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奇異

 午後の授業も滞りなく終わると、早速、社と共に廊下に出る。人気のない場所まで行くと、話を始めた。

 「どうだった?」

 「ああ、それなりに収穫はあったぜ」

 社は不敵な笑みを見せた。

 「俺が、手に入れられたのは、石渡、蒼崎、広瀬の情報だ。他の連中は、全く情報が掴めなかった」

 社は十分な働きをしていた。

 「僕は広瀬と不動だけだ。神凪と犬神のことは、僕も分からなかった」

 「そうか、分かった。とりあえず、今分かってる奴のことだけ教えとく」

 黙って先を促す。

 「石渡は五月二十一日、三階の女子トイレでいなくなってる。いなくなる直前まで、鏡の前で身だしなみをチェックしていたそうだ。一緒にいた奴が言ってるから、間違いない。その後、連れが先に出て、待ってたら、なかなか出てこなかったらしい。それで、気になって中を見たら、いなくなってたって訳だ。信じられないような話だけどな」

 「確かに信じられないけど、消えたとしか考えられない。不動と同じパターンでいなくなってるね。不動は忘れ物を取りに行って、みんなで見に行った時には消えていた」

 「不動も同じか」

 二人は考え込むように黙った。

 しばらくして、社の方から口を開いた。

 「ここで考えても仕方ねーな。話を進めようぜ」

 「そうだね。僕の調べだと広瀬は、八月十九日の放課後、保健室でいなくなった可能性が高い。証明できる人がいないから、確かじゃないけど」

 「いや、その話はあってるぜ。丁度その日、保健室で休んでた奴がいてな。隣のクラスの高橋って奴なんだけど、保健室で広瀬と話をしたらしい。広瀬は保険医に用があったみたいだけど、その時、先生がいなかった。だから、その場で待ってたんだ。高橋は広瀬と話してから帰った。下駄箱に行く途中、先生と会ったんで広瀬のこと教えて帰ったんだ。だけど、先生の話じゃ、保健室には誰もいなかったんだと。高橋が保健室を出て、先生が戻るまでの時間は二分もなかった。この間にいなくなったんだ」

 灯夜のことを一度見ると、再び話し出す。

 「蒼崎は八月十七日の放課後、F組の教室で消えてる。なんで、F組にいたのかは知らないが、教室で化粧を直していたらしい。なにやってんだかな」

 両肩を上げ、頭を左右に振ってみせた。

 「まあ、それはいいか」

 灯夜の視線が痛いのか、顔を横に向ける。そして、わざとらしく咳払いをすると、顔を元の位置に戻した。

 「それでな。まあ、蒼崎のことを見た奴の話では、後ろの扉を通る時には、姿が見えてたんだが、前の扉から見た時には、荷物だけが置いてあって、いなくなってたって話だ」

 つまり、教室の前を通る僅かな時間で、人が一人消えたということになる。そんな芸当を遣って退ける人間は、この学園にはいない。

 「以上が俺の情報だ」

 灯夜は、今聞いたことを頭に叩き込んだ。

 「分かった。助かったよ」

 「いや、それはいいんだけどさ。灯夜、お前本当にこんな訳も分からないこと、調べようとしてんのか?やめとけよ。人間が六人も消えてんだ」

 いつになく真剣な表情だ。

 「大丈夫。なにもないよ」

 「なら、俺も手伝ってやる。この後も調べるんだろ?あいつ等のこと」

 「調べるけど、社はいいよ。僕一人で十分だから」

 こうなった灯夜はどうやっても動かない。経験から分かっている社は引くしかなかった。

 「分かったよ。俺はなにもしない。ただ、なにか困ったことがあったら、いつでも言えよ。助けになるからさ」

 「分かった。その時は頼む」

 そう言うと、社は笑いながら帰っていった。


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