクロスさせると
光ったりするらしいし。」
「ああそっか、そういえば地上世界の通販、勝手に再現して製造販売して
いいって許可だしてたっけ…、忘れてたわ。」
「なんだよ、自分で言いだしたんじゃねーの?」
「『地上の放送が視れるなら通販はどうしましょう?』、って言われてね、
買えないと不自然なんだから交易があるなら買えばいいじゃない?、
って言ったのよ、そしたら
『交易がない場合は不自然になりませんか?』ってイヤな言い方されたので、
じゃあ作って売ればいいじゃないのって言っただけよ。」
「売り言葉に買い言葉みたいなもんか。」
「うん、それでこうなっちゃったのよ。」
「それでラスタラのこれだと時計だけなのに、こっちで買うと通信できたり
仲間を探知できたりホロ投影できたりすんだな。」
「へー?、レプリカのほうがすごいじゃないの。」
「だろ?、子供向けにゃ勿体ねーぐらいなんだぜ?」
「どういう自慢なのよ…」
「うちでも俺とデンとキューとミャーとニキとハルマンが装備してっぜ。」
「いつの間にそんなに…」
「駐留軍や一般市民にもアスパラマンウォッチ、売れてるみたいだしさ。」
「…ってこれネスパラダックじゃないのスポンサー。」
「番組がまともなら別にいいんじゃね?」
「そうね、何から何までが真っ黒なわけないでしょうし。」
「そんなに悪いのか?」
「どうやらポーション造ってるみたいなのよ。」
「げっ、ポーションってあの違法薬のか…!」
「収容所のスネアのひとから検出されたのよ。それで聞き取り調査中よ。
それでだいたい情報集めたらこっちから調べてもらおうと思ってるの。」
「お、地上走査か?、全域?、重点?」
「重点ね。全域はもうテリーが前にやってるでしょ?」
「ああ、そうだったなー、深度どこまでやる?」
「そうね…、10kmも要らないかな、あ、でもラスタラの地殻運動も
ついでに調べておいた方がいいのかも知れないわね。将来のために。」
「そうすっと全域になるぜ?、街だって建造物によってはまずいかもしれん。」
「あー…、面倒ね。じゃ、重点だけでいいわ。
明日指示出そうと思ってたのに、やりたそうだからおねがいね。」
「なんだよヤブヘビじゃねーか、ははは。」
「まだ全部じゃないけれども、医療チームからの報告書が上がってるの。
あとでそっちに回すわ。艦載機も許可だすわ。タリサ班も使っていいわよ。」
ちなみに主任らは特に許可などなくても艦載機を動かせる。
だが事後きちんと中佐が承認処理をするので、事前に許可を出しておくほうがもちろんいいのである。そして中佐が予め許可をだすということは、艦を離れるなどで責任者不在となることを暗に意味している。
実は現在は、前回の海賊スネア絡みの騒ぎでアルミナ中佐がコッペパン艦の設定を変更したままだったりするので、艦外からでも中佐が室長席に着いているのと同等の最高権限で処理ができるままになっている。同様に主任ら5名が室長席で最高権限で操作できるのもそのままだ。
元の状態であれば、承認処理を艦外から行う場合には仮承認扱いとなるので、この言葉にそういう意味があった、というだけの話だ。
設定を元に戻していないのは、単に忘れているだけだろう。
「わかった。ってことは中佐、下行くのか?」
「第三第四も1度は降りなくちゃいけないでしょうねー…。」
「リスーマはともかく、ラスタラはスネアだらけなんだろ?、大丈夫か?」
「カンイチくんと2機で行くつもりだし、大丈夫でしょ、
べつに下でドンパチやりに行くわけじゃないのだから。」
「あまり無茶すんなよ?、皆心配すんだからよ。」
「普通そこは、『無理するなよ』って言うところよね?」
「ああ、そうとも言うな。」
「一体何を心配してるんだかわからないわね…」
「そりゃあ中佐の身を心配するに決まってんじゃねーか、ははは」
「全く、どうだか…、ふふっ」
「降りるならよ、」
「うん?」
「せめて補佐官の2人は連れてってくれよな?」
「当たり前よ、護衛なんだから。」
「あと何人か連れてってくれ。何かあったときのためにもよ。」
「カンイチくんと2機で、って言ったでしょ。人数少ないとあいつ調子に
乗るから10人ぐらいで行くわよ。」
「そっか、なら大丈夫だな。くれぐれも1人でうろちょろしねーでくれよ?」
「一体あたしを何だと思ってるのよ…、もう。」
ロックが神妙な顔をして言うので、何かいつもと調子が違う感じのするアルミナ中佐だった。1人でうろちょろしてしまう自覚がないのが困ったものだが、前例があまりにも多いからこんな事を言われるのだ。自業自得というヤツである。
* * *
朝の打ち合わせのあと、昨日アルミナ中佐からもらった装備一式を戦技情報室用のホロルームでテストしているキャシー。コッペパンの助言や案内にふむふむと頷いたり驚いたり納得したりと忙しい様子だった。
中佐はこのテストプログラムをかなり作り込んでいたようで、もちろんコッペパン艦に来る前の開発時からのことであるが、ネタ的なものから実用的なものまでそれはもう物凄い量だった。
中佐が「過信は禁物」と言っては居たがその機能の作り込みたるや、キャシーの想像を超えていたものばかりだった。
例えば、一定速度以上で近づく物体を逸らす、艦艇に搭載されている思考結晶と連動して危険物を判定し警告する等、不意の危険から身を守るものであったり、衝撃波を発生させたり、海賊ラゴニア拠点を制圧したときに活用した微細振動で気絶させたり、障壁を周囲に発生させたりするといった実用的なものがまず目につく。
さらに、ネタだと思われるが、格闘系やゲームなどにあるような『技』の再現もあった。いや、ネタなのか大真面目なのか微妙なところかもしれない。
キャシーは宙に浮いたウィンドウにその『技』リストを表示させていた。
「旋風脚…?、こんなのどこで使うのかしら…」
注意書きに『準備運動を入念にしてから試すこと。』なんて書いてあったのでその通り素直に従ってから試そうとしたらコッペパンから警告された。
『キャシー主任、それは試す前に中佐の動画をご覧になるべきです。』
「え!、わかったわ。再生してみて。」
再現されたホロ動画は、ジャージ姿であちこち保護具――手袋と、肘と膝にパッドのついたもの、ヘッドギア――をつけた中佐が、「せーのっ」と可愛い声を出して、斜めに飛び上がり空中で横に3回転して蹴りを繰り出すものだった。
「うわー、そのまんま旋風脚ね。目が回りそう。試すのはやめとこう…」
『蹴り脚から衝撃波が出る仕組みになっています。
これで大抵のものなら破壊できます。
対人では使わないほうがよいと思われます。』
「…一体何と戦うのを想定しているの?、これ…」
コッペパンの忠告に従って良かったと思ったキャシーだった。
他にもいろいろたくさんリストにあった。中佐は一体どれだけ作り試したのか。
「いっぱいある…、瞬歩頂肘雲身双掌撃…?、何て読むのかしら?」
『再生しますか?』
「う、うん。お願い。」
さっきとは色の違うジャージ姿の中佐が、宙に少し浮いたサンドバッグ人形に相対していた。膝の屈伸運動をしてから両手を広げて体をひねったり、両手を握ってあちこち動かしたりする妙な運動をしている。その様が可愛くてクスっと笑った。
人形は少し距離を置いてファイティングポーズを取っていた。
中佐はそのうち、「よし。」と言うと、人形が徐々に近づいてきた。
そして少し足を広げて腰を落とすと中佐の姿が消えた。
いや、消えたのではなく、人形に突進したのだ。瞬間的に。
そして人形の斜め後ろから衝撃を与えたのか人形が吹っ飛んだ。
最後は中佐の両手が前に突き出ている。
正直早すぎてさっぱりわからない。
「え?、何が起こったの?、これ。」
『スローモーション再生を行いますか?』
「あ、うん、お願い。」
スロー再生された中佐は、腰を落として左の肘を構えて人形に突進した。
スローのはずなのにとんでもない速度だった。
中佐の肘が人形の中心部に刺さったように見えた。
直後、低い姿勢で左斜めに右足を踏み出して、左肩の後ろの部分を人形の右斜め後ろから当て、少し開いたスペースに左足を踏み出し、同時に両手を前に突き出した瞬間、人形が吹っ飛んだ。
スロー再生中にはご丁寧に技名が表示されていた。わかりやすい。
つまり、あのものすごい速さの移動が『瞬歩』で、肘打ちが『頂肘』、回り込んで肩の後ろを当てるのが『雲身』、両手で衝撃を与えて吹っ飛ばすのが『双掌撃』ということなのだろう、たぶん。
繰り返しスロー再生しているのをよく見ていると、肘など相手に当たる部位には障壁が形成されているようで、直接肘などが当たっているわけではなく、小さな障壁が当たっているようだ。
「なるほどね、組合せ連続技、ってことなのね。」
『多くの基本技があります。護身術や古流拳法などから採りいれたようです。
どれも障壁の保護があってのものですので、ご注意下さい。』
それはそうだろう。そもそもキャシーも中佐も普段から体を鍛えているわけではないし、護身術や格闘術なんてやったこともない。キャシーなんてせいぜい学校の体育授業で運動した程度である。しかもあまり得意じゃなかったのだ。
「…キャシー用無双モード、ってのがあるんだけど…、何なの?」
『それは中佐が厳選した基本技や基本動作を、こちらで状況判断をして
最善の動きをするように組み合わせ、キャシー主任の安全を確保する
という専用モードです。』
「…過保護なのか何なのか判断しかねるわね。最終手段ってことなのかな。」
『それは直接中佐にお尋ね下さい。』
「それにしても動作補助ができるなんて思わなかったわ…」
この装備、それぞれに超小型重力制御機関が搭載されている。キャシーは今日これで初めて知ってかなり驚いたのだった。
以前、メイが噂とかで言っていたのよりも小型だった、こんなもの予想の上すぎて想像もつかなかった。あれはバイクや車への搭載をするぐらいのサイズの話じゃなかったのか。中佐が真顔で念を押すわけだ。確かにこんなもの危険すぎておいそれと使えない。
あらためて思う。中佐がこれだけの調整設定をしておいてくれてよかったと。
ふとリストを眺めていたら、『翔歩』、『壁歩』というのが目についた。
説明を開くと、『翔歩:宙を歩くように飛ぶ技』、『壁歩:壁を歩く技』とあった。ということは空を飛び壁を歩けるということだろう。もうなんでもアリなのかもしれないとキャシーは呆れつつ溜息をついた。
ホロ動画を再生してみると、翔歩のほうは確かに空中を走っている。が、バランスをとるのが難しいようだった。途中で落っこちてふわりと着地していた。
壁歩のほうは壁面を歩いていた。そのまんまだった。しかし重力バランスをとる部分を調整しながらだったようで、時々髪がへんな風になっていたが、動画の終わりのほうには普通に歩けるようになっていた。ところどころで「むー」とか「う…」とか「ふにゃー」とか言っていて可愛かった。
――これ、中佐がいくつの時のなのかな…、うふっ。
それにしてもこんなもの使いこなすのに一体どれだけかかるだろうか。そういえばロックが「ありゃぁお嬢にしか使いこなせないぜ」と以前言っていたのを思い出す。自分だってこんなもの何も設定していない状態からであれば、この10分の1どころか『技』の再現まで到達できたかどうか疑わしい。
しかもこんな、超小型サイズの重力制御機関にその制御技術情報の塊なのだ、軍事機密どころの騒ぎではない。物理的にも情報的にも最高ランクなんてものじゃない機密だ。
そう考えたキャシーは自分に託されたモノの重大さにすこし身震いがした。
とはいえ、護身用装備としてはこれ以上のものはないだろう。
腕の外側に障壁を発生させるものや、衝撃波を放出したり微細振動を局所的に発生させたりというのは、その威力を充分理解しているキャシーにも扱いやすいものであるし。
格闘技などはともかく置いといて、リストからあれこれ見たり試したりしつつ、キャシーにも分かりやすいものをすぐ呼び出せるように設定していると、施錠していたはずのホロルーム制御室に中佐が入ってきた。
「どう?、朝からやってたみたいだけれど、大丈夫?」
「あ、中佐。はい、もうびっくりするやら感心するやら呆れるやらで、
とりあえず分かりやすいものだけを選んでるみたいな感じです。」
「それでいいと思う。技とかあとで筋肉痛で動けなくなるもの。」
「あはは、中佐そうだったんですか?」
「最初のうちはね。そのリストにひとつ載せるだけでも
大変だったんだから。」
「あー、なんとなくわかりますよ、いくつか調整しながらの
動画ありましたし。」
「うん。わざと置いてあるのよ。苦労してるのよって教える
ためにもね。」
「なるほど。それにしても超小型の重力制御機関がもうあるなんて
思いませんでしたよ。」
「何言ってるの。ここの地上車にだって使われているし、とっくに
実用化されてるのよ?」
「ええっ?!」
「もちろん出力はかなり抑えてあるし、衝撃を緩和することに特化
してるの。でも悪用されることを考えて、完全に衝撃を抑えきれない
程度でしかないのよ、無いよりマシって程度ね。」
「そうだったんですかー。」
「もう試したかもしれないけれど、これ、やりようによっては空も
飛べるわよ。初めてだと確実に酔うからやらないほうがいいと
思うけれども。緊急避難的に使うぐらいかしら。」
「翔歩ならちょっとやってみました。楽しいですよね、あれ。」
「あれは飛ぶというよりは走る感じでしょ?、そうじゃなくて、
えーっと…、」
「あっ、これですね『浮舞』。」
「そうそれ。慣れるまでは食後にやらないほうがいいわよ。」
「確実に酔う、ですかー…、でも人類の夢ですよね、空を自由に
飛ぶのって。」
「そう思って作ったのよ。でもどこで飛ぶのよ?、そんなのひとに
見られたら大騒ぎになるわ。」
「それもそうですね…。」
「ところでそろそろお昼だから呼ぶついでに様子を見に来たのよ。」
「あ、もうそんな時間ですか。」
「熱中するのもわからなくはないけれど、程々にね。」
「はい…」
「じゃ、お昼いきましょ、今日はロックぐらいしか部屋に居なくて、
そのロックもお昼から出かけるからって早めに食べに行っちゃったし、
なんか最近、食堂で食べてると遠巻きにされてちらちら見られるから
食べづらいのよ、1人だと特に。」
「それは中佐だけじゃなくて、みんなそうみたいですよ?」
「何か言いたいなら話しかけて来ればいいのに、何なのかしらね、もう。」
「そのうち慣れますよ、あはは。」
「あ、台詞とられちゃった気がする。あ、早く行きましょ、
午後から研修生が来るのよ。」
「はーい。」
そしてそそくさと片付けをしてホロルームを出るキャシー。
廊下で中佐が待っていた。歩きながら続きを話す。
「研修生って?」
「なんかね、軍の士官候補生なのよ。半分は面倒見ろって艦長に
言われちゃってね。仕方なく。」
「へー、研修って戦技情報室で何するんですか?」
「そうなのよ。だからシミュレーター訓練させるしかないじゃない。」
「あ、それで昨日から訓練メニュー増えたんですか。」
「そういうこと。たぶん明日からはシミュレーターとホロ、使うヒマが
無くなると思ってね。」
「なるほど、研修っていつまでなんです?」
「いつまでだったかなー?、半年ぐらいあったような気も…」
「結構長いんですね。ずっと訓練だけやらせるんですか?」
「だってうちだと他にすることないじゃないの。士官学校を出てきた
ようなひとが、皆の作業の手伝いができると思う?」
「無理でしょうね…。」
「そりゃ艦載機ぐらいなら動かせるようにはなるかもしれないけれど、
士官候補生を作戦に組み込むなんてできないし…」
「できないんですか…。」
「緊急時や非常時ならともかく、普段はやっちゃダメなのよ。
そう決まってるの。よくてもオブザーバーとしての参加でしょうね。」
「士官学校って一応小型艇や艦艇の操作って習うんじゃないんですか?」
「旧型の艦艇なら習うわね。でもここの艦載機は勝手が違うでしょ?」
「あ、そうですね。」
「だからリリィ少尉の訓練も最初の基本編からなのよ。
エンジンも何もかも違うのよ。噴射なんてしないし。概念からして
違うんだから。重力制御機関で飛ぶってのはそういうことなのよ。」
「そうですねー、あたしたちは最初からこっちの艦載機でしたから、
それほど違和感とか無かったんですけど。」
「あなたたちは概念から理解してるでしょ?、そういうのじゃない人は
きっと大変だと思うわよ。さ、ほらキャシー、食券。」
「あ、はい。」
いつの間にか食堂の券売機の前に並んで、順番がきたようだった。
中佐は「今日こそはカツカレーを…」と言って食券を買っていた。昨日食べ損ねたのだろうか。
「え!、ちょっと!、カツないの!?」
「あー、ごめんねー、さっきので最後。」
「ええええ…、食券買えたのに!」
「おや?、数間違えたのかねー?、珍しいこともあるもんだ。」
「そんなぁ…」
定食をトレイに乗せて席を確保ようと見回していると、カレーの窓口でそんな声が聞こえた。中佐とオオモリさんだ。中佐がすごくがっくりしている。
「今日こそは…今日こそはと思ったのに…!」
「食券、返金するよ?、別なの買ってきな?、ん?、中佐ちゃん?」
「カツの仕入れを増やすよう、断固ラップライフに抗議するわ!!」
「何言ってんだい、仕入れには適量ってもんがあるんだよ。
文句言ったからってそう簡単に増えやしないさ。
ほれ、後ろがつっかえてるじゃないかね、どうするんだい?」
「返金して…」
「あいよっ、ほれ、どいたどいた、次のひとどうぞー」
窓口を力ない足取りで離れた中佐が券売機にたどり着き、何かを買ってまた違う窓口へと向かって行った。
――あたしがホロルームでぐずぐずして喋ってたからかな…。
中佐に悪いことしちゃったかも…。
中佐にそんなこと言ったら叱られるに決まっているので言わないが、内心すこしだけそう思い、そういえば中佐のカツカレー運って無いなーなんて思ったキャシーだった。
後日、本当にラップライフに抗議したのか、カツの仕入れが増えたらしい。
* * *
「何?!、星系から出れねぇだと?」
「はい、軍が作戦行動中だからって、元スネア艦の渡航が禁止されてます。」
「元スネア艦ってったって、地上基地にあった艦だろが。」
「それが、どういう訳だか元スネア艦だって言われたらしいんです。」
「後手になっちまったか…、企業の連中は?」
「周囲に何も見えないのにワープができなくて焦ったところに通信が入った
らしく、そりゃもうビビって逃げ帰って来たみたいで。」
「そりゃぁ怖ぇだろうな。そんな目に遭えば俺だって焦る。
やつらを脱出させる代わりに資金援助しろって約束だったんだが、
こうなっちゃ仕方がねぇだろう、状況が状況なんだ。
それについちゃ何か言ってたか?」
「いいえ、ワープできないなら仕方がないと納得はしていたようです。」
「しかし一体どうやりゃぁワープだけを妨害できるんだ?、
カーディナル軍ってなぁそんなに進んでるってのか?」
「こないだの戦闘を見た限りでは…」
「ああ、言うな。あんなもん戦闘じゃねぇ。虐殺だ。
それだけの差があるってことなのか…。まぁいい、出れねぇなら仕方ねぇ。
それよりこいつだ。」
そこにちょうど、基地司令に割り当てられた司令官室に呼び出された白衣の男と士官風の男が入室してきた。
「おお、やっと来たか。丁度いい。あのデカいのは本当に使えるのか?」
「使えるのか?、とは失礼ですな。
我が01局のロボット技術の粋を極めた強力無比なる無敵の
デガンバースターにかかれば艦艇や基地など何ほどのものでもない!」
「威勢がいいのは構わねぇが、ありゃあどんくらい強ぇのかって
訊いてるんだ。何かわかりやすいようなもんはねぇのか?」
「ふっふっふ、あれをテストしたときの映像があります。」
「おお、そういうのを早く出せってんだ。」
白衣の男が再生した映像は、元スネア艦にも存在する中型・大型の艦艇が4隻編隊になって宙域を進んでいるところから始まった。
そこにあのデガンなんとかというデカいロボットが遠くからやってきた。
艦艇4隻はそれを落とそうと遠距離から砲撃していたが、的が艦艇に比べて小さいことと、縦横無尽に動くため的が定まらないようで、かすりもしていない。
ミサイルはダミーに捕まり爆発したり、レーザーで撃ち抜かれたりして当たらなかった。
そのうち近距離まで近づかれ、大型のブラスターのような武器で攻撃され、まず最初の1隻が無力化された。
艦載機を射出して応戦していたが、艦載機よりも動きが細かく、次々と撃墜されてしまっていた。
そして4隻全てが無力化されたのだった。
「おお、いいじゃねぇか、なんとなくだがロマンを感じるな。」
「ほほう、ダラズさんもお分かりになられましたか。」
「俺だってな、ガキんときはこういうのに夢みたもんだ。」
「なるほど、なるほど。」
「で、地上じゃどうなんだ?、これぐらい機敏に動けんのか?」
「もちろんです。のろのろ動く巨大ロボットなんぞクズですぞ。」
「そうか、近々出撃してもらうかもしれん。そのときは頼んだぞ。」
「お任せください!、何が来ようがデガンバースターの敵ではありません。」
そう言って一礼して退室した2人。白衣の男だけが喋っていたが、もう一人はパイロットらしい。あんなのに乗るとはスゴい奴だ。素直にそう思うダラズだった。
「ダラズさん、あの男は軍の第01兵器開発局に居たらしいんですが、
昨年あのロボットを作ってからクビになったとか。」
「ふむ、そうなのか。理由とか聞いてっか?」
「いいえ。海賊の情報網ではそれ以上のことは分かりません
でした。引き続き探りますか?」
「いや、知ったところでどうしようもねぇだろう。」
「そうですね。」
「そんで、宇宙港の女狐がコロニーに忍ばせたってぇネズミが居るらしいな。」
「はい。渡りつけるんですね。」
「通信できねぇんだ、いつもの手でこっそり直接渡りつけるっきゃねぇ
だろうな。ベルトのほうも大丈夫か?」
「どっちも準備はできてます。定期便ですから時間はかかりますが。」
「そりゃ分かってるさ。んじゃ早めに動かねぇとな。
地上とベルトとコロニーと3箇所で同時に騒ぎを起こす。
決行日時を早く決めて、ネズミにも教えてやらねぇとな。」
ダラズはそう副官に言うとソファーから立ち上がり、テーブルに置いていたビンを持ち、ぐいっと中身を飲んだ。
* * *
子供向け番組にはロボットヒーロー物が幾つかある。
敵性種《HS》や宇宙の平和を乱す悪者や悪代官をやっつける内容のもの、宙域ではなく地上の狭い地域が舞台のもの、などがあちこちの星系や地上世界で放映され玩具にもなっていたりする。
それらは場合によっては、適当に何かのプロパガンダに使われたりする例もある。
航空機などのいわゆる『カッコイイ形』のものが変形したり乗り物が合体したりと、そこそこ人気もあるようだ。記録によると古代から存在したようで、こういったものの需要は尽きないのだろう。
ヒーローからは程遠い…、いや、災害救助や建設分野などでは人型ではないがロボットが大活躍をしているのだからヒーローには違いないという人も居るだろう。
建設機械や救助機械が変形したり擬人化したりするような番組やゲームだって存在しているのだ、やはり魅力を感じる人は多いということなのだろう。
しかしある程度の年齢になると、宇宙軍にロボット兵器が採用されていないことや、作業用や建設用などでしかロボットが活躍していないことを知るのだ。
それでも夢を棄てなかった、追い続けて居る者は結構多い。
宇宙軍第01兵器開発局はそういった者たちの頂点、憧れであり夢へと突き進む頭脳集団なのである。
その第01兵器開発局では、「ロボはロマンだ!」を合言葉に、旧来から巨大ロボを研究開発していた。
重力制御機関が効率よく、さらには小型化されるにつれて、
「重力制御で高機動ロボットに!」
と、目標を新たに巨大ロボットの開発を進めたが、その頃には例の『ワープ制御弾頭』や『新シールド』が新しくなったワープ機関によって実現し、配備されてしまったので、ますます第43兵器開発局を筆頭にそれに関連し提携して大きくなって行く幾つもの開発局を一方的にライバル視していた。
それでも懲りずに頑張っているのだが、しかしやはり、
「宙域で手足なんぞ何に使うんだ。作業用か?」
「専用武器に引鉄が付いているのはどういう冗談かね?」
「無駄な機構が多すぎる。強度的にあちこち問題がある。」
「余計な制御をするぐらいなら軽く小さくすればいい。であれば艦載機で充分。」
「可動部分が多すぎるので弱点となりやすい。」
「変形するというのはさらに可動部が増えて機構部分が弱点になるのではないか」
「さらにそれをカバーすると大きく重くなってしまうのではないか。本末転倒だ。」
「弱点ばかり増やしてどうするのか。」
「稼働する部位が多いと部品数が増える。ということは故障もそれだけ多くなる。
メンテナンスすることも考えろ。」
「デメリットが多すぎる。」
「補修・交換部品だけで一体どれだけのムダが増えると思っているんだ。」
「合体?、それは何の冗談なのか。変形より構造的に重くなり弱点も
増えるのではどうしようもない。」
「それならまだ武装を搭載したほうがいくらかマシである。」
「その武装を取り扱う腕を切り離して飛ばすのか?」
「ただの的とどうちがうのか。」
「重力制御機関の無駄遣いだ。」
等と散々に言われ、ロボット兵器は宇宙軍兵器としては全く認められなかった。
だが実は、第01兵器開発局は何気に、一般向け、つまり作業用工作用ロボットの技術としてはかなり有意義な成果を出しており、そういった方面では大活躍と言ってもいい。
さらには、艦内部の一部の可動部品や大型搬出搬入用ハッチであるとか、運搬用のクレーンアームや物理型マニピュレーター、医療用や土木や建設用機械、工作や加工機械の機構部分には、ここで開発された技術を応用したものが使われているものもあるので、その方面での収入が01局の研究開発費を支えている。
兵器としては全く相手にされず、『お情け予算』と言われるぐらい微々たる研究費しか認可されなかったが、こういった方面での予算はちゃんとおりるしかなりの収入もある。
なので『01』の名に恥じない規模の人員と設備を誇っている。
軍としては資材部や補給部、地上部隊などではかなり感謝している人も多く、一般的に言ってもこの『第01兵器開発局』というのは有名な開発局であり、人気はあるのだ。
毎年希望者も殺到するので、兵器開発局中では倍率が上位をキープしているほどの狭き門なのである。
それに、先にもあるが映像作品や玩具としては絶大な人気があるので、それらの宣伝用にと01局に協力依頼がくることもある。
少し動いたり光ったりするような各種ギミックを組み込んだ看板模型であったり、テーマパークや大型博覧会や大型イベントでの大型展示物について技術的支援や監修などを行うのだ。
もちろん後片付けも担当することになる。過去からのこのような『常識的に考えてみると用が済めば巨大なゴミとなり、邪魔になったり処理に困ってしまうような物』であっても、それに心からの愛情を惜しみなく注ぐことのできる人達にとっては大切な『歴史』なのだろう。
01局はそういった人達の頂点という自負もあるので、その規模と莫大な収入によって、惑星カーディナルの第一衛星ロームや第二衛星テームに広大な倉庫施設を幾つも持っており、それら『歴史』は『遺産』として大切に保管されている。
これら倉庫は時々、こっそりと数日かけて巡るようなツアーパックが年に1度ぐらいの頻度で行われており、その手のマニアたちにとっては聖地のような扱いになっているようだ。特集番組などで取材が入ることもある。もちろん『遺産』の維持費となる大切な収入源だ。
01局に加入してすぐ、これら倉庫に案内されるという「新人研修」もあるようだ。
このように兵器としてではないロボット技術や機構技術、それらの流用・稼働実績としては確固として存在し、組織としても大きく人員も多いので宇宙軍としては頭の痛い、『ナンバー01なのに兵器自体の開発実績がない兵器開発局』、という不思議な部署となっている。
今日もまた、打倒第43兵器開発局を誓い、ロマンを追い求める第01兵器開発局なのであった。
* * *
午後になり、ステラ中尉とリリィ少尉が研修生2名を連れて戦闘技術情報室にやってきた。ステラとリリィは朝から司令室の担当官と研修生4名で駐留軍の施設や司令室をまわり、研修要綱について司令棟地上部の会議室で打ち合わせをし、そのまま3階の士官用食堂で一緒に食事を摂ってから、司令室側とこちら側に分かれてやって来たのだ。
一般食堂でキャシーと食事をし、戻ってきて少し室長室に入ってしばらくしてから出て来たアルミナ中佐は、何かあったのかごきげんで少しにこにこして室長席に着いていた。
「アルミナ中佐、こちらの2名が今回研修生として当戦闘技術情報室で
預かることになりました士官候補生です。」
頷く中佐に、ステラが「こちらが、」と手で指し示すと向かって左側にいる、ぼさぼさな短めの黒髪で真剣なまなざしをこちらに向けている碧眼が精悍な印象を与える男性が半歩前にでた。
「マッダナル・トオル研修生です。」
「よろしくお願いします!」
「う、うん」
いきなり勢いよく挨拶したので、室長席制御台を挟んでいるがちょっとびっくりした様子で目をすこし見開いた中佐が、その勢いに押されて妙な返事をした。
その高級士官らしからぬ応対を意外に思ったのか、それともしてやったりと思ったのかは分からないが、表情をすこしゆるめたマッダナル研修生が敬礼ではなくお辞儀をし、また半歩さがって元の位置に戻った。
おそらくはステラから、この部屋では敬礼などの軍人的な堅苦しいことをアルミナ中佐が好まない、と予め教わっていたのだろう。
ステラが、「そしてそちらが、」と言うと、もうひとりの金髪で真ん中分け刈り上げ髪の茶眼の男性が同じように半歩前にでた。
「サバラス・マイケル研修生です。」
「よろしくお願いします。」
「うん」
こちらは普通の音量だったので普通に頷いた中佐。サバラス研修生も同様にお辞儀をして元の位置に戻った。
今日から来るこの2人のために、室長席制御台のエレベーター側というかドリンクサーバー側には他と比べると小さいが充分な機能のある制御台が2つ、設置されている。
ステラ中尉の席が中佐と並ぶ位置に置かれており、その向かいに2つ、斜めに中佐の席のほうを向く形で置かれている。
この制御台は情報室員らの席の補助用として別室に用意されているもので、特に新しく用意したというわけではないが、それは情報室員らが使用するためのものであるのだから、そんじょそこらの机ではなく、高機能であり、権限さえあればこの艦の思考結晶コッペパンとのリンクが可能なほどのものだ。個人端末など比べものにならないくらい思考結晶もインターフェイスも充実している。小さいとはいえすごいのだ。
「中佐から何かありますか?」
「えっ?、あー、たぶん覚えることだらけで大変でしょうけれども、
ステラさんの言うことをよく聞いて、程々に励んでちょうだい。」
「「はい!」」
何かステラが溜息をついたように見えたが、きっと気のせいだろう。リリィはずっとにこにこして中佐を見ていたが。
それにしてもすぐに席に着くと思っていたのに、いきなり振らないで欲しいと中佐は思った。
ステラに促されて彼らそれぞれが席に着いた。早速渡されたマニュアル類を個人端末から広げて読んでいるようだ。今日はずっとそればかりになるだろう。だが明日からは訓練と報告書の毎日が始まるのだ。熟読しなくてもここでの訓練は親切にできている、はず、なので今日ぐらいはゆっくりのんびりとここの雰囲気に慣れてもらえばいい。
「あ、そうそう。ドリンクサーバーの使い方はわかる?、
分からなければ誰かに尋ねればいいわ。
その後ろにあるから、好きに使っていいわよ。」
「ありがとうございます。」
顔を上げてこちらを見てそう言ったのはサバラス研修生だ。
「ここのドリンクサーバーは戦技情報室につくから、タダよ。
よそのはその管轄の部署についちゃうから、ここの以外のを
勝手に使っちゃダメよ。」
「わかりました。」
「食堂のはお茶とお水がサービスよ。それ以外は個人につくわ。
お小遣いが少ないなら気をつけなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
「ここのがタダだからってあまりたくさん飲んでたら訓練で大変よ、
程々にね。」
「中佐、子供じゃないんですから…」
「そうね、これぐらいにしておくわ。」
そう言うと中佐はとことことドリンクサーバーに歩いて行き、ダイアルをくりくりっと操作してドリンクを作って容器を持ち、ストローを挿して「ちゅー」と飲みながら室長室へと入っていった。
研修生の2人はそのやり取りに少し、どことなく居心地の悪いような、言葉にしづらい奇妙な印象を受けたのか、2人で顔を見合わせて妙な表情をしていた。
* * *
「マニュアルすっげー量多くてだりー…」
「何か難しい理論の説明とかもあったよね。」
「ああ、あんなの分かるかってんだ。」
夕食時、士官用食堂へ先に到着していたマッダナルとサバラスは、券売機で食券を購入してからすぐに窓口には行かずに、テーブルに座って話していた。マッダナルはテーブルにぐでーっとだらしない体勢だ。サバラスはそれを両肘をついて見て話していた。
そこに少し遅れて残り2人がやってきた。
薄めの茶色つんつん頭で碧眼のヨイマチ・アッカーマンと、濃いめの茶色ショートヘアで碧眼のシジョウ・アイリだ。入口のほうを向いていたサバラスが話しかける。
「司令室側はどうだった?」
「予想通りってところかな。模範的というか平凡というか。」
「そうね、堅苦しいところも軍人らしいし、普通あんなもんでしょうね。」
「そっかー、こっちはずっとマニュアル読まされたぜ。」
「こっちだって似たようなもんよ。先に食事にしましょ。」
「ああ。」
そう言って席に着いていた2人も立ち上がり、窓口のほうへ向かう。後から来た2人は券売機のほうへ行った。
この士官用食堂は、1Fの一般用食堂の真上にあり、ここで調理はせずに1Fで調理したものをリフトで送ってくるシステムになっている。窓口にはそれらの操作を行う係員がいる。
戦闘技術情報室のメンバーはアルミナ中佐を筆頭に、こちらを利用することはなく1Fを利用している。中佐や補佐官の2人は本来こちらを利用すべきなのだろうが、司令室の人たちやその他士官らとあまり顔を合わせたくないのかもしれない。
向こうもそう思っているかもしれないが。
めいめいがそれぞれ夕食を前にし、食べながら続きを話す。
「ねね、アルミナ中佐ってどんな感じの人だった?」
「すっげぇ可愛い。小さいし。」
「そりゃトオルはでかいからな。」
「でかい言うな。」
「何か気さくな感じだったよ、皆普通に話してたし。」
「そうなんだ。17歳の中佐かー、すごいよねー」
「3つも下なんだよなー、でも階級は5つも上。」
(※ 士官候補生はまだ少尉ではなく、准尉待遇となるため。)
「そういえばメイド服の少尉さんは?」
「あの人は士官学校に入った年が若かったから出たのも早いんだっけね。」
「あのひと18歳だっけ?、射撃の天才とか言われてたよね。」
「まさかハマーノン先輩がここでメイド服着てるとは思わなかったよ…」
「マイコはハマーノン先輩に憧れてたっけね。」
「そりゃ射撃やってたら憧れもするよ。3年連続星系1位だよ?」
「スゲーよなぁ、あ、そういえば射撃訓練あるんだっけ?」
「ああうん、駐留軍のほうのやつな。」
「そうそう、そっちのほうはハマーノン先輩と一緒に行けって言われたよ。」
「そっちのほう?」
「うん、明日からシミュレーター訓練とホロ訓練なんだ。」
「え…、戦技側って訓練ばっかなの?」
「そういうことになるな。全く、訓練やって報告するだけってよ、
なんだか手抜きみたいだなぁ…」
「そう考えると司令室側は普通なだけマシなのかもしれないな。」
「堅苦しくなくて気楽なだけいいじゃないか。」
「そりゃマイコは憧れの先輩の所だから…」
「そういうのじゃないってば。」
「どうだか。でも気楽なのはいいわね。」
「席に着いてる時間なんてなさそうだけどそれでもか?」
「う…、それはちょっと…。」
「遠慮したいな。」
「だろ?」
「担当官のヴィクス中尉だっけ?、すらっとした姿勢のいいひと。」
「ああ。」
「ああいう女性士官がかっこいいわ。」
「厳しい人っぽいんだけれど、アルミナ中佐に甘い感じがしたな。」
「甘いもなにも上司じゃないの。」
「そりゃそうだけどさ、何か雰囲気がさ。」
「ふぅん、変わってるね、戦闘技術情報室って。」
「そうだね、敬礼するなって言われたし。」
「「えっ?」」
「あの部屋では敬礼すると中佐が不機嫌になるんだってさ。」
「不機嫌って…」
「そして中佐が不機嫌になるとろくなことがないから
敬礼しちゃダメだって言われたんだよ。」
「ヘンな所だなー」
「そうねー」
彼ら四人の初日はこのような感じで終わった。
それぞれの研修はまだ始まったばかりなのだ。
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20150211---- 一部の語尾を修正しました。
201502131815 「2人の研修生」では分かりにくいので変更しました。
20150622---- 「び」……orz
(修正前)向かって左側の黒髪で短めの髪がぼさぼさび碧眼で精悍な感じのする男性
(修正後)向かって左側にいる、ぼさぼさな短めの黒髪で真剣なまなざしをこちらに向けている碧眼が精悍な印象を与える男性
ロボ好きのひとたち、ごめんなさいね。
ここまで読んで下さってありがとうございます。




