第6話「伊原と男の子」
伊原真は学生に恐れられている。
女性教官特有のオアシス的癒しはまったくない。
隣の中隊にいるおっとり系女性将校である真田中尉とは対照的に大きな声と男勝りの言葉でビシバシ指導する。
それも容赦なく。
今の一年生は桜が咲くと同時にこの学校に入隊してきたばかりである。
そんな一年生の間でも、桜が散るころには恐れられる存在になっていた。
慣れない間に数度厳しい指導を受けた一年生たち。
もちろんそれだけでなく、上級生達が彼女の恐ろしさを誇張して伝えているせいもある。
昨年、彼女に強烈な指導受けた一部の学生がいる。
ことさら恨みをもった彼らは伊原に対する密かな意趣返しをしているつもりなのかもしれない。
それにしても……。
最近あまりかんばしくない噂を聞いたことがある。
どうも伊原に学生達があだ名をつけているようだ。
私に対する『ダメ軍人』『ロートルおじさん』『窓際軍人』……まあ、そんなものはかわいらしいし、間違ってはいない。
だが、彼女に対するあだ名は違和感を感じていた。
『男の子』
おとこのこ。
そんなあだ名。
確かに、伊原は化粧っ気もなくベリーショートのぼさぼさ頭が目立つ。
とにかく短髪で一八〇センチに近いぐらいの背の高さがあり、そこらへんの男性並みに肩幅が広い。
逆に、あのテレビアニメに出てきそうな独特のかわいらしい声、大きな目とぷっくりしたアヒル的な唇のある顔が、その体格や言動を強調していた。
けっして男の子とは思わない。
アンバランスさはある。
それにしても……。
あまりに単純。
学生の想像力の無さ。
この学校の教官のひとりとして心配になるレベルのあだ名。
男勝りでかつ年上の女性教官に『男の子』とは。
子はいらない。
ああ見えても大人の女性なのだ、彼女は。
□■■□
職場の朝。
自慢じゃないが私は学習能力があまりない。
その事実をたった今実感していた。
何度も繰り返してしまう失敗、過ち。
実感、いや痛感と言っていいだろう。
二度とやるまいと心に誓い、自分の犯した過ちの産物――クソ不味いコーヒー――をすすっていた。
安くて大きなビンに入ったインスタントコーヒーの粉を、スプーンを使わずそのままコップに入れた。そして、もっさりとその粉がカップの中に入ってしまったのだ。
少し湿気てしまったものを戻すのもあれなので、カップにお湯を注ぐ。
わかっていたことだが、それはコーヒーの粉を食べているような味になってしまった。
液体がサラサラではなく、どことなく川底のヘドロのような感じになっているのも、不味さを手伝っている。
苦すぎて、かつ、舌触りが最悪な液体。
しかしながら、私は貧乏性も手伝ってコーヒーを捨てるのを憚った。だから「戒め戒め」と自分に言い聞かせながら飲んでいる。
そうやって飲めば、何か人生の足しになる……かもしれない、そう無理やり言い聞かせながら。
そんな悲しい職場の朝を迎えていると、いつものように廊下の方から、伊原少尉の厳しく尖った声が響いてきた。
まだ、朝の七時をまわってないのにご苦労さまだなぁ、そう思いながら、泥のようなコーヒーを口に含む。
泥コーヒーのむせ返るような濃い香り。廊下からは怒気が強烈に含まれた激しい罵声。
それがミックスしたせいだろうか、なんとなくぞわぞわした気分になってしまった。
……まずいなあ。
私はコーヒーを飲むのをやめて将校室の入り口に向かった。
伊原がどうも感情的になりすぎている。
ああ、女の子だもんなあ。
あの日かなあ。
と、つぶやきそうになったが、セクハラセクハラと戒めてドアノブに手をかけ廊下に出ようとする。しかし、私なんぞが行ったところで何もできないので、ここで様子を伺うことにした。
余り聞き耳立てるのは良いことではないが、廊下の状況が気になってしょうがないから伊原ゴメンねといいながら声が聞こえるところまで扉に顔を近づける。
指導している……というよりも、彼女は怒っていた。
どうも理由は、まぬけな二年の男子三人組がお痛をしてことに起因するようだ。
内容はその三人がお隣の一中隊にいる生意気な学生を襲ったところを不意に現れたロシアからの留学生に見られて、まずいと思ったのか逃げ出したらしい。
残念なことにロシアからの留学生はちゃっかりとそのことを伊原に言ったようだ。
ちなみに、この三人。
一対一じゃ返り討ちにあったから、棒っ子使って殴ったりしたらしい。
まあ、なんとも情けない二年生。
そりゃ伊原が怒るのも仕方がない。
「お前らは卑怯者だ!」
彼女はどんどんヒートアップしていた。
怒声に対し、どーせ不服そうな顔をしているんだろう。
しょうがない、教官に反抗することがかっこいいと思っているタイプなんかもいる。そして、我々教官はけっしてそんな挑発に乗ってはいけない。
「性根叩き直すっ! 歯を食いしばれ」
あーあ。
挑発に乗ってるし。
若いって面倒臭い。
私は扉を開ける。
無駄にその扉につま先をひっかけコケそうな姿をしながら。
声はできるだけいつものように気が抜けた感じに。
「どーしたー、二年生になったってのに、お前ら相変わらずクソ間抜けな顔を並べて」
間抜けなのはあんただ。
そういう視線。
私はするりするりと彼女とお間抜け三人組の間に入っていく。
彼女はその振り上げそうになった拳をしぶしぶ下げていた。
まあ、これでいい。
彼女はそうとう興奮しているようだ。いつものアヒル口は硬く結ばれ、頬が赤く上気し、やや涙目になっている。
私はお間抜けくんたちの肩を抱く。そうしながら両際の子たちの首下の皮を思い切りつまんで、そして捻った。
彼らは痛がりながら団子の様に固まった。
「おっちゃんがお前たちのアホ間抜けなお話をよーく聞いてやるからちょっと行こうかねえ」
睨み付ける彼女の視線を背中に感じながら進んでいく。
まったく。
伊原は卑怯な行為――そういった男気のない学生――に対して激しい指導をする。
頭に血が上って怒りをぶつける。
正義感が強すぎるのだ。
まあしかし、教官という「強者」が学生という「弱者」に手を挙げることはよくない。
それは、三対一で卑怯なことをするこの間抜けたちと、一対三でも勝ってしまう伊原がやっていることが同じことになってしまう。
教官ってのはさ、怒ったらだめなんだよ。
理解ができていない人間に対する怒りなんて、無駄な行為なんだ。
相手の心の奥深くには届かない、そんな指導は意味がない。
まあ、その指導を私がうまくできている訳じゃないが。
私はつねる指に緩急つけながら、彼らを指導室へと誘導する。「痛てて、痛てて」と呻く彼らに「やかましいわ」と一喝。
つい笑ってしまう。
まあ、こいつら言っても治らないと思うが、放置するのは簡単。
面倒くさいが、少しでもいい方に持っていくため、指導はしないといけない。
指導室から逃げようとする彼ら。
その頭上をスパコンと平手打ち。
涙目になる間抜けくんたちを私は「男の子、男の子」と励ましながら膝蹴りをして、部屋に押し込んで行った。
「なぜ自分の指導を止めたんですか?」
将校室に戻って扉を開けた瞬間、私をとがめる声が響いた。
伊原は真っ直ぐに私を見据えている。
それにしてもいつも真っ直ぐな瞳だな、と私は思う。そして、情けないことがその迫力に少しのけぞってしまった。
彼女は私より七、八センチほど背が高いため、自ずと見下ろされるような態勢になってしまった。
まったくうちの若い奴らは……と思う。
ことごとく生意気であった。
通常、士官学校の期別が十数年先輩の私に対して、そういう口を聞くことも憚れるというのに……。
でも、まあしょうがない。
それもわかる気がする。
ダメダメ万年大尉の私なんぞ、先輩としての威厳もクソがないものだから。
若く才気溢れる彼女達にしてみれば、なんだこいつは……という存在だろう。
教官というだけで、学生の理想像にならなければならないと真面目に考え、自分を律しているような若人たちだ。
ついつい自然体で物事に接してしまう私を彼女達は理解できないだろう。
年の功、経験値、それだけは多いから彼女達の気持ちを私は理解できるが。
「伊原少尉」
立ち話するようなことではない。
そう思って、私は自分の椅子に座った。
決してあの態勢から逃げたわけではない。
座ってどっしり構えることは年長者の余裕と思って欲しい。
「……指導ってのはさ、殴っていいときと殴っちゃダメな時があるんだよ」
私は足を組もうとするのを止めた。
ついつい癖でやってしまいそうになる。
最近のことだった。
それをやめようと思ったのは。
新聞の端っこにあるような記事。
そこに胡散臭そうな禿頭の医者の写真といっしょに『足を組むとか腕を組む仕草というものは無意識に相手の考えを拒絶する深層心理の表れです』という記事を読んだせい。
ついでに、笠原先生にそれを聞いたところ『カウンセラーはそういう仕草をしないようにしてるんですよ』という答えも手伝った。
そういうことがあって、足や腕を組むのを我慢している。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、伊原は私のデスクの横に立ったまま、訝しげな表情で私を見下ろしていた。
「ショック療法をやっても、君が嫌われるだけで、あの間抜けな三人の心に響かないということだよ」
「そうは思いません」
彼女は声をやや低めにしてそう言った。そして腕を組む。
「自分は、卑怯な行いをした三人に罰を与えるべきだと思います」
「罰ね……」
「小隊長は……教官は、学生に嫌われるのが仕事ですから……副長が心配するようなことはありません」
やれやれ。
どうも、話が噛み合わない。
「私は、伊原が嫌われようがどうなろうが知ったことじゃない、ただ、君のやり方では、罰を与えても……体罰を与えても何の効果もないと言っているだけだ」
「自分だったら、卑怯な行いをしてしまったら殴ってもらって、改心したい思います」
「そうだな、君だったらそうかもしれない」
「あの三人もです」
「あの三人は君じゃない」
少し語尾が強くなってしまった。
ちょっとだけ感情的になりそうになった自分を止める。
「……」
私は、ため息を飲み込む。
柄にもなく興奮しているのは私なのかもしれない。
脇の下に汗がでるのを感じた。
「あのな、単純に言うと、ショック療法が効くのは出来事がまだアツアツの間だけなんだ」
「熱い間……」
「そうだ、悪いことやっちまったその時間と場所でしか効果がない」
彼女は何かを言おうとして飲み込んだようだ。
私は言葉を続ける。
「あの三人がやっちまったのは、一昨日だろう? すでに時間が経っている……そこで、いくら君が彼らを咎めようと殴ろうと何もならないんだよ」
「ですが、彼らは悪いことをしました、罰を与えなければなりません」
「この学校で、罰は、体罰も含めてだけど、それはなんのために与える?」
「……それは」
私は深く椅子に寄りかかる。
「それは、彼らを更生させるためです」
「そうだ、でもな、悪いことやっちゃった子たちは、悪いことと判らないでやっちゃったとか、悪いことだと思ったけどまあいいか……ぐらいでやってるんだよ、んーっと、うまく言えないが」
「だかこそ戒めが必要です」
私は背筋を伸ばす。
「あのな、叩かれて彼らに何が残ると思う?」
「自分たちの行いに対する罪悪感と過去に対する反省です」
彼女は私から一切目を離さずに言った。
正義。
それが、一言一言に込められている。
「例えば、今、私がさっきの行動が間違っていると言ってだ……そういう理由で伊原をここで殴ったとして……君に何が残る?」
「……それは」
彼女は初めて目を少しそらした、しかし、負けじと私を見据えなおした。
私は自然とため息が漏れた。
「更生させることが目的としたら、手段は『反省させること』なんだ……反省させるためには、羞恥とか公共の心とかに目覚める、まあ簡単に言えば、叱られたことを納得させることなんだよ、それをするためにはいろいろあるんだけど」
私は一息ついて続ける。
「殴るってのは、そういう手段の先っちょにある、入り口で振り向かせる……興味を引かせる手段のひとつに過ぎないんだ……その後の指導ってのが真剣になればなるほど面倒くさくてしょうがない」
彼女の瞳が少し揺らぐ。
「殴るのはいいとして、その後、何か彼らを納得させるような、そういう指導の仕方まで考えていたか?」
大丈夫、この子は頭がいい。
私は言葉を続けた。
「逃げるな、自分の指導力不足から逃げるな」
「……」
彼女が唇を少しだけ噛みしめた。
「十分なんだ、将校室の目の前、それも怖い怖い伊原少尉呼ばれただけで、十分さきっちょの興味を引くことはできていたんだ……そこでどかーんってびっくりさせると、そりゃ、逃げちゃうよ……心が逃げちゃったら、どんなに良いこと言っても届かない……やった感だけはあると思うけど」
「……」
沈黙が続く。
私は自分のデスクに放置していた泥水コーヒーを口につけ、冷めたらさらにまずくなることを確認した。
まずい。
いや、この空気、気まずい。
この沈黙は辛すぎる。
私はさあっと熱が冷めていた。
だいたい、偉そうなことを説教する自分が辛い。
痛いおっさんだよ、おい。
うわあ。
気持ち悪い。
なんで、こんなことで熱くなってるんだ……。
そんな自分が急に恥ずかしくなる。
私は大げさに咳払いをして、そういう感情をぜんぶぶっ飛ばそうと試みた。
「あー、あれだ……偉そうな事をいったけど、なし、今の話はなし、自分で言っててなんだか恥ずかしくなってきたから、なし……忘れてくれ、頼む、もう無理」
彼女の表情からはさっきまでの気難しい感じはなくなっていた。
やや充血した瞳のままだが、いつも私に向けることが多い表情――呆れ顔――になっている。
「あのな、私はね、女の子がこう、あれだ、殴ったりとかさ、そういうのを見るのは嫌なの、ほら、娘いるでしょ……いるというか転がり込んできたというか、まあそんなことはどうでもいいんだけど、あー……そういうものなの、それに、伊原もけっこうかわいいと思うし、おじさん的にはほんと、嫌だよね、バカヤローってかわいい女の子がひとを殴る姿ってのは……耐え忍べないのよ、むーりー」
そうだ。
耐えれない。
私のように、殴って殴って、そして……。
血と硝煙が立ち込める世界で犯した私の罪。
この子にそんな思いをさせたくない。
「あの三人は私がうまーく言い聞かせたから、あと一中隊の真田中尉に叱った後のケアもお願いしたし、そう、もうこの話おしまい……ああ、そうだ、中隊長に呼ばれていたのをすっかり忘れれた、そいじゃ、行ってくるから、うん」
叱ったあとは必ずケアを入れる。
癒し系女性教官に今頃慰めてもらっているだろう。
あの三人には私の体験を生々しく語ったため、恐怖心を与えすぎた感がある。
私は逃げるに部屋の出入り口に向かう。そしてドアノブに手をかけようとした。
不意に扉が開いた。
私はつかむ物を掴めず前のめりになるようにバランスを崩す。
おっさんの沽券。
ケンケンをして踏ん張る。
「何やってんですか? 副長」
頭山少尉が扉の向こうに立っていた。
「ん? 伊原も」
頭山と伊原は士官学校同期だ。
はたから見ると男友達のように仲がいい。
一時期『この二人はできてる』と思っていた。その後、頭山本人からカミングアウトを受け……彼がゲイという話を聞いて、それは勘違いだとわかった。
ただ、伊原はどうなのだろう……。
「伊原、涙目? おい、どうした?」
「……いや、これは、何も」
じろりと私を睨む頭山。
もう一度言う。
私は大先輩、十期以上先輩。しかも鉄の上下関係がある士官学校の先輩である。
ついでに大尉。
こいつら少尉のペーペー将校である。
それなのに、そういう目をするなんて、非常識極まりない。
「何やってんですか! 副長っ!」
同じセリフが二回。
ただし最初はあきれた声、そして今のこれは怒りが込められた声だ。
「何もやってない……うん、何もやってない、そう、な、うん」
同期の絆は深い。
責め立てるように、頭山が迫ってくる。
私は大先輩として堂々と話をしようとするが、彼の迫力に気負いしてしどろもどろに言葉をつなげることしかできなかった。
助けてくれという目を伊原に向けるが、彼女は黙って俯いたままだ。
心なしかさっきまでの高揚感とは別に顔が上気していた。
好きな男に弱い姿を見られるなんて、彼女の男気が許さないのだろうか。
若いからしょうがないが、もう少しそういう機微な感情というものを頭山にも感じとってもらいたいものだ。
デリカシーだよ、若人。
そういうものがあれば、誰も傷つかなくて済むんだが。
まあ、こういう気遣いはおっさんにならなければ、歳をとらなければできないことなのかもしれない。
そんな彼女の思いにニブチンの頭山は気づくことなく、止せば良いのに余計なことを言ってしまった。
「ま、まさか、伊原……副長と朝っぱらから」
なんでそーなるんだ、と私が口を開くより前に、頭山からゴキッという鈍い音が聞こえた。
私が音の方を見たとき、膝を前に大きく突き出した伊原とくの字に仰け反る頭山が跳んでいた。
彼女は跳び膝蹴りの態勢から上手く着地をして、無言のまま扉の向こうに消えていく。
頭山は膝蹴りが直撃したおでこを赤くしたまま仰向けに倒れていた。
私はいったい何が起こったのか理解するので時間がかかってしまい、しばらくその場に立ち尽くしていた。
……好きな男にそういう風に思われたら、そりゃショックだろう。
私はため息をついた。
頭山も忍ぶ恋だが、伊原も同期という男友達のような相手に恋をしている。
両方とも忍ぶ恋なのかもしれない。
青春だなあと思う。
若いっていいなあ。
いや、まじで。
上司としては、かわいい部下二人がくっついてくれれば幸せこの上ないものなのだが、いかんせん、頭山がアレなのだ。
世の中上手くいかない。
そんな気持ちでため息をついていると、国営放送の朝のニュースから帝国陸軍軍人の不祥事が流れてきた。
『昨日、九州に駐屯する第七師団は同所属の陸軍少将が複数の部下の女性にセクハラを行ったとして、昨日付けで停職十日の懲戒処分にしたと発表しました』
国営放送のニュース。
ニュースキャスターの感情が一切入らない声が部屋の中に響いた。
『なお、その陸軍少将は即日依願退職をした模様です』
ほんの数秒のニュース。
頭山と目が合い、私は彼に言った。
「まったく将軍にもなって、セクハラで退職だなんて……格好悪いったらありゃしないなあ」
「朝っぱらから、後輩にセクハラする大尉もいかがなものかと思いますが」
「……頭山、私が伊原にそんなことをする勇気があると思うか?」
「……確かに、ないですね」
生意気な後輩たち。
私は十歳以上年下の部下されも善導できない。
このニュースの将軍なみに格好悪いもんだと心の奥の奴がボソッとつぶやくのが聞こえた。
やれやれ。
そんなことはわかっている。
だから、がんばっていないだろう。
――あんたは、そうやって逃げているだけだ。
いつもの様にその言葉が反響する。そして、それが頭痛に変わっていった。