プロローグ そうして彼等は姿をくらませた
みらいのわたしへ
こんにちは。
わたしはいま、小がっこう一年生です。
今日のじゅぎょうで、みらいのじぶんにおてがみをかいてみようと言われたので、かいています。
いまのわたしは、まだわからないことがいっぱいでまだまだ子どもだけど、いつかすてきなおねーさんになりたいです。
いまのわたしはどうですか?
すてきなおねーさんになっていますか?
たのしく、すごしていますか?
2***年 1月26日
過去の私へ
こんにちは。
私は今、23歳になりました。
ふと、過去の私が書いた手紙のことを思い出したので、書いています。
残念ながら、今の私は小学校一年生の頃と大して変わっていません。背が伸びて、髪の毛が短くなって…変わったのは見た目くらいです。
過去の私はどうだったでしょうか?
どんな私を描いていましたか?
楽しく、過ごしていましたか?
その夏。
彼女は姿をくらませた。
人通りが多い交差点。
少し遠くにある信号機が夏の陽炎にのまれてしまうような、そんな暑さだった。
生きているようで生きていない。
この世界には「なんとなく」生きている人間が溢れ帰っている。
そんな惑星で生きていくのは、億劫でつまらない。
そう考えている人間が、たまたま……。
本当に偶然。
奇跡的にその場所にいた。
揺らめく陽炎。
溢れている人間。
焦るように、逃げるように人混みを掻き分けて走る彼女。
その場所にいた、何人かの人間は
その彼女の、心の声を聞いたのだった。
『ねぇ、誰か。
助けて』
虚しくも、そんな彼女の声は蝉時雨にかきけされて消えてしまった。