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アルミナ博士が少佐として着任する1ヶ月前。
D8608型駆逐艦、通称コッペパン艦またはコロニー艦と呼ばれるこの艦は、試験運用ということで目的地である NE314159 アスパラギン星系へと向かう途上にあった。
カーディナル標準時間1ヶ月弱ごとに、 NS218896 ムルギラディル星系、 NE174004 ヨーギラン星系、 NE159112 マルキュロス星系と立ち寄り、それぞれから予め募集し抽選された移民を受け入れるためである。
この時点ではマルキュロス星系で、企業関連以外の最後の約1000名の移民の受け入れと移乗作業をしているところだ。
これには既に配備されたD8608型駆逐艦駐留軍と、アイトーカ市――コロニー内部はこう名付けられている――警備隊という警察組織、それにアイトーカ市に支社などを設けた企業らの協力によって連日お祭り騒ぎのような様相で、それら作業が進められていた。
もちろんそれだけではなく、あれこれと設備の新規開発や、アイトーカセンター街を中心とする商業区画の華やかなオープンセールも含めての『お祭り騒ぎ』なのだった。
* * *
【アイトーカ市駐留軍司令部棟地下、戦技情報室】
「ふぅん、商業区画の充実と各所の増員ね…」(メイ)
「メイ、何みてんの?」(キャ)
「んー、アイトーカ新聞よ。」(メイ)
「なんか面白いこと載ってる?」(キャ)
「あとで自分で見なさい。」(メイ)
「いいじゃんちょっとぐらいさー」(キャ)
「ふふっ、しょうがないわねー、平和なものよ、わが艦は。
あちこちのお店でこんなセールやってますー、みたいなのばかりね。
事件なんて、やれどっかの星系でテロが起きた、とか、何派の誰それが
星系首相になった、とか、星系アイドル投票がどうのってのとか…、
あ、マルキュロス星系で悪質ハーブ業者大規模一斉摘発!、
ってのもあるわね。」(メイ)
「ふぅんー、ハーブって料理とかお茶とかのアレよね?、
悪質って何なんだろうね?」(キャ)
「んー…、なんか中枢神経に作用する毒物に指定…?、って書いてあるわね、
麻薬みたいなもんじゃないかしら?」(メイ)
「そういうのこわいねー、何でそんな事するのかなぁ…」(キャ)
「さーねぇ?、あたしたちにはわからないことなんじゃない?」(メイ)
「どこにでも悪いことする人って居るもんよね…、
あ!そだ、ガルさんガルさん(タタタッ)」(キャ)
「はいはい?」(ガル)
「工業区の端っこに陶芸の窯ができたんだってね?」(キャ)
「ああ、もう行ってきたよ」(ガル)
「え?、はやいよ…あたしさっき知った所なのに。」(キャ)
「ウメマツブランドの食器製造工房が隣にあってね。」(ガル)
「へー」(キャ)
「あのウメマツ!?よくもまぁそんなの誘致できたわね…」(メイ)
「32代目ウメマツ先生のお弟子さんが居られてさ、
つい頼み込んで挨拶させてもらったよ。」(ガル)
「ガルさんすごい嬉しそう」(キャ)
「それってすごい力の入れようじゃない?あのウメマツブランドが。」(メイ)
「元41開発局だって言ったら、えらく興味を示されてね、中を見学させて
くれた上に、用地が空いてるからそこに窯をつくらないか、
って持ちかけられたんだ」(ガル)
「え?それじゃ新しくできた窯ってガルさんの?!」(キャ)
「僕の、ってわけじゃないけどさ、例の『重力子波動圧縮理論』を応用した
窯でね、温度管理も火入れもすごく楽なんだよー、
いやー、これから愉しみだねー」(ガル)
「ちょっとそれ超軍事機密じゃん……」(キャ)
「ふふふ、やるわねぇガルさん」(メイ)
「笑いごとじゃないと思う……、
いいのかなぁ最先端素材の応用技術を陶芸に使っちゃって……」(キャ)
「いいのいいの、まさかそんなところに軍事機密が使われてるなんて、
誰も思わないでしょう、ふふっ」(メイ)
「そんなもんなのかなぁ……」(キャ)
「少佐はOKって言ってくれましたし。」(ガル)
「え!?少佐と話したの!?ガルさんずるいよー;」(キャ)
「いえ、話したわけじゃないんですが。」(ガル)
「それでもずるーい」(キャ)
そこに戦技情報室に戻ってきたロック。
「なんか盛り上がってんな、何の話?」(ロッ)
「工業区の新しい窯の話よ。」(メイ)
「へー、あちこち新しいのできてんのなー」(ロッ)
「あちこちって?」(キャ)
「ほら、前にテリーんとことうち(43局)で、球形連結した水のオブジェ、
テストしたろ?、キャシーんとこの思考結晶のデモみたいなのでさ。
メイは知んねーかもだけどよ。」(ロッ)
「ああ、あれあたし入る前だったけど知ってる。」(キャ)
「んでそれの屋内プールができるんだってさ。」(ロッ)
「えええ?球形のプール?」(キャ)
「そう、その最初の運用場所がこのアイトーカなんだとさ」(ロッ)
「球形って、どう泳ぐのだろうね、どっち向いて潜るのかな。」(ガル)
「ふふっ、ガルさんそれどっちが上なの?」(メイ)
「それっていつできるの?」(キャ)
「完成はまだ先っぽいぜ、宣伝もまだ。他にもいくつかあんだぜ?、
ちょっとずつ小出しにしろってさ。だから極秘だってよ、内緒な。」(ロッ)
「ロックなんでそんなこと知ってんのさー」(キャ)
「え?いやだって俺、責任者だし?」(ロッ)
「えー、いつの間にー、ロックにそんなのの責任者って似合わなーい」(キャ)
「うるせー、お嬢がやれっつーんだからしょうがねーだろ」(ロッ)
「わ、ロックまで少佐と話してるー、ずるいよー;」(キャ)
* * *
「なんかチーフ方が盛り上がってマスね」(スミ)
「気にしちゃダメだって、また叱られるよっ」(ニキ)
「そうですよ、ニキの言う通り。手が空いていると思われたら大変です」(トム)
「ほらスミスっ、そっち早く終わらせてよねっ、
トムのほうに回らないとなんだからっ」(ニキ)
「へいへいー」(スミ)
「こっちテスト終わったぜー」(ハル)
「終わりました。(ったくこんなのすぐだってのブツブツ)」(デン)
「なんだよニキ遅っせーなー」(ハル)
「うっさい、こっちのほうが手間かかるんだよっ」(ニキ)
「はいはいそこー、口より手を動かす。データをきっちりとる。大事なんですよ。
ばっちり検出しっかり記録、見逃さないのが肝心。」(テリ)
「「はい」」
「明日の発見はデータ集めにある。市民の安全と信頼のために頑張ろうね」(テリ)
「(テリーさんまた言ってるよ…)」(トム)
「何か言いましたか?」(テリ)
「いいえ」(トム)
「デンとハルマンは、トムの補助を。」(テリ)
「「は、はい」」(デン・ハル)
* * *
「そういえばパルメニオン星系の新型車、なんでハヌマン社で作れんの?」(キャ)
「ああ、キャシーのお父さんがハヌマン社でしたね」(ガル)
「うん、だってこれ、あっちで大ブームだとかで生産追いつかないって。
それにショウにでてたのあれトーランド社でしょ?」(キャ)
「ああ、それは、ハヌマンとトーランドに素材技術を提供したからで、
数年前から提携してるんです。パーツの更新と生産力の向上をってことで、
それで試験的に新しく組み立て加工ラインを設置するんだそうですよ」(ガル)
するとその話をデスクの端末でさっと調べたのか、ロックが、
「おいマジかー、トーランドのバイクに新型かー、うおお…、
あのシリーズカッケーんだよな、スゲー」(ロッ)
「バイクってここじゃ見かけないね。」(キャ)
「禁止してんだよ…、だから俺の愛車も置いてきちまった…」(ロッ)
「そういえば大型バイク持ってましたね。」(ガル)
「なんでバイク禁止なのかな、ここ…」(キャ)
「前に1度、お嬢を後ろに乗っけて走ったことがあってよ…」(ロッ)
「うん?」(キャ)
「そん時、『もう二度とこんな危ないのには乗らない!』ってスゲー怒ってよ、
だからここがバイク禁止なんじゃねーかと…」(ロッ)
「どんな運転したんですか…」(メイ)
「そんなことでバイク禁止に…?」(キャ)
「そういう事やるんだよ!、お嬢は。」(ロッ)
「でもそのショーに出てたハヌマンとトーランドのバイク、素材や開発協力を
したのは41局ですよ?」(ガル)
「マジか…」(ロッ)
「へー?、まさかまた少佐が噛んでたりするの?」(キャ)
「それはもう。もし少佐がそれほどバイク嫌いなら、そんな話に
なりませんよ。」(ガル)
「そういえば、超小型の重力制御機関や波動エンジンやらの計画もあるって
聞いたわよ」(メイ)
「うぉーマジか!やっべー!」(ロッ)
「ウワサよ、ウ・ワ・サ」(メイ)
「なんでぇ、ウワサかよー」(ロッ)
「でもこの手のウワサって、だいたい……」(キャ)
「「「……」」」
「いやいくら少佐でもそこまではヤバすぎだろう、一般向けじゃねーぜ?」(ロッ)
「でもあの少佐よ?」(メイ)
「あの少佐よね…」(キャ)
「あの少佐ですから、あっても不思議じゃないぐらいに思っておけばいいんじゃ
ないですか?」(ガル)
「あ、ガルさん何か知ってるんでしょ!」(キャ)
「知りませんって、心構えの話ですよ。」(ガル)
「なんかもうみんなずるーい;」(キャ)
* * *
【一般名称コロニー艦連絡通路前、移民受付場】
「次のかた。書類を。」
「へぇ、こちらです。よろしくお願いします。」
「そちらに個人端末をセットして下さい。」
「はい」
「ほう、探偵業ですか。実績もあるようですが移住していいんですか?」
「いやー、あっちは同業者多くて…」
「できたばかりのコロニーで探偵業ね…、まさか問題を起こして来たんじゃない
でしょうね?、そういうの困るんですが。」
「いえいえ、そういうんじゃありませんよー、いやですよ、そんなの調べれば
すぐ分かることじゃないですか、ははは」
「ま、いいでしょう、問題を起こさぬように。」
というやり取りをしてマルキュロス星系の移民に紛れて、ここアイトーカ市にネズ探偵社って拠点を構えたわけなのだが…。
「あっ、ネズさん!、こないだはうちの婆さんが無理言っちゃって済みません
でした、これ、つまらないものですが…。」
「いえいえ、うちも仕事ですんで、こういうのは…」
「いえいえ、そう仰らずに、どうぞどうぞ…」
「いやー何か悪いですよ、こういうことしてもらっちゃ…」
「あ!、ネズさん!、近くに来られたなら顔くらい見せてくださいよー、
ほら、これ、皆さんでどうぞー」
「え?!、あ、いや、それ売りもんじゃないですか困りますってそんな…」
「あっ!、ネズさんこないだはありがとうございました、あっ、私も何かお土産を」
「いえいえいえいえ、そういうのいいですって、いやもうホント…」
今やこんな感じでよ、ちょっとそこいらを素顔でうろちょろしたらこの始末よ。
一体どうなってんだか…。
そりゃよ?、表の看板ってもんもあるから相談に来られたらちゃんと親身になって解決するよう真面目にやったぜ?、うちのもんにもそう言って、面倒がらずにちゃんと相手してやれって指導したしな。
「ネズさん、ぼーっとしてないで報告書ちゃんと読んで下さいよ…」
「ん?、ああ、すまん。ちょっと移民手続ん時のこと思い出してた。」
「何か気になることでも?」
「ああ、マルキュロスで移民担当官に『できたばかりのコロニーで探偵業ね…』
なんてイヤミを言われたのをなー…」
「なるほど。その、『できたばかりのコロニー』で何故うちみたいな探偵業が繁盛
してるかって事ですか…?」
「うん…」
――探偵業っつーか、お悩み相談所だけどな。
「前にネズさんが町内会の相談なんてやったからじゃないですか?」
「いやあれは仕方なくだな…」
「そのせいであちこち商店会や町内会から依頼が来るようになっちゃって、
顔が売れてしまってこんな風になっちゃったんでしょ?
もうどこに行っても笑顔で挨拶されまくりですよ、どこ探したってこんな
探偵いませんよ全く…、何でこうなっちゃったんですか?」
――そいつぁ俺のほうが聞きたいぜ。
「そこはほら、皆が新しい住人で、世話役みたいな古い住人ってのが
いねーんだから…」
「こないだちらっとネット見ましたけど、探偵社なのに『よろず相談』
『お悩み解決』ってばかり目につきますよ?
掲示板のほうは、口コミで『相談してよかった』、『つまらない事でも
親身になってやってくれた』、『お父さんとお母さんが笑顔になりました』、
等の絶賛でスレが何本目かになってますよ?」
「いやぁ…、あははは…」
「ネズさん、俺達一体どこに向かってるんですか?」
――いやまさかこんな風になるなんてなぁ…
* * *
【D8608型駆逐艦居住区、アイトーカ市立学園高等部校舎、教室】
「お?、なんだよアル、新しい彼女か?!」
「わ!、いや、そういうのじゃなくて…」
つい個人端末でこの間のバーベキューパーティのときのアルミナ少佐の写真――ホームサーバーに記録されていた庭の映像からこっそり画像化したものだ――を見ていたら後ろからクラスメイトに声を掛けられてしまった。
少し見ただけのつもりがぼーっと見ていたようだ。迂闊だったかもしれない。
新しい彼女か、なんて言うもんだから周囲も敏感になっちゃって、こちらを注意深く見ている。
「え!、ヘンリート君彼女居るの?!」
「い、居ないってば、違うんだこれは…」
「ならいいじゃん、見せろよー、さっきちらっと見たけど」
「あ、ちょっ…」
「バーベキューパーティーじゃん、なんだよ呼んでくれよー」
「軍の集まりみたいね、で、これ誰なの?」
「後ろでメイドが肉にかぶりついてるぜ。」
「軍服ばっかだな」
「ああもう、分かったから、説明するから…」
「で?」
「父さんが軍の人を集めて、うちの庭でバーベキューパーティーしたんだ。
これはその時のだよ。だから別に彼女とかじゃ…」
「なんかヘンリート君と笑顔で喋ってるね。」
「すげぇ可愛いじゃん、うちの学校の子じゃねーよなこれ。」
「誰なんだよ、おい」
「父さんの部下の人、なのかな、アルミナ少佐って言ってた。」
「「ええっ!」」
「少佐って、おい、見たところ俺たちと年かわんねーぞ?」
「なんかどこかで聞いたような…」
「アル、お前すんげーのと知り合いなんだな…」
「なんか飛び級で大学とか出て軍に入ったって父さんが言ってたよ。」
「ひゅー、スゲーなおい」
「ヘンリート君こういうのが好みなんだ…」
「え!、いや…、えーと…」
「赤くなってんじゃねーか、おいマジか、すまん」
「…なんかショック…」(よろよろと半歩さがる娘)
「(ポンポンとアルの肩を叩き)んでどうなんだよ、脈あんのか?」
「(さらに反対側の肩をつかみ)アドレスとか聞いたんだよな?」
「いや、まだ1回しか…、アドレスは…うん…。」
「おいおいしっかりしろよ!、そうだ、呼び出せよ、んで皆で知り合いになって
こいつを応援しようぜ、なぁみんな」
「ちょっと、やめなさいって、迷惑でしょ。」
「そういうのはもうちょっと知り合ってからのほうが…」
「そっか?、とにかく俺らアルを応援すっからな!」
「あっ!」
「なんだよ急に」
「アルミナって、あのアルミナ博士のことじゃないの?」
「「アルミナ博士?」」
「うん、うちのお父さん、ナツメグ税務会計なのよ、んでそこの大顧客が確か、
アルミナ博士って人がいて…」
「おい、そういうのって守秘義務とかあんだから言っちゃダメなんだぜ?」
「他では言わないわよ、でも今はヘンリート君の大事な話なんだから。」
「それもそっか、で、その博士がこのひとだって?」
「うーん、でもアルミナって珍しい苗字でしょ?」
「アル、1枚その写真コルマクラに渡して確認してもらったら?」
「え!」
「お前だって想い人のこと知りてーだろ?」
「う、うん…まぁ…」
そうしてコルマクラ嬢に1枚の画像を転送し、その父親にメールで連絡してもらった。
「(♪♪♪)」
「わ、もう返事が!」
「「はやっ!」」
「はい、うん、うん、え!、はい…、ごめんなさい…。はい、気を付けます。」
明るい表情で通話に出たコルマクラ嬢が、次第に消沈して行くのを見た面々。
しかし尋ねないわけには行かず、一応、とばかりにいいだしっぺの男子が尋ねてみる。
「…ど、どうだった?」
「叱られちゃった…。」
「え?」
「アルミナ博士本人で間違いないって。うちの大顧客だから失礼なことしちゃ
ダメだって、こんな通信がバレたらうちもタダじゃ済まないかもしれないから、
迂闊な事してくれるな、って叱られたわ…。」
「そりゃ悪いことしたな…」
「うちのお父さんめったな事じゃ怒ったりしないのよ…、ちょっとびっくり。」
「この人、そんなスッゲー人だったのか…」
「アル…、お前とんでもない人を好きになったんだな…」
「博士って、大学だけじゃないってことよね…?」
そこに先程から黙って聞いていた後ろの席の娘が、
「ねぇ、もしかしてこの人じゃない?」
と声をかけた。
彼女が机の上に開いたウィンドウには、
『カーディナル中央大学 アルミナ・アユ博士を名誉教授に』
という見出しの記事や、
『後方支援局第43兵器開発局主任 アルミナ中尉の功績 ~勲章授与式にて~』
という見出しの軍広報記事、さらには、
『ワープ機関の改良を父娘2代で成し遂げたアルミナ家』
という専門技術誌の取材記事が写真付きで表示されていた。
「……、ちょっ…と言葉が出てこないんだけど…」
「半端ねー…」
「え、名誉教授ってこれ4年前よ…?」
「4年前って俺ら何してた?」
「中学行って家でゲームしてた…」
「この人、そのときこれだぜ?」
「写真が可愛いわ…」
「なんかちょっとこの人に会ってみたくなってきた…」
「え?」
「なぁアル、お前この人と話したんだろ?、どんな感じだった?」
「え、いや、そんなに長く話してないんだけど、普通だった…」
「普通って、あたしたちみたいに?」
「うん、普通の学生生活をしてないから学校ってどんなですか?って、
皆と変わらない感じで普通に話してた。」
「じゃあ呼び出して学校をみんなで案内しようぜ。」
「だ、だめだよ!」
「「え?」」
「アユさんは忙しい人なんだから…」
「アユさん、て名前で呼んでんのかよ…」
「バーベキューの時に許可を…」
「んで次いつ会うか決まってんのか?」
「来週あたりうちに呼んでお茶とケーキをごちそうしようかと…」
「「おおお」」
「で、でもまだ返事もらえてないんだ…」
「ね、それってさ、ティーパーティーみたいにすればそのアルミナさんも気軽に
来れるんじゃないかな…?」
「!」
「だって、まだ1回話しただけなんでしょ?、それに艦長宅って、私だったら
一人で行くのはちょっと行きづらいかなーって。」
「おお!、それだよそれ!、いいじゃんティーパーティー!」
「友達みんなでやります、是非お越しください、ってさ!」
「ちゃんと女の子も居ますって書いたほうがいいよ!」
「でもアユさんの予定もあるから、返事もらってからでいいよね?」
「うん」 「おう」
何となく納得してしまったアレックスは、早速文面を考えてティーパーティへのお誘いへと変更して送り直したのだった。
何かもうちゃっかりと、アレックスの周囲にいた面々――男子3名、女子3名――も参加することになってしまっていたようだ。でも悪い気はしない。この学校に来て3か月と少しだが皆いい人ばかりだし、席が近かったり班が同じだったりでよく話していた面々だから。
あのバーベキューパーティーの時は、緊張して何を話したかところどころしか覚えていない。たぶん次も同じように緊張してしまうだろう。
皆が居てくれたらそのへんも安心だし、場も和むし話も弾むだろうと思う。
そういう意味で『応援する』と言ってくれたんだと、彼らの気遣いは本当にありがたいと思ったアレックスだった。
* * *
【第三惑星ラスタラ、地上軍基地とその宇宙港】
「ダラズさん、このまま地上軍基地に降りちまっていいんですかい?」
「いいんだよ、ここにあるのぁどうせ俺等の艦ばっかじゃねーか。」
「なるほど、確かにそうですね。」
「おい、基地とは連絡取れたか!?」
「はい!、今ちょうど許可もらいやした!」
「よーし、こっちに回せ!」
「了解!」
「俺だ、ダラズだ。先に降りたヤツから話は聞いてるか?」
『はい、準備整ってます。』
「よーし、んじゃ降りたらすぐ始めっぞ!」
『了解しました!』
地上基地との通信を切ってニヤリと笑うダラズ。
そしてそのまま、艦間近距離光通信・艦内通信を開く。
「ダラズだ。お前ぇら、分かってんな!、降りたらすぐやるぜ!」
「「おう」」
と、艦内で声がする。
「よーし、地上は俺達スネアのもんだ、ここをしっかりシメときゃあ
軍は好き勝手できねぇ!、今のうちに分担ばっちり確認しとけよ!」
「「おう」」
「よーし、通信終了!」
ダラズは通信を切り、モニタに映るラスタラの地上を油断のない目つきで見ていた。
「おい、基地との情報連結はできたのか?」
「すみません、もう少しで。」
「そうか、完了したら言ってくれや。」
「了解」
「ダラズさん、何かあるんで?」
「いや、地上基地にスネアの秘密兵器がどうのって1年ぐらい前によ、
誰か何か言ってたっけかなと、ふと思い出してなー」
「1年前ってったらネスパラのほうでマルキュロスからやたら輸入してた頃じゃ
ねーですかい?」
「ああ、そん時ベルト基地のほうに作業用ロボの装備やら来てたろ?
ああいうのがこっちにも来てんじゃねーかと思ってよ。」
「あー、あの使えない武装、でしたか。」
「宙域じゃあんなもんでドンパチやるこたーねーから使えねーがよ、
地上なら使えそうだろ?、もしあれがこっちにも来てんなら、軍の連中が
この基地を取戻しに来たときにゃ戦力になるからな。」
「そうですね、それで情報連結を…」
「ああ。」
「ダラズさん!、情報連結いけました!」
「おう、ありがとよ!」
「さーて、どんなもんかね…」
そう言うとダラズは艦長席で座席の脇に収納されているモニターを手元に引っ張り出し、基地のデータを調べ始めた。
この基地は本来なら第147辺境警備隊の管轄であり、そのような上位のの閲覧権限は第一辺境防衛基地のアルマローズ司令やこの地上基地司令官に属するものであって、そこから閲覧権限の分配を行う、というのが通常の形態である。
ところがこの第三惑星ラスタラの地上基地というのは名目上は第147辺境警備隊の地上部隊ではあるのだが、中身はもうほとんど地上スネアの人間で埋まっていると言える。
なので宙域に居たがダラズのような狡猾な幹部が、地上のこうした権限を持っていても何らおかしくはなかったりする。
「んー?、なんだこりゃぁ…」
「何か見つかりました?」
「ああ、うーん、アリなのか?、どうなんだこれは…使えるのか?」
「何なんですか…?」
「ちょっとこっち来てこれ見てみろよ…」
「はい…。え?、何ですかこりゃぁ、作業用…じゃなさそうですね、
全高22m ?、巨大ロボ…ってやつですかぃ?」
「らしいな…、何の為にこんなデカい玩具仕入れたんだか
わかんねーが、一応武装はいろいろあるみてーだ。」
「人が乗るんですか?、これに。」
「そのようだぜ?、半年ぐらい前から訓練してるんだとよ。」
「宙域ならただの的ですし、地上でこんなの使って何と戦うんですかぃ?」
「地上でも的だろうぜ、だがまぁ脅しぐらいにゃなるだろうさ。」
「そんなもんですか…」
「ま、使えねぇと決まったわけじゃああるめぇよ。軍はどうせ降りてきても
そうそう無茶な事はしねぇだろうし、地上制圧しにくるとは思えねぇ。」
「はぁ…」
「だったら虚仮脅しでも何でも、動くんなら使えるだろうさ。」
「なるほど…」
「そろそろ着陸すっぞ。この話は制圧後だ。」
「はい。」
この後、第147辺境警備隊第三惑星ラスタラ地上基地はあっさりとダラズら率いる宙域スネア残党を含めた、地上基地にいたスネアらに制圧された。
一部の士官らが見せしめに処刑されたのでそれ以上抵抗する者は居らず、スネアに迎合できない兵士は基地から追われたのだった。
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20150211---- 一部の語尾を修正しました。




