合点
灯夜は外から焦点を徐々に近くに戻していく。すると、そこには自分の姿が映っていた。
(!)
灯夜は走り出した。先ほどまで回っていた道をもう一度回る。そして、一周して教室に戻った。
(あったぞ。共通点が)
灯夜は見付けた。一見、共通したものがないように見えるが、確かに共通点はあったのだ。
その共通点とは鏡だった。
女子トイレの手洗い場の鏡。部室にはロッカーの鏡。保健室に入ってすぐにある鏡。音楽室にはピアノの横に鏡。F組には、ゆかりが化粧をした時に使った手鏡。
消えた生徒がいた場所には、全て鏡があった。偶然といえば、偶然だが、灯夜はそう思えなかった。鏡によって消えたという確信があった。なぜなら、以前、夢の中で灯夜自身が鏡の世界に入っていたからだ。今から考えてみると、時計の左右逆さだったことや、やけに歩きにくい理由が分かる。それは、左右が全て逆さになっていたからだ。
そこまで考えて、思考が止まった。例え、鏡の中にいるということが分かったとしても、いく術を知らない。もし、彼女たちが自分の意思とは別に、向こうの世界に引き込まれたのだとすると、連れ去られるまで、待たなくてはいけないことになる。もちろん、そんな時間はない。
灯夜は考える。常識の通じないものでも、ひたすら考える。いつしか周りの雑音は遠のき、聞こえなくなった。そうしていると、ある一つのものが思い浮かんできた。灯夜はそれに賭けるしかなかった。
職員室に向かうと、半ば強引に鍵を貰う。色々と聞かれたが、課題です、と言い張り黙らせた。
次に食堂に足を運ぶと、購買でミネラルウォーターの入ったペットボトル六本と、適当な食料を調達した。それらを鞄に詰め込み、目的地へと足を速めた。
雫は見ていた。灯夜が駆け回り、自分たちに近づいてくる様を。
あと少し。あと少しで、灯夜が来てくれる。そうすれば、灯夜をここに留まらせることができる。
気付くと、口元に笑みができていた。その笑みを消すと、雫は静流に寄り添うのだった。
遂に中盤に突入です!長かった〜。読者の皆様これからもよろしくお願いします。最後まで、お付き合い頂ければ、傷付いたある人に僕が言いたいことが、見えてくるはずです。