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 翌日。

 朝の主任会議ではキャシーのネズミ飼育と少佐の言う、ネズ探偵社への依頼をした人にアンケート調査を行った、という報告があったぐらいで、他は順調のようだった。

 おそらくそのアンケートの結果をもとに、プラスイメージを煽るようにあちこちに情報をばらまくのだろう。少佐はメイの入れ知恵かと少し思ったが、メイは効率のいい操作を少し手ほどきした程度だそうな。まだ結果はでていないがこのまま任せられそうだ。

 専門じゃない部分だったが楽しそうに作業しているそうだ。これがきっかけで変な性格が発現しなければいいが。


 メイが「こんな感じでどうでしょう?」と、敵性種《HS》への対処計画を打ち合わせ前に打診してきた。

 自信がないのかなと、ちらりと顔を見てみたがにこにこしていた。正直メイはよくわからない。自信があるのかないのかどっちなのか…。


 自席で眠そうに何かを読んでいたリリィが「あ」と言った。


 「少佐、演習行ってきますっ」

 「はい、行ってらっしゃい。」


 びしっと敬礼するので、頷いて軽くでも返礼するかなと、思ったら目をこすっていた。相変わらずこの子は…と思ったが気にせずメイの計画書データを見る。


 「ふんふん、そうね、ちゃんとスネアのことも…、

  ああ、ここを迷ってるのね。なるほど、えっとね、1度にやらなくても

  いいと思うのよ。」

 「2回出るってことですか?」

 「うん、どうせあの人たちパトロールで単艦なのだから、巣のほうには

  近寄れないし、旧型よりも古い型だから巣のほうまで見えないのよ。

  なら、1日かそこら放置していても大丈夫でしょ?」

 「なるほど、そうですね。」

 「だから今日のうちに敵性種《HS》の殲滅だけに集中して、

  片付けておいたほうがいいんじゃないかなって。」

 「そのほうが安全ですね。…ちょっと迷っていたんですよ~、それと、

  スネア艦の無力化方法でちょっといい方法がなくて…」

 「んー、これね、あー…破壊しちゃうのね、脱出させて漂流させる?

  メイ…鬼でしょ、これはひどいわね、あっはは、

  ロックじゃないんだから、あははは」

 「んもー少佐そんなに笑わなくっても~」

 「だって、過激よ?これ、あははは」

 「殲滅しちゃうのは簡単だけど、殺さないように、って言われると

  思ったんですよ~、だめですかー?これ。」

 「うん、ダメ。」

 「やっぱり…、でも難しいですよ~?これ。」

 「あたしがどうして元02局(※)に居たメイに任せたんだと思う?」

   (※ 重力波動機関、つまり艦のコアとなる

     エネルギー炉の研究開発部門)

 「あ~、そういうことなんですか。」

 「うん、まぁでもこれはコッペパンに演算処理してもらわないとねー」

 「具体的にはどういうお考えでしょう?」

 「あ、考えるの面倒になったんでしょう、いいわ、えっとね…」


 と言うと室長席制御台を操作し、スネア艦の解析図を表示させた。


 「だいぶ前の型だけど、ここが、スネア艦のエネルギー炉よね?」

 「はい」

 「そしてここに燃焼経路があるのよ。循環供給パイプね。」

 「はい」

 「ここをまず直せる程度に小規模破壊するの。」

 「直せる程度?ですか」

 「そう、一旦エネルギー炉を停止させるために。そして直させる。」

 「ふむふむ。」

 「で、その間に、炉の内壁に傷をつける。」

 「確かにそれだと機関出力が大幅に減りますね、でも、

  そう上手くいくんですか?」

 「傷でも一部削り取ってポイでもいいのよ、だからその為に、

  近くに艦載機をもってって、位置を正確にするのよ。」

 「なるほど…、すると、2段階の処理になりますね。」

 「そう、計算自体はコッペパンでいいのだけれど、その計算方法は、

  こっちでセットしてあげたほうがいいんじゃないかな、と。」

 「なるほど、わかりました、早速やります~」

 「ううん、こっちは今すぐじゃなくていいのよ。」

 「あ、そうですね。」

 「巣のほうを先にやってしまってからでいいの。なのでこの案の

  前半部分を、このまま打ち合わせで修正してしまいましょうか。」

 「はい、了解です」


 そうして少し早めの打ち合わせとなった。



   *  *  *



 打ち合わせ後、メンバーはぞろぞろと食堂へ向かい、昼食の時間には早いが食堂のおばちゃんたちにちょっと無理を言って、できてるものでいいからと、軽くお腹にいれた一行は、食べ終えると戦技情報室を経由して、また専用艦載機格納庫へ行った。


 今回の作戦は、船外活動をする必要がないため、ゾウさんチームのロックら6名以外の、少佐を入れて15名全てが4機の艦載機で出動する。

 少佐チーム、テリーチーム、メイチーム、ガルチーム、の4組だ。順に1班~4班と普通に呼ぶことになっている。


   1班:少佐、キャシー、トム*,

   2班:テリー、スミス、ハルマン、デン*,

   3班:メイ、サカエ*、キュー、ミャー

   4班:ガルさん、ニキ、ハント*、ジャック,

    *がついてるのは操縦士席と呼ばれる、艦載機長席正面の

    作業台に囲まれた席に着く者。


 補佐官2人はお留守番となった。ステラが不満そうだったが、リリィが戻ってきたときに誰もいないとよろしくない、と説明したらしぶしぶ従ってくれた。


 キャシーはお留守番っていったら涙目になったので、少佐の艦載機へ同乗することになった。そのおかげで、ニキをガルさんの班に回せることになった。


 少佐の乗る艦載機は、他のものより1回り大きい。

 思考結晶カンイチくん。少佐の好みの『最初の1つ』である艦載機だ。

 他の艦載機は名前がついていない。個別に呼ぶときは、艦載機A1号A2号A3号となっている。もちろんコッペパンが補助するし、操縦はそれぞれの艦載機搭載思考結晶がする。操縦士席の者は指示をするだけだ。


 それぞれ搭乗し、出発する段階になってこんなことがあった。


 「じゃ、行きましょうか。…ん?」

 「カンイチくん?、カンイチ!返事しなさい。」

 『少佐~殺生ですわー』

 「何のことよ?」

 『ラゴニアっちゅー海賊んときよそ乗って行きはったでっしゃろ?、

  下手なヤツやったら浮気や~言うて暴れまっせ?』

 「いつの間にそんなめんどくさくなったのよ?、真面目にやらないと

  設定リセットするわよ?」

 『うわぁ、鬼や、鬼やこのひと…』

 「リセット決定ね。」

 『勘弁したってくださいよ少佐、真面目にやりまっさかい!』

 「つまりふざけてたってこと?!」

 『いぃえ、そうは言いまへんが、

  ちゃんとやります!、やらせてください少佐!』

 「そう。わかればいいのよ、じゃ、出るわよ。」

 『了解です~』


 ――ほんと、一体どうしてこうなったのかしら…。



   *  *  *



 第六惑星パロラン。ガス惑星というにはガス成分が少なく、核の大きい不思議なこの惑星には氷が主成分の環があり、多くの衛星がある。

 パロランの衛星は大小11個あり、そのうちの内側から3・5・6・9番目の衛星に、敵性種《HS》の巣が存在することが事前にコッペパンでの分析で分かっている。


 平均衛星軌道面に対して垂直に、距離をとってジャンプしてきた少佐ら4機の艦載機は、1辺が10kmの正四面体の頂点の位置に各機を配置したような編隊で、通常航行で徐々に一番外側、パロランから一番遠い位置にある巣へ近づいていった。2班~4班の3機が正三角形で巣に近いほうに配置される、そういう形だ。


 少佐らが近づいているのは、9番目の衛星ナプラにある巣だ。

 ナプラは小さい岩石天体で、最大直径が30km程の歪な衛星だ。この衛星を最初にしたのは単に「たまたま狙いやすく他の巣の位置から離れていたから」、というタイミングの問題に過ぎない。


 そういったような理由で処理していく順序を決めたら、たまたま外側軌道の衛星から、9・6・5・3という順番になっただけに過ぎない。

 次に処理する巣のある6番目の衛星ヘムル、この巣が一番大きい。表面がところどころ氷に覆われた岩石惑星で、大気もある。この星系で一番大きい衛星だ。惑星の中にはこの衛星ヘムルよりも小さいものもあるぐらいで、第四惑星リスーマより少し小さい程度の堂々たるサイズの衛星である。


 この星系はリスーマの惑星改造の途中で内乱が起き、途中で開拓作業が中断してしまい、それが元で星系に居た開拓事業団が怒って撤退してしまった、という歴史があるらしい。

 このヘムルという衛星であれば、もしかすると居住化できていたかも知れない、と思わせるぐらいの条件があるように見えた。第六惑星パロランには、この6番目の衛星ヘムル以外は、大気など持たない岩石と氷の塊である。サイズも長径15km~1000kmとなかなか豊富な種類をそろえている。



 「距離10万で一時停止!」


 少佐の声で各艦が静止する。


 「やっぱりここまで近づくと随分飛んでくるわねー」

 「そうですねー、でもこれぐらいの距離じゃないと、正確な位置が…」

 「んー、だいたいでいけると思うのよね、ちょっと離れましょう、

  編隊のまま距離12万まで後退します!」


 編隊を組んだまま後退していく4機。


 「カンイチくん、どんなもん?」

 『全然余裕ありまっせ~』

 「どうもカンイチくんの言うことはアテにならない気がするのよね。」

 『うわっ、ひどいわ少佐~、安心と信頼のワテに~』

 「何ムツミネみたいな事言ってるのよ…。キャシー、巣のほうはどう?」

 「ばっちりです、いつでもいけます。」

 「そう、コッペパン、いける?」

 『はい少佐、いつでもどうぞ』


 こうしている間にも、移動可能状態になって巣の近くからまばらに浮いていた敵性種《HS》が向かってくる。この一番外縁の巣は一番若い巣なのか、壊れた作りかけの艦のような形だったり、ミサイルのような形だったり、よくわからない形だったりするが、こちらに向かってこれる状態ということは、何らかの機関を模倣したものが存在するということだ。


 飛んできた敵性種《HS》に対しては、4機がそれぞれ担当分配して、近くに来たものから順番に、核を破壊して惑星パロランの近くにすっ飛ばし、突っ込ませている。

 恒星に突っ込ませるのが一番確実なのだが、数が多いのと、距離があるので消費するエネルギーが大きくなりすぎてしまう。コッペパンだけならやれなくはないがあまりにも消費が多いと艦長側のほうにもバレてしまう。艦載機のエネルギー量だと難しい。

 なので、核さえ破壊してしまえば復活しないし、質量が巨大な惑星パロランならだいじょうぶだろうという判断だ。

 その作業をしているのが、それぞれの艦載機搭載思考結晶らであり、処理の確認や補助をしているのが1班であれば操縦席に乗ったトムだ。2~4班は巣に近いほうに居るので2・3人で作業している。


 そしてコッペパンに頼む部分が、巣自体の処理だ。こちらは移動できないので、衛星表面にへばりついているようなものだから、位置を割り出せば処理は順番にやってしまえばいいが、量が多いのでコッペパンに担当してもらう。


 「距離11万か…、このへんでいいかな、全体一時停止!」

 「2~4班、結構とんできてるけど、いけそう?」

   『余裕あります。だいじょうぶです。』(テリ)

   『いけます』(メイ)

   『距離10万の時点でもかなり余裕ありましたよ、少佐』(ガル)

 「そう、まぁ最初だし。この次のところだと増えるから。」

   『練習、ですか』(テリ)

 「甘く見るわけじゃないけどね。これぐらいを指標に敵の数で

  調整しましょうか、そんな感じで。」

   『『了解』』(テリ・メイ・ガル)

 「じゃ、コッペパン、巣のほうの処理おねがい。」

 『はい少佐。開始します』


 正面のモニタに表示されている巣の拡大映像。周囲のマーキングの色がオレンジから緑に変わってゆく。それと共に、モニタに表示されている数値がみるみる減ってゆく。

 周囲のモニタには、4機の周囲に飛来してくる敵性種《HS》がこちらは赤くマーキングされて表示され、処理されていく。


 「巣ってあといくつあるんだっけ…」

 「全部で4つですよ少佐。」


 ふと呟いた言葉に、聞こえていたのかトムが返事をした。


 「1箇所移動込みで1時間くらい、ってところかしら。」(少佐)

 「そうですねー、次のところが一番多いようですね。」(トム)

 「ショートジャンプで近づくのもちょっと危なげね…」(少佐)

 「ゆっくり確実にやりましょうよ」(キャ)

 「あら、キャシーに言われちゃったわ。」(少佐)

 「「あはは」」

 「余裕がでてきたようね、キャシー」(少佐)

 「だって4つあるならあと4時間かかるってことですよね?」(キャ)

 「そうね。」(少佐)

 「なら少佐がいつも言うように、余裕を持って事にあたらないと」(キャ)

 「よくわかってるじゃない、その通りね。じゃ、何か飲む?」(少佐)

 「少佐、作戦行動中ですよ」(トム)

 「冗談に決まってるじゃないの。」(少佐)

 「「あはは」」


 というようなやり取りをしながらも、的確に敵性種《HS》の処理が進んでゆく。


 この1班の会話は他の艦にも筒抜けなのだが、さすがに他からの会話はこちらから呼びかけるか、あちらから用でもないとONにしない。

 きっとこちらの会話にはそれぞれの艦で何か言ってるのかもしれないが。


 こうして特に危険になることもなく、作戦開始から5時間とかからずに、第六惑星パロランの衛星にあった4カ所の敵性種《HS》の巣が駆除された。


 帰る時、

 『ワテ頑張りましたで?、少佐、少佐、なんか言うてくれても

  ええんとちゃいますか?、コッペパンはんにだけご苦労様て、

  ちょと冷たいんやおまへんやろか?、少佐、少佐』

 「あーはいはい、ごくろうさまカンイチくん」

 『そんな棒読みで言わんかてええですやん~、めんどくさいから

  相手したったーみたいな感じで、ワテ傷つくわ~』

 「あんたいい加減にしないとホントにリセットするわよ?」

 『そんな殺生な~、ちょっとした愛情表現ですやん~、ほら、ね』

 「あーもう鬱陶しい、モニタをピンクにするな!、もぅ何この漫才!

  戻ったらリセットする!絶対する!」

 『いやぁぁ!やめて、少佐おねがいやさかい!、もうしまへん、

  真面目になります!、ごめんなさい堪忍してください!、

  リセットだけはぁぁ!』

 「……」


 ――もぅほんとこいつだけはどうしてやろうか…。


 「(怒ってる少佐も新鮮だわ)」

 「キャシー、何か言った?」

 「いえ、なんでもありません。」


 もちろんこれらは2~4班に筒抜けなので、それぞれの艦載機内は、疲れとともにちょっとした笑いで満たされたのだった。



 テリーのいる2班では、笑いが途中ですぅっと消えた。

 デンのこの小さな独り言によって。


 「(怒ってる少佐…萌え…くふっ)」



   *  *  *



 敵性種《HS》の巣を殲滅し周辺を掃討した少佐らは、ある程度の距離まで通常航行で移動、近づく物体が敵性種《HS》ではないことを確認して、周辺宙域の安全が一旦確保されたことが分かると、コッペパンへと帰還した。

 作戦中に取ったデータを再検証するため、戦技情報室に戻って作業するのだ。

 とりあえずは全て対処したはずなのだが、安全のために、無人監視装置を置いて、一度帰還して数時間様子をみるのが定石となっているのもあり、この間にそういった後処理をしておくのだ。


 順番に除染処理を受けて格納庫に収容され、各機それぞれから降りた少佐ら15名。

 格納庫で全員揃うのを待ってから、歩き始めた時、


 「なんかビーム撃ってたよね、敵性種《HS》。」(キャ)

 「そうですね、射程距離の遥か遠くでしたけど。」(ガル)

 「敵性種《HS》って射程距離の概念ないのかな。」(キャ)

 「そもそも射程を判断しているとは思えないんですよ。」(テリ)

 「少佐は何かご存じないですか?」(ガル)

 「それ、論文にして認められたら賞がもらえるわよ。」(少佐)

 「そうなんですか?!」(キャ)

 「それぐらい難易度が高かったってことなの。そんなデータをいくつも

  取れるぐらい、何度も近くまで行って来たってことでしょ?」(少佐)

 「そうですね、旧型艦だったら命がいくつあっても足りませんね。」(テリ)

 「それに4-3以上じゃないと敵性種《HS》に武装がないから…」(メイ)

 「あー、そっかー」(キャ)

 「でももう新型艦ならデータもとれるんですよね?」(メイ)

 「だからって不用意に近づいたら危険ですよ」(ガル)

 「だからいろいろ秘密にしてるのよ。いつの時代でも、

  新兵器を造ったら主戦論者って人種が騒ぐのよ。

  何かつくるたびに出征だの戦争だのやられちゃたまんないわ」(少佐)

 「人間相手でもナンセンスですけど、敵性種《HS》相手だと

  もしそれで覚えられてしまっては大変ですからね」(ガル)

 「守るための力、って少佐が言ってたけど、

  この艦にきてからあたし、実感してきたところなのに…。

  武力ってなんだろう、ってそういう話を聞くと思っちゃうわ…」(キャ)

 「人類はそれをずっと、ちゃんとした答えがだせないまま

  歴史を刻んできてるんだと思いますよ」(テリ)

 「なんか話が哲学的になってきたわね」(少佐)

 「そうですね、」 「「ははは」」 「「ふふふ」」


 そこへ少佐の個人端末に連絡が入った。


 「あら、ベンデルマンさん、どうしました?」

 『ああ、地上にいる連中と連絡をとったので、報告をと。』

 「そう。どうだったの?」

 『リスーマ(第四惑星)のほうは納得してもらえた。

  説得には少し時間がかかったが分かってもらえたさ。

  結局は、大賛成だと。手伝えることがあれば言って欲しい、とも言われた。』

 「よかったわね、娘さんの居るほうでしょう?」

 『おお、知っていたのか。』

 「ちゃんと事前調査はしてあるもの。それでラスタラは?」

 『問題はそっちなんだ。申し訳ない。説得できなかった。』

 「謝ることはないわ。地上の人達の事情でしょう、軍が嫌い、とか何かの

  理由だって考えられるもの。それで、ラスタラには何人ぐらい居るの?」

 『ざっと200人ぐらいだな。』

 「宙域に出てこられる規模の設備をもっているの?」

 『設備はあるが出てこないだろう、金もないだろうし、

  地上の生活のほうが大事だろう、あいつらは。』

 「ならとりあえず心配しなくても良さそうじゃないの。」

 『そうだな…』

 「とにかく今は、宙域を平定して安全にすることが先決よ。」

 『ああ、そうだ、皆にも話した。皆本気で取り組むと誓ってくれた、

  ありがとう。』

 「礼にはまだ早い気もするけれど、みんながやる気になってくれる

  のはいいことね。じゃ、また何かあったら連絡くださいな。」

 『ああ、分かった、では。』


 通話を切ると、


 「忘れてたけどお腹すいてきちゃったわ。このまま食堂いかない?」(少佐)

 「それはいいんですが、ステラ中尉とリリィ少尉はいいんですか?」(テリ)

 「あ、それもそうね。」(少佐)

 「とにかく一旦戻りましょう。」(ガル)


 15名乗ると少し窮屈に思えるエレベーターに乗り、廊下を歩いて戦技情報部へぞろぞろと入る。


 「少佐、みなさん、おかえりなさい。」

 「ただいま。」

 「ただいまステラさん」 「「ただいま」」

 「ただいま戻りました」 「ただいまステラ中尉」

 ステラが言うのにそれぞれが返事をして、各自席に着く。


 操縦士席に居た者は、乗ってきた艦載機の機能チェックや整備を設定。

 分析担当の者はそれぞれの艦載機から、記録されたデータを移動し再検証処理をするように思考結晶に指示操作を行う。

 こうしてから食事に行くのだ。


 「みんなでどこ行ってたんですかぁ?、少佐ぁ」

 「ちょっとデータ取りに行ってたのよ」

 「そうだったんですかー」

 「これからもちょくちょくあるから、お留守番よろしくね。

  何かあったら室長室の留守番コッペパンにね。」

 「はーい」

 「で、あなたたち食事は?」

 「あ、はい、さきほど済ませてしまいました。」 「ですぅ」

 「そう。じゃ、あたしたちで行ってくるわね。」

 「「はい」」

 「今日はまだ少し掛かりそうなの。

  なんなら先に官舎へ帰ってもいいわよ?」

 「いえ、お待ちします。」

 「そう?、あーそうだわ、もし何なら奥のシミュレーターで

  (そういう部屋もある)艦載機操縦の基本編からやってみるといいわね。

  そのうちやってもらうこともあるかも知れないし。

  非接触マニピュレータの操作だって、慣れないと難しいのよ?

  ああ、あれは拡張編だっけ?、進めていけば出てくるわ。」

  (※ 基本編、応用編、拡張編、技術編、上級編と5段階ある)


 少佐がそう言うとステラは嬉しそうに、

 「あ、はい、ありがとうございます。」

 と言い、リリィは興味を示したのか、いつもの犬コロのように、

 「なんか面白そうですね!、やってみたいです!」

 と言った。


 少佐は微笑んでうんうんと頷き、テリーにシミュレーターの準備を指示――と言ってもこの部屋の制御盤でちょいちょいと設定するだけだが――して、それを見てからテリーに礼を言い、ステラたちには「今からでも使えるわ。」と声を掛け、「何たべようかな~」とか言いつつ食堂に向かって行った。


 余談になるが、ステラが嬉しそうなのは、少佐が来る前の三ヶ月間、戦技情報室のメンバーがよくその艦載機訓練などの話で盛り上がっていたりしていたのを見ていたからだ。

 時折聞こえてくる勝っただの負けただのの声に、忘れていた何かをくすぐられるように好奇心を刺激されていたが、訓練メニューということで、許可が出ていなかったステラは話に参加できず、寂しい思いをしていたのだ。


 テリーもそのあたりの事を察していたので、少佐から指示されたときは喜んですぐに設定して今からでも使えるようにしてくれたのだった。もちろん他のメンバーだって、ステラが嬉しそうに少佐に礼を言ったのを喜ばしく思い、ステラを見ながらうんうんと笑顔で頷いていた。



   *  *  *



 「え…、カツカレーないの!?」


 券売機の前で絶句した少佐を、通りかかったオオモリさん(食堂のおばちゃん)が見て、

 「ああ、今日はカツがたくさん出ちゃってねー、ついいまさっき

  切れたとこなのよー」(食堂)

 「そんなぁ…、カツのないカツカレーなんて…」(少佐)

 「それは普通のカレーライスでは…?」(ガル)

 「だってずっとカツカレーって思って歩いてきたのよ?!

  いまさらどうすればいいのよ……」(少佐)


 よろよろと嘆きつつ券売機の前から横にずれて、後ろに譲った少佐。気持ちはわからなくはないが大げさではないかと苦笑を浮かべて食券を買う他のメンバーたち。軽く笑いながら厨房への扉を開けて入るオオモリさん。


 「少佐、エビフライカレーならまだあるみたい。」(キャ)

 「妥協したらエビフライに申し訳が…」(少佐)


 どういう理屈なのか。


 「いいわ、おうどんにする。トッピングはこれと、これよ!」

 タシっ!タシっ!と選択して食券が3枚出てくる。


 カツカレーとはかけ離れたその選択に、あっけにとられたような近くに居た者らの視線をよそに、

 「オオモリさん!、おうどんひとつ!、これとこれも!」

 「おや博士ちゃん、カレーはいいのかい?」

 「そっちはまた今度にするわ、あと、博士ちゃんはやめてって

  いつも言ってるでしょっ、フェアリーちゃんって呼ぶわよっ」

 「はいはい、少佐どの。あっははは」


 そのやり取りを聞いていた面々がひそひそと、

 「フェアリーちゃん、って?」(キャ)

 「オオモリさんのことですよ。」(ガル)

 「そう呼んで怒られないのは少佐だけなのよ。」(メイ)

 「オオモリさんって43局の食堂にも居ましたね。」(トム)

 「でも別人でしょう、体型から見ても明らかに。」(テリ)

 「ねぇなんでフェアリーなの?」(キャ)

 「本名だそうですよ。」(ガル)

 「「ええっ?!」」

 「それはまた…なんというか…」(トム)

 「トム、聞こえたらおたまが飛んでくるからダメ。」(サカエ)

 「おっとと」(トム)

 「あ、少佐そっちに座るんですか?」(キャ)

 「だってそっちいっぱいじゃない、こっちでいいわ。」(少佐)

 「じゃーあたしもそっち行きます」(キャ)

 「そう。じゃ、いただきます。」(少佐)


 ちらっとキャシーのエビフライカレーを見たようだが何も言わず、ちゃんと手を合わせてそう言った少佐に合わせて、皆も待っていたのか、同じようにして言う。


 こうして戦技情報室のロックら6人を除いた面々は珍しく10人以上で、ピーク時間を過ぎて混雑の引いた、しかしまだ少しにぎやかさの残る食堂で遅めの夕食を摂ったのだった。



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20150211---- 一部の語尾を修正しました。

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