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始動

 灯夜は学園に向かっている。周りには、いつもより多く、学生の姿を見ることができる。歩きながら、昨日の調査について考えていた。

 昨日の日曜を使い、静流の行方を捜したが、結局見つけることはできなかった。その代わり、いくつかの情報を手に入れることに成功した。

 静流の行方不明と、学園を休んでいる他の五人の生徒は、なんらかの関連性がある可能性があると思った。そこで、灯夜は静流を除く、五人の生徒の家に向かい、話を聞いたのである。

 最初は見舞いを装い、面会を頼んだが、あっさり断られた。そこで、なぜ休んでいるのか訊ねてみると、どこの家も口を揃えて風邪だ、と言っていた。確実に嘘をついていると思った灯夜は、更に質問した。本当は行方不明なんじゃないか、と。この質問には驚いたようだった。五人共それぞれ違う反応をしていた。だが、そんな中に共通したものがあったことを灯夜は見逃さない。それは、灯夜に対する恐れだった。誰しも嘘をつく時は、嘘がばれないかという恐怖を抱く。訓練した者ならそんなものは見せないが、普通の人間なら無意識のうちにそれが表に出てしまうのである。そのことから、彼らの子供も静流同様、なんらかの形で行方不明になっているのは、明白だった。

 各人の家を回り終えると、今度は広範囲に渡って情報を集め始めた。そこでの情報は非常に興味深いものだった。

 静流を含む六人の生徒は、いなくなった前日の朝は、登校している姿を見られているが、下校時には見かけていない、ということだった。確かに、彼女たちが、消息を絶つ前日は学園で見かけている。これらのことから、彼女たちが、消息を絶ったのは放課後以降、学園もしくは学園付近だと推測することができた。

 その後、休日で生徒のいない学園では情報を集められないと思った灯夜は、その日は切り上げ、帰宅することになった。

 そして、現在に至る。

 昨日のことを考えていると、いつの間にか学園に着いていた。靴を履き替え、教室に向かう。

 教室に入ると社が話し掛けてくる。

 「よう、今日は随分早いんだな。一体どうしたんだ」

 「ちょっとね」

素っ気なく答えると、自分の席に鞄を置いた。席には着かず、社の前に歩み寄り、廊下へと連れ出す。

 社は文句も言わずについて来てくれている。人気のない所まで行くと、話を切り出した。

 「実は頼みがあるんだ」

 社は目を丸くして、しばらくの間固まっていた。

 灯夜がじっと待っていると、ようやく返事が返ってくる。

 「悪い。ちょっと驚いちまって声が出なかった。でも、灯夜が俺に頼み事なんて珍しいな。一体、どんな頼みなんだ」

 「今、うちのクラスで休んでる人のことを調べて欲しいんだ」

 「休んでるって、神凪さんとエリートの連中をか?」

 無言で頷く。

 「それはいいけど、一体どうしたんだ。あいつ等のこと調べるなんてさ」

 やや困惑した顔で言う。

 灯夜は一瞬、本当のことを話そうか迷ったが、結局話すことにした。事情が分かっているほうが調査もし易い為である。

 大まかな事情を簡単に説明する。ただ、御風からの電話の話は伏せた。話している間、社は顎の下に手を置き、考えているようだった。

 考えがまとまったのか、やがて社は手を下ろした。

 「大体の事情は分かった。俺でよければ手伝うぜ」

 「そうして貰えると助かるよ」

 「しっかし、あいつ等がそんなことになってるなんて本当に驚きだ」

 「そうだね。ただ、このことはみんなには黙っておいて。余計な荒波は立てたくない」

 「分かってるって。俺は、口が堅いんだ」

 「分かった。社には二年の人たちを調べて欲しい。僕じゃ、調べるのに苦労しそうだからね」

 「確かに灯夜には、荷が重いだろうな。オッケーだ。二年の連中は任せろ!」

 社はからかうように言った。灯夜はなにも言い返す気にもならず、黙っていた。

 なぜ、荷が重いかというと、至極簡単なことで、灯夜に『力』が無いからである。『力』の無い者は、極端に差別的な目で見られる。灯夜はそれが苦痛だった。

 同級生である以上、灯夜が『力』を使えないことは、皆知っている。そんな『力』の無い灯夜に簡単に情報をくれるとは考えにくい。例え、くれたとしても、何らかの対価を払わなければならない可能性が高かった。それに比べて、社の『力』は多くの生徒に認められており、逆らう奴はそういない。逆に、仲間に引き込むために、恩を売ってくる奴ばかりであろう。

 そういった理由で社は、灯夜に比べて遥かに情報収集が簡単にできる。だからこそ、灯夜は社にこのことを頼んだのである。

 「それと、できるだけ早く情報が欲しい」

 社はすぐに真面目な顔に戻り頷く。

 「分かった。じゃ、放課後までにはなんとかする」

 「助かる。放課後にもう一度会おう」

 「よし!話はまとまった。俺は今から情報を集めてくる。それじゃ、また放課後にな」

 そう言ってどこかの教室に消えていった。

 社を見送った後、灯夜はゆっくりとした足取りで自分の教室へと戻っていった。


ようやく事が起こりそうなところまで来ました!退屈させないよう頑張ります!では、また会えることを期待しています。

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